農耕神アリスの怒り、悪の軍団を襲う!
『同盟だと!』
『バカも休み休み言うことだ!』
『そうだ!そうだ!』
『あやつらが、弱腰になっておる間に
こちらから総攻撃を仕掛け一気に決着をつけるべきだ!』
鷹派の隊長たちが怒鳴る。
『いやいや、今や、ドモフの軍は肥大化し太刀打ちできる国はあるまいて、ゴボンゴボン……』
『いっそのこと、傘下に入るのも手かと、長いものには巻かれろと言うではないか、ヘラヘラヘラ』
穏健派の老執政官が弱々しい声でボソッボソッと呟く。
隊を預かる長たちの喧々強々とした口調が飛び交う指揮所。
バルキシオン宰相の配下には、今や名だたる騎士や戦士、賢者は、残っていなかった。
バスター城をへーベル河と左右正面から包囲するドモフ軍。
総攻撃に備えていたバスター城に覇王ドモフ.ウルワッハからの使者が到着していた。
頭からスツポリと白いガウンを来てフードを付けているため外見をハッキリとは見ることは難しかった。
使者は一礼し、書簡を側近に手渡しバルキ.シオン宰相がこれを受け取った。
書簡を開き眼を通すバルキ.シオン宰相。
『ほぅ……覇王として君臨すると』
『サバナ帝国は、二つに割れたということか……』
『同盟の件は本来ならばサー.ラミス国王のご采下を仰ぐのが筋ではあるが……
将たるもの戦場においては、これにあらず。』
『バスター城のバルキ.シオンが同盟の件、同意したとお伝え下され。』
バルキ宰相は、王家の押印を承諾書へ押した。
使者は、これを側近より受け取り一礼し指揮所を出た。
バルキ宰相は指揮所のドアを出て行く使者の後を追い、肩をポンと叩いた。
『フードを取るがよい、アル.テミウス』
肩を震わせる少女アル.テミウスはどっとその場に崩れ落ちた。
バルキ宰相はしゃがんで、少女アルテミウスの溢れる涙を自分の朱色マントで拭き取り
優しい口調で彼女に訪ねた。
『なぜ、お前が、ドモフなどの使者をしておるのだ……』
少女アル.テミウスは泣き声になりながらもバルキ宰相に答えた。
『わたしの、せいで……アン.スウェラ兄さんを死なせてしまったの……』
『ドモフの言うとおりにしないと、アン.スウェラ兄さんの体を焼き
二度と魂を呼び戻せないようにすると脅され……それで』
バルキ宰相は少女アル.テミウスの口をふさぎ、優しく頭を撫でた。
『もう、よい……みなまで話さなくても。』
『辛かったであろう……』
『しかし、復活にはヒーラーが必要だが……私の知っておる限りでは1人しかおらん。』
『戦乙女ヴァルキリー、キュピレス』
『この者にしか、アン.スウェラの魂をヴァルハラより呼び戻せぬであろう。』
『さぁ、ドモフの元へ戻るがよい……そして戦乙女ヴァルキリーにまみえる事が有れば……力の限り叫び願うのだ!』
『そなたの愛する慕兄アン.スウェラの魂を我、手に戻したまえと!』
少女アル.テミウスはバルキ宰相の手を離れ、馬に乗りドモフ陣中へ姿を消した。
やがてドモフ軍の包囲陣は解かれ撤退していった。
そこへ火急の報せとばかりに、伝令がバルキ宰相のもとへ馳せ参じた。
『申し上げます!』
『黒死病なるものが、ドモフ陣中に流行り病として蔓延しておるとのこと。』
『兵の半数以上が感染したもよう、持って数週間の命だと村の物が申しておりました!』
バルキ宰相は、左手で顎の辺りをつかんで頷いた。
『道理で、同盟を急いでおったのだな……』
『我方の兵士は、流行り病に掛かっておるものはおらぬのか?』
伝令は頷いて答えた。
『はい!我方の兵士は一人も流行り病には掛かっておません!』
バルキ宰相は広いベランダに出て空を仰いだ。
『自然を司る女神アリスの、ご加護が我軍を守ってくださっておる!』




