金の龍とキュピレス姫の出会い。
『金の龍だぁーーー!!』
天空を悠然と飛翔する金の龍の姿。
大麻が産出され、また南国雪(火薬)という希少価値の高い発明品があると評判の都、ここラプリタァーナ。
大きな街の中心、小高い丘に立つデカメロン城。
その一角で、幼き姫キュピレスを背負い走る重臣の賢者。
口から火炎を縦横無尽に吐く金の龍。
デカメロン城を不法に占拠した赤い鎧兜の一団が火の海へと呑み込まれて行く。
(((うわぁぁぁぁー!!)))
赤い鎧兜の頭らしき者が空を見上げて呟いた。
『金の龍!、また邪魔に入ったか!』
逃げ惑う城の人々を縫うように走るキュピレス姫の守役ソー.ジャ。
『ソー.ジャ、いったい何があったの?』
幼いキュピレスは、何が何やらわからぬままソー.ジャの背中にしがみついていた。
回廊を走り抜け、レーモンド国王の部屋へ急ぐソー.ジャ。
すると、反対側の通路から赤い鎧兜の一団が群れをなして王室へ入っていった。
ソー.ジャは幼い姫キュピレスを石膏像の影に隠れているよう告げ、一人で王室へ急いだ。
王室の間から、聞こえてくる剣が交わる刃音。
ガキーーーーン》》》
ガキーーーーン》》》
ガキーーーーン》》》
やがて、鋭い金属音は止んだ。
しばらくの静寂の後、耳を、つんざくような叫び声。
《《《キュピレスーーー!!》》》
《《《逃げよーーー!!》》》
娘を思うレーモンド国王の最後の言葉だった。
その後、王室から赤い鎧兜一団の頭らしき者が手で左目を押さながら出てきた。
どうやら、乱闘で左目を失ったらしく流れる血を拭きとっていた。
その者は自らのマントを破り眼帯がわりに顔面に巻き付けた。
強い打撲を受けたらしく賢者のソー.ジャが、引きづられるようにして後ろ手に縛られ出てきた。
『てこずらせおってーー!!』
『賢者、ソー.ジャよ、お前には、まだ生きておいてもらわぬと困る……
天国へと誘う大麻と南国雪(火薬)の在処を突き止めねばららぬ!』
『それに、キュピレス姫の所在も白状してもらわぬとな!』
赤い鎧兜の一団を率いる頭に向かって賢者が、息、絶え絶えながらも渾身の力を振り絞って叫んだ。
『ドモフ.ウルワッハよ!』
『国王の親衛隊の長である、お前が侵した罪
このような暴挙、三人の女神がお許しにならぬぞ!』
『レーモンド国王を、あやめし大罪、万死に価する!』
ドモフ.ウルワッハは大きな声で高笑いした後、ソー.ジャに告げた。
『心配することはない!』
『そなたも、早々に冥土でレーモンド王と会えるぞ!』
この様子を石膏像の影で見ていたキュピレスの手が滑り、立て掛けてあった剣に当たり倒れた。
王城の回廊に剣の金属音が響く。
キーーーーーーーン))))
赤い鎧兜の一団が走り出す。
『物音がしたのは、あっちのほうだ!』
『キュピレス姫をさがしだせー!!』
石膏像の影で剣を抱え、恐怖に震えながら大粒の涙を流すキュピレス。
その時、キュピレスの体がフワーッと宙に浮いた。
ふと眼を上げると強く逞しい腕の中に彼女はいた。
『姫、怖れることはない。』
『これからは、私が、そなたの父がわりだ。』
『振り落とされないように、しっかり、つかまっていなさい。』
深紅のマントに金の糸が織り込まれた気品のある高貴な騎士の姿。
黄金の髪に、透き通ったエメラルドの眼をしている貴公子。
彼はキュピレス姫を両手に抱いたまま、城のベランダから飛び出した。
とたん彼は黄金の龍となり空高く舞い上がった。
金の龍の背中でキュピレスが語り掛けた。
『この世には、二匹の龍、聖なる龍と闇の龍がいるって、お父上が言ってたわ。』
『あなた様は、きっと聖なる龍様ね……』




