魔剣ティルヴィング、戦乙女ヴァルキリーの手に渡る。
エリス領。
ドラン鉱山の麓。
霧の湖の畔。
横たわる騎士をいたわるように、抱きかかえる美しい光の妖精姫。
彼女の名は『リョース.アルヴァー』
キュピレスの守護戦士ペルセシウスが湖から手桶に水を汲み
騎士の横に、方膝を付くキュピレスの元へ持ってきた。
ヒーラー(治癒者)でもあるキュピレスは騎士の右肩の下に刺さっている矢をつかんだ。
もう一人の守護戦士ロン.ゴミアントが、慌ててキュピレスの手を押さえた。
『キュピレス殿、今、矢を抜いてしまうと大量の出血で命を落としてしまいます。』
『然るべき、医者の所へ連れて行かれては……』
キュピレスはロン.ゴミアントの手を、ゆっくり戻して言った。
『見ていてください。』
彼女は騎士の右肩から矢を素早く抜くと、手桶に入った水を両手ですくい血が噴出する傷口を満たした。
両手で、しっかりと傷口を押さえ天を仰ぎ祈った。
『運命の女神、エリス、そして自然の神アリス!』
『この者の傷口を癒したまえ!』
『とこしえに、我と共にあらんことを!』
すると目映い光が両手で押さえたきず傷口を包んだ。
やがて騎士は、ゆっくりと眼を開き光の妖精姫リョースの細い腕の中で微笑んだ。
キュピレスは手をゆっくりと離し傷口を確認した。
『どうやら、傷口は塞がったようです。』
『もう、大丈夫ですよ、安心してください。』
リョースの瞳から涙が一滴、また一滴と流れ雫となり
それは霧に運ばれドラン連山と湖が重なる洞穴へと入っていった。
事の次第をリョースから聞かされた騎士は深く、キュピレスに感謝し
礼を述べて右手の指から宝石と刻印が刻まれたリングを外して彼女に手渡した。
『このような物しか、ございませんが命を救って下さったお礼です。』
そして、リョースがキュピレスに近付き話し掛けた。
『女神ナリスの転生し方、キュピレス様の剣をお貸しください。』
妖精姫の突然の申し出に、戸惑ったがキュピレスは剣を彼女に手渡した。
彼女は湖の畔に立ち剣を空高く翳し、その後まるで、つむじ風の様に体を回転させた。
たちまち、よどんでいた森の霧が剣の矛先に集まり
先ほど彼女が流した涙の雫がキラキラ光る金属片を誘引しながら剣を包んだ。
キュピレスは、その金属片が何か、直ぐに気が付き言葉が口を突いて出た。
【神の鋼!】
妖精姫は十分に金属片を吸いとった剣に息を吹き掛けた。
そして、彼女は、その剣の柄と矛先を両手に乗せキュピレスの元へと返した。
すると、とたん剣自信が、話し出した。
『わたしは、神から使われし鋼、これより汝、戦乙女ヴァルキリー、キュピレスを主と定めん!』
『女神ナリス、この世に転生し真の救世主なりー!』
『ティルヴィングの剣は汝と共にあり!』




