前哨戦、ヘーベル河の戦い。⑦
へーベル河に架かる唯一の石橋ラグナロクを目指し意気揚々と進軍するキュピレス混成軍。
先頭で紅き星に騎乗する戦の乙女ヴァルキリー。
そのキュピレスの黄金の長い髪が朝日を浴びて神々しく光を放っている。
朝露が草花を濡らし、心地よい風がドラン連山から吹き下ろしてくる。
傍らで腹心のモーサが持つエリス.シオン王国の旗。
バタバタと風に靡いて軍の士気の高さを鼓舞しているようだった。
魔導師の長、ソー.ルイは賢人の呼び声高い人物であったため
キュピレスは彼を自分の参謀として近くに置いていた。
『ソー.ルイ殿が授けて下さった剣に宿せし力……実に大きな力を我軍にもたらしております。』
『よくぞ、参軍して下されました。』
『貴殿の高き知恵を無垢の民の救済のため、お貸しください。』
魔導師ソー.ルイはキュピレスに頭を下げ話し出した。
『お望みとあらば、いくらでも、
ご助力いたしますが……』
『つきましては、私めの願いも聞き届けてくださりませ……』
キュピレスはソー.ルイに誓いを立てた。
『我軍に必ず勝利をもたらし、父をあやめし憎き仇敵ドモフ.ウルワッハ
彼の首を持ち帰ることができるものなら何でも願いを聞き入れる!』
『この場で、我、命を賭けて誓おう!』
腹心のモーサが、その話しを傍で聞きキュピレスの前に出た。
『お待ちください!』
『魁頭であり騎士でもある、あなた様が軽々しくお誓いを立ててはなりません!』
『もし誓いを破ることがあれば、ご自分の身に災いがもたらされます!』
『先王ソー様も、誓いを守れず戦場で命を落とされたのです!』
キュピレスは腹心モーサの諫言を制して言った。
『モーサよ!』
『命を惜しんで、どうして戦の乙女を名乗れよう!』
『我を頼り、救いを求めて来た民とエリス.シオン王国を守り通し
さらに父をあやめし仇敵、ドモフ.ウルワッハ'''の首をサー王の元へ届けることが私の願い!』
魔導師ソー.ルイは横目でモーサを睨み、そのあとキュピレスに向かい言葉を続けた。
『私めの願いは、あの荷車に乗った老人を頂きたいのでございます。』
『さすれば、あなた様の願いは全て成就いたしましょう。』
キュピレスは、しばらく思いを巡らし答えた。
『あの老人は、聖パトリシアより戦に赴く時、先頭で荷車に乗せ進ませるよう神託があったもの……』
『戦が終わり、老人が、ソー.ルイ殿の世話を受けると承諾するならば私に異存はない。』
ソー.ルイはキュピレスに誓いの文書を書かせ彼女の紋章が入った手のリングの押印で封をさせた。
『契約は成されました!』
『あなた様の願いは必ず成就することでしょう。』
やがてキュピレスの混成軍はラグナロクの石橋の袂まで到着した。
魔導師ソー.ルイが向こう岸のラッシュ平原の一本道を指差した。
『長蛇の列で進軍するハル皇子の軍団でございます。』
『私の仲間が夜が明ける前に敵状を視察して参りました。』
『話しによると、ハル皇子は軍団を二つに分け
ドモフウルワッハの軍団をドラン連山、麓のバスター城へ向かわせた模様でございます。』
ハル皇子の軍の詳細は次の通り……
鉄騎馬隊……六千
軽装備.剣兵……五千
軽装備.槍兵……五千
軽装備.長弓隊……四千
『総勢……二万でございます。』
次に我軍。
駄馬弓隊……二百。
魔導師団……七名。
近隣よりの寄せ待つめ剣兵……二千。
最後尾に老人、婦人、子供……約一万八千。
『総勢……約二万強でございます。』




