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ラストメモリーズ  作者: はらずし
第二章 夏
9/24

第七話 夏の入り口

お久しぶりです!はらずしです!


テスト期間も終わりようやく執筆に時間が取れました……。


では、どうぞ!

海斗の従兄弟である棚瀬俊が来てから、もう2ヶ月が過ぎようとしていた。

7月に入り本格的に夏の暑さが目立ち始め、見る人全てが暑そうに服をパタパタしながら外を歩いている。

それに比べて、教室の中にいる学生たちはクーラーが効いているのか外よりは涼しそうだ。暑さが目立ち始めてから数日後、教室にもクーラーがつけられたのだ。それでも教室のクーラーの効き目はあまり良くない。ほとんどの生徒がうちわや下敷きで扇いでいる。

だからこそだろう。教室以上にクーラーの設定温度が低く涼しい職員室が、その中にいる教師たちが全生徒の目の仇にされるのは。

そしてその職員室の一角に気持ち半目にしながら突っ立っている生徒が一人。

「君が考えていることは分かるけど、言われても何も出来ないからね?」

「僕たちの教室の設定温度もう少し下げてくださいよ」

「だから、無理だってば」

「なら職員室の設定温度上げましょう」

「やだ」

「やだって……。それは無理じゃないんだ…」

「だって涼しいし」

「全生徒の敵め……!」

「そういうことは校長先生か事務の人に言って」

「それこそ無理に決まってるでしょう。僕を退学にさせたいんですか?」

「なら私はいいのかよ……」

「はい。一応副担任ですし」

「即答かよ。あと一応言うな、一応」

ハァ、と深くため息を吐くのはその本人の目の前で突っ立っている海斗の副担任である深城京。自称20代後半の年齢不詳である国語教師だ。彼氏はいるらしいがまだ結婚していない。客観的に見ても美人と評される美貌の持ち主でクールな印象を与える。

そんな京に、期末テストも終わって後は夏休みを待つばかりの海斗は職員室に呼び出しを食らっていた。

悪いことはしていないから怒られるという話ではないだろうという自信を持ちながら海斗は職員室に赴いたが、先ほどの発言だけ聞けば怒られることはありえるような態度だということに海斗は気づいていない。

「まあいいや。それで、引き受けてくれる?」

「まあ条件が条件ですし、メリットの方が大きいのでいいですよ。先生がどうなっても知らないですが」

「一言余計なんだよ君は……。とにかく頼んだぞ。言っとくが他言無用だからな」

「分かってますよ。ていうか、そんなにクビになりたくないならやめりゃいいのに」

「だから、一言余計だ。そんなこと言ってると評価下げるぞ」

「そんなことしたら、先生の私情が入ったってバレるだけですよ。ほら、僕優秀ですから」

「正論なだけあって何も言い返せないな。無駄に優秀な生徒を持って先生は感激だよ」

「またまた、心にもないことを。じゃあ僕行きますけど、他に用件とかありました?」

「無いから帰っていいよ。でも、本当は私にもっと構って欲しいんだけどな〜」

京が座っている関係で上目遣いになる上、声もかわいく、元々の容姿も相まってかなりかわいいおねだりに見える。実際近くを通った生徒が顔を赤くしていた。

だが海斗は、

「おばさんが猫撫で声出しておねだりしても、僕としては何の感情も湧き出て来ないんですけど……」

「おばさん言うな!……冗談をそんな素面で返されてもこっちの反応が困る。ノリが悪いな〜」

顔色を変えず、呆れたような声で皮肉も混ぜて返す。京はそれをつまらなさそうに見ていた。

「では、帰ります」

「はいはいさようなら。まだ夏休み入ってないからって夏休みの宿題に手を付けないなんてことしないようにね。先にやっておいた方が後々楽よ」

「先生に言われるまでもなくもうやってますよ」

「さすがね」

「楽したいですから」

そう言って海斗は京に背を向けて帰ろうとしたが、何か思い出したようにふと立ち止まり京を振り返る。

「ん?何?」

「さっきのおねだり。彼氏さんにしてあげたら喜ぶんじゃないですか?僕とは違って」

「最後に自分は違うって主張するのやめなさい。ま、アドバイスありがと」

ニコッと京が笑ったところで海斗は職員室を出て行った。

職員室を出た海斗はそのまま下駄箱に向かった。その途中、後ろから肩をポンポンと叩かれたので振り返ってみると人差し指が海斗の頬を押していた。

「へっへ〜。引っかかった〜」

「何してるんだよ結」

そこにはイタズラを成功させた悪ガキのような笑顔を浮かべた結がいた。

「え?イタズラだけど」

「そんなことは分かってるよ。つか、古くないかこれ」

「何でもいいじゃん。面白ければ」

あはは、と笑う結。ここ最近嬉しそうに笑う結の顔を頻繁に見る。心配事が無くなったからか、彼女自信意識はしていないのだろうが前より明るい笑顔だ。

「まあ何でもいいけど。それじゃ帰るか」

「うん。帰ろう帰ろう」

下駄箱でくつに履き替えた二人はそのまま帰り道を歩く。

あの事件(?)から結と帰る必要性は無くなった海斗だが、何故か今も一緒に帰っている。結もそのことについては何も言わず、今日まで一緒に帰っていた。特に理由もなく一緒に帰っている二人。海斗は一度理由を考えては見たものの、出た結論は『習慣になったから』というものだった。

要するに、なし崩し的になっているだけである。

そんな二人は今日も今日とて部活のないもの同士の会話を続ける。

「今日はどこか寄ってく?」

「今日はやめとく。家に俊兄が来るんだ」

「へえ〜。でも何で?」

「何か話があるんだと。ま、近況報告とかそんな感じだろう。それが建前で遊びに来るってのが本音の可能性もあるんだけど」

「俊さんならありえそうだね」

「てことで今日はやめとくよ。ごめんな」

「いいよいいよ。……あ、そうだ。今日スーパーで卵安売りしてるんだ」

「考えが主婦だな」

「独り暮らしだからね。出費は抑えたいの。遊びたいし」

「そらそうだ」

「じゃあ、私はここで。バイバーイ」

「ん。じゃあな〜」

手を振って去っていく結を見送った海斗はそのまま何をするでもなく家へと帰った。道すがら買い食いもせず一人で帰るとは高校生らしくない生活だなあと思ったが、今更すぎると思い直す。

「ただいま〜っと……ん?」

家に着き、玄関を開けてくつを脱ごうとすると一足いつもなら見ないくつがあった。

(来るの早いな…。暇なのかな?)

そういえば、何でこっちに引っ越してきたのかも聞いてなかったことを思い出しながらとりあえず荷物を部屋に置いて、部屋着に着替えてからリビングに向かった。

「お、帰ってきたのか海斗。遅かったな」

リビングに入り、海斗を出迎えたのは従兄弟である俊だった。

「僕が遅いんじゃなくて俊兄が早いだけだろ」

「ま、それもそうだな」

あっはっはとイスに腰掛けながら笑う俊に海斗は呆れつつ俊の向かいの席に座る。

「あれ?母さんは?」

「叔母さんなら風呂洗いに行ったぞ」

言われてから耳をすますと、風呂場の方から水の音が聞こえてきた。

「で、俊兄何しに来たの?」

「用がなきゃ来ちゃいかんのか?」

「そういうことじゃないってば。何か用事があるんでしょ?」

「まああるっちゃあるが、近況報告みたいなもんだし。お前には関係ねえよ」

「さいで」

てきとうに返事をしてから宿題をするために部屋に上がろうとすると後ろから俊の声が聞こえた。

「今日泊まってくから、悩み事があるなら夜聞いてやる」

その言葉はいつもの軽い声ではなく、真剣そのものであり、その声に、その言葉に、その性格にいつも助けられてきた海斗は嬉しかった。

「まあ、考えとくよ」

振り返りもせずそう言った海斗は淀みなく階段を上っていった。




時間も過ぎ、夕食も終わって風呂から上がった海斗は自分の部屋の窓を開けて星空を見上げていた。もう時刻は10時を過ぎており、星も見やすくなってきた。

俊が泊まる部屋は海斗の部屋ということになっており、海斗の部屋には敷き布団が敷いてある。その本人である俊は今海斗の部屋にはいない。海斗の両親と晩酌でもしているんだろう。

正直、下に行って酒は飲まないものの両親や俊と話すということはしたくない。今日はそういう気分だった。別段、話すこともないのだから。

とはいうものの、寝ようとも思わず、ただベッドの上で座り込み星空を見上げていた。

すると、ガチャ、という音が聞こえ、振り返ってみると酒で少し顔を赤くした俊がいた。

「なんだ、お前まだ起きてたのか」

「まだって、そんな遅い時間じゃないだろ?」

「は?何言ってんだ。もう2時だぞ?」

「え?」

パッと時計を見るとそこには短針が2時を指している時計があった。

どうやらボーッとしていたらいつの間にか大分と時間が経っていたらしい。もうかれこれ4時間は星空を見上げていたことになる。

よく飽きないなと自分で思いつつ、開けていた窓を閉めてクーラーをつけた。基本涼しい日はつけないのだが、今日は自分以外の人間がいるのでそうもいかない。

「俺を待ってたとか、そんなんじゃねえんだな」

「うん。ただ空見上げてただけ」

「好きだなあ、お前。昔っからそうじゃないか?」

「そう……だな。うん。昔からそうだった」

確かに海斗は空を見上げることが好きだ。それを俊は海斗が生まれた時から知っている。赤ん坊のころから海斗は空を見上げることが好きだったらしいからだ。ただ、今と昔じゃ空を見上げる理由が変わっていることを俊は知らない。

「まあいいや。俺は寝るけど、お前はどうすんの?」

「ん……寝るかな」

「そうか。んじゃ寝るか」

そう言って俊は敷いてある布団に潜り込んだ。海斗も俊に倣い布団をかぶった。

そして訪れる静寂。時計がカチカチと音を立て、セミが鳴く声しか聞こえない。

どれくらい時間が過ぎたか分からないが、いきなり俊が海斗を呼んだ。

「なあ海斗」

「……なに?」

「困ってることあったらいつでも言えよ」

「…………!」

「お前が帰ってきた時も言ったがな。もう一度言っておく」

「………ありがと」

酒に酔ってるからか、それとも素面か分からないが同じ日に二度も同じことを言う俊を初めて海斗は見た。だからこそ、心配してくれていることがちゃんと分かる。何年経ってもこの人は自分の兄的存在なんだと実感する。

そんな兄に感謝していると、

「特に恋愛ごとなら大歓迎だな。お前、結って子と付き合ってるらしいじゃん」

いきなり、その感謝が揺らぎそうになった。

「ちょっと待て、今シリアスな話じゃなかったのかよ俊兄。あと付き合ってねえ!」

「付き合ってねえのか。つまんねえの。あと、俺は大真面目だからな。お前の恋愛相談なんて滅多にないし」

「俊兄……あんた酔ってないだろ」

「そんなわけねえだろ。叔父さんにどんだけ飲まされたと思ってんだ」

「その割には呂律はきちんと回ってるよね」

「気のせいだ気のせい。それよか、お前にいいもんやるよ」

「いいもん?」

喋っている最中に起き上がっていた俊は近くに置いてあったバックの中からあるものを取り出し海斗に手渡す。

海斗も起き上がり、それを受け取る。夜目が効いているため電気をつけなくても何が書いてあるか分かった。

「プールの入場券?しかも四枚?」

「ああ。俺のダチが譲ってくれたんだが俺その日行けねえし、使い道もないからな。お前に渡したほうがいいと思ってな」

「なんで」

「いいか?まず、結ちゃんと他二人を誘え。二人きりじゃさすがに気まずいだろうしな。そんで次にプールに行ったらどうにかして二人きりになっていい雰囲気作れ。そしてそのまま近くのホテルに……」

「質問の答えになってないうえにあんた未成年に何教えてんだよっ!」

そんなことしたらお縄確定の話をし出した俊の発言を遮るように押し殺した声で怒鳴る海斗。

「何って、彼女の作り方」

それを「何言ってんの?こいつ」というような表情で見てくる俊に海斗は呆れるしかなかった。

「間違ってるから!未成年がする彼女の作り方として間違ってるから!」

「全く、度胸のないやっちゃなお前は」

「度胸以前の問題だろ⁉︎つか、そんなやり方してんのかよ俊兄は。俊兄彼女いただろ?」

「俺はしてねえよ。そんなことしたらあいつに殺される」

「なら僕に勧めるなよ。俊兄がすればいいじゃん。浮気だけど」

「何を言いだす⁉︎するわけねえだろ!お前は実の従兄弟が殺されてもいいのか⁉︎」

「彼女に殺されるんなら本望じゃない?俊兄」

「テメエ……。まあ冗談はこれくらいにして、それで誰か誘って遊んでこい。憂さ晴らしにはなるだろ」

一瞬見えた怒りが冗談に思えなかった海斗だが、俊が自分の身を案じてこのような提案をしてきたのだろうということは分かった。このチケットもどうせ友達から譲ってもらったのではなく買ってきてくれたのだろう。四人分というのも海斗、結、有紗、勝の四人ということだろう。よく考えてくれている。

しかし……

「彼女の作り方の説明、あれは本当に冗談?」

「…当たり前だろ」

「あ、今間があった。あったよね?」

「なんのことだか知らんな〜。さて、俺は寝るぞ。おやすみ〜」

「あ、逃げんな!このっ……起ーきーろー!」

しばし揺すっていたが、何度揺すっても起きようとしないので明日問い詰めることにして海斗も布団に潜り込んだ。

そして寝る前にもう一度、空を見上げて星を見てから眠りに落ちていった。




夏が始まる前日譚……。




今回は俊とのやりとりがメインですね。

結局俊がなぜこっちにやってきたのかはまだ内緒です。(というよりどう書こうかまだ悩んでる……)


本当はこの話、土曜日に仕上げたかったのですが、なにせ一週間準徹夜状態が続きまして……土曜日死んでましたwww

てなわけで、今日投稿したんですけど、見てくれてる人いるのかなあ……。


ま、まあ、とりあえずこれからまた一週間以内を目標に投稿していきますのでよろしくお願いします!


評価とか感想とか書いてくれると、嬉しいなあ……。

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