第五話 捜索
えー、遅くなりました!
はらずしです。
とりあえず、どうぞ!
翌週の月曜日の昼休み。
海斗、結、勝、有紗の四人は一緒に屋上にいた。
屋上に向かう間、結と有紗は楽しそうにおしゃべりに興じていたが、海斗と勝はうなだれながら黙っていた。
黙っていることに特に理由があるわけではないが、強いて理由を上げるなら四限目に行われた小テストの点数が二人とも悪く、再試に引っかかったことだろう。
閑話休題
昼食を食べ終えた後に復活した二人は、ようやく一昨日の話に入った。
「とりあえず、そのストーカー野郎をどう撃退するかだな」
「勝の言う通りだ。一応作戦というか、方法っぽいのを考えて来たんだが……聞いてくれるか?」
海斗の問いかけに三人とも頷いた。
それを見て海斗は気づかれないようにそっと息を吐いた。
前回、というか一昨日の日のことを知っている勝に、気づかれている(かもしれない)有紗、そしてそれを聞いたかもしれない結に、正直自分の考えを聞いてもらえるか少し心配していたのだ。海斗が屋上に向かう時、表情が暗かったのはそのせいでもある。
ひとつ咳払いをしてから海斗は自分の考えを伝えるため口を開く。
「まず、僕と結はいつも通り下校する。その際勝と並谷は僕たちの後ろの方にいてほしい。僕と結に怪しい人が近づいてきたら並谷が僕のスマホに二回連続でメールを送ってくれ。勝はその人を……まあ、確保?してくれ。質問はあるか?」
「俺と並谷が一緒に後ろにつく理由は?」
「相手はストーカーだ。男と一緒にいる女子より1人でいる女子に目をつける可能性がある」
質問に対する応答をすると、勝は少し思案顔になってからぐーっと伸びをした。
「ふーん。ま、俺は何でもいいがな」
「ちゃんと守ってよね。山本くん」
有紗がからかいがてら言うと勝は「はいはい」と適当に返した。
「他にあるか?」
最終確認としてもう一度訊くと有紗がちょこんと手を挙げた。
別に挙手制にしたわけではないのだが、海斗が教師のような口調で訊くため、授業中の態度が出たのだろう。
有紗は結をチラ見してから言った。
「あの、今更なんだけど何で自分達で解決しようとするの?先生とかに言えばいいんじゃない?」
有紗のこの意見は至極もっともなものだ。自分達は子どもで、非力だ。だから大人を頼るというのは当たり前と言っても過言ではないかもしれない。
だが海斗にとってその質問は予想外で、目をパチクリさせてしまった。
「おい、海斗?……海斗〜?」
「あ、ああ。大丈夫大丈夫。予想外過ぎてびっくりしただけ」
「予想外?何で?」
ここでも有紗の疑問は至極もっともである。なぜ大人を頼ることが予想外なのか意味が分からないのは一般的に正常だ。だが、この場ではそれが異常でもあった。
「並谷ってテレビ見るよな?」
「な、何よ急に…。見るけど」
「そのテレビとかでストーカーの被害を受けてどうのこうのってやつ見たことある?」
「……?……あっ、そういうこと」
有紗はようやく合点がいったというように手をポンと叩いていた。
「そう。ストーカーされているって言ったところで警察はそう簡単に動いてくれないし、先生に言ったところで学校側は注意喚起しか出来ない。それに……」
海斗は言葉を切って少し俯いている結を見やってからもう一度続けた。
「親とか、身近な大人に言うのもありだが、それをするのは結が嫌らしいからな。俺たちでやるんだよ」
俺たちで『やるしかない』、とは言わなかった。そう言ってしまえば余計結が責任を感じてしまうかもしれないからだ。
「ごめんね、結」
「ううん。気を遣ってもらってるの私だし…有紗は悪くないよ」
余計な質問だったと感じた有紗は結に謝罪するが、結は気にしてないといったように首を振った。
それを見てから海斗はまず一番初めに立ち塞がる関門の戸に手を置くことにした。
「その作戦で行くことには異論はないとして、勝と並谷。お前ら部活どうすんの?」
一通り話し終えたところで、昼休みは解散となった。
屋上から降りる階段で、結と勝は先に行き海斗は有紗と少し話していた。
「まあ、そんなことだろうとは思ってたけど。別に気にしなくていいよ。ああするしかなかったのは分かったからさ」
話とはもちろん土曜日のことについてだ。
海斗が事情を説明し、頭を下げると有紗は笑みを浮かべながらそう言ってくれた。
「ああでもしないと、結は動こうとしないっていうか、積極的になれないからね。あれぐらいでちょうどいいんだよ」
そう言い残して有紗は階段を降りていった。
騙すような形になったとしても、結がああでもしない限り積極的になれないとしても、海斗は自分がやったことは友人を侮辱したことに変わりないし、悪いと思っている。
だから勝と有紗の物分かりのいいあの態度はありがたかった。
海斗は降りていった有紗が見えなくなってから階段を降りた。すると教室の前に結の姿が見えた。
「何話してたの?」
「単刀直入だな。そうだな、端的に言えば懺悔かな」
「……ふ〜ん」
「何だよ」
「べっつに〜。ほら、今日は移動らしいから行くよ」
結は海斗の荷物を予め持っていてくれたらしく、海斗の荷物を手渡してきた。
「サンキュー。じゃ、行くか」
「重かったんだけどな〜」
「はいはい、持てばいいんだろ」
軽口を叩きつつ移動教室に向かった。
放課後、海斗と結はいつもの時間に下校していた。
後ろにはもちろん、勝と有紗がわかりにくいように隠れている。
昼休みに出た勝と有紗の問題は、勝はケガをしたということにすることでクリア出来た。ちょうど都合良く6限目が体育であり、それっぽくケガをしたらしい。
勝は手首と足首の捻挫ということに。
かなりピッチャーとして期待されているのか、一週間休んでいいかと聞いたら即座に了解を得たとか。
有紗の場合は女の子の日ということで部活を休むことにしたらしい。そこらへんについては海斗も勝もあまり追求しなかった。(というより出来なかった)
そうして迎えた下校途中なのだが、海斗はあまり緊張していなかった。というより緊張させてもらえないというべきか。
理由は隣で手が震え、若干声も震えながらぎこちなく笑う結のせいである。
不謹慎なのだが、そんな結を笑ってしまいそうになるのを内心必死に堪えているのだ。勝と有紗はどうなのか知らないが、本番に強いタイプであろうあの二人は大丈夫だろうと勝手に思っている。
とりあえず、こんな結をストーカーが見たらなにを思うか分からないのでせめて平常時の状態に戻すことに全力といっていいほど力を費やした。
面白かった話をしたり、驚かせたり、怒らせたりしていたら徐々に震えがなくなったのだが、震えがなくなったのは結の家の前だった。
意味ねえよ、と心の中でツッコミながら今日は解散となった。
何もないというのは、それはそれでいいのだが、早く出てきて欲しいという気持ちもある。海斗も勝や有紗をいつまでも付き合わせるのはさすがに悪いと思うし、そもそも結のあの態度は今日だけでなく明日も、もしかすると明後日も……と続いていくかもしれず、その度に海斗は結の緊張をほぐさなければならない。
さすがにそれは面倒くさいので、犯人には早く出てきて欲しかったりする。
その翌日からも、犯人が出てくるのを待って下校していたのだが、それらしき人物が一切おらず、一週間が経ってしまった。
「おい、どうすんだよ海斗。来週からテスト期間だからそこは行けるけど、テスト始まったら同じ時間に皆帰るから犯人来ねえし、テスト明けても俺と並谷が抜けるのはちとキツイぞ?」
「タイムリミットは来週の一週間てことか…」
二人が話しているのはとあるファミリーレストラン。部活に行かなくていい勝を今日、土曜日に海斗が呼び出していたのだ。
「ま、見放すわけじゃあねえよ。俺だって部活が忙しいからっつってダチ見放すほど落ちぶれちゃいねえしな。ただ、来週一週間を逃すと犯人が出てこない可能性があるだろ」
「どういうことだ?」
「そもそも、あっちは凛堂とお前が一緒にいるのを知ってるわけだろ?ただの興味本位とか、可愛い子目当てのストーカーなら手を引くだろ。俺ならそうするしな」
「でも、結は……」
「分かってる。あいつは向こうで何回かストーカーの被害にあってるし、そのうちの一人が本当はまだストーキングしていてこっちに引っ越してきてるのも知って追っかけてきたーなんてこともあり得るわけだ。だからその二つを加味してもタイムリミットは来週の一週間になるんだ」
言い切ってから、オーダーしたものが届き勝はバクバクと食べ始める。海斗もそこそこお腹が空いているので、ほとんど同じようなものだ。
時間もお昼時でもあり、ちょうど良いランチタイムだった。店内も賑やかだ。だからこそ二人の会話が聞き取りづらくなるから海斗はこの時間に呼びたしたわけだが。
「分かってるんだけどなあ。こうも出てこないとなると後々やっかいになるから早めに終わらせたいんだけど」
「凛堂の相手もさすがに疲れたか?」
「必死に笑いを堪えるのがあんなにキツいとは思わなかった……。ところで、並谷はどうなんだ?」
「あいつは大丈夫だぞ。緊張とか、怖いとかそういう雰囲気はなかった。逆に笑ってたくらいだからな。お前らの様子見て」
うぐっ、と海斗はのどを詰まらせ、急いで水を飲む。
「止めてくれよ。僕だって堪えてるんだからな」
「しゃあねえだろ。ありゃあ側から見たらおかしな二人組だぜ」
言いながら勝も豪快に笑う。
「あんなことしなくてもいいように、早く出てきてくれりゃいいんだがな」
そう締めくくって勝は食べることに集中し始めた。海斗もそうなればいいな、と思いつつ食べ始めた。
そして、明けた翌週の月曜日から水曜日まで先週と同じように下校したが何も起こらなかった。焦る海斗たちは諦めにも似た気持ちを持ちつつ迎えた木曜日。ついに、犯人が姿を現した。
一番初めに気づいたのは恐らく海斗だろう。ふと後ろを向くと、スマホを手に持ち俯きながらこちらに向かってくる男がいた。
黒いキャップに黒いパーカー。ベージュのパンツを履いた、ずいぶんと怪しげな人だ。
もしかして、と思った海斗だが後ろに人がいることを結に悟らせるべきではないと判断しあえて言わなかった。
もし結が気付けば前みたいな状態に陥り相手が逃げる。それは何としても防がなければならない。
勝と有紗には「不審な行動、怪しげな人物で結に近づいてきた人物がいたらメールすること」と言ってあるので、そのメールが来たら覚悟を決めることにした。
数分待って、二回連続でメールが来た。相手に気づかれないようにバイブにしておいて正解だった。
流し目で後ろを見やると先ほどの男がかなり近づいてきていた。その距離わずか10メートル。
結は未だに気がついていない。それはかなりありがたかった。
男があと近づくまで二歩のところになったら動く。海斗はそう決めた。
五歩
海斗は拳を握りしめ、
四歩
バックを簡単に放り投げれるようにそっともち、
三歩
足に力を入れて、
二歩
思い切り拳を振りかぶり、海斗が後ろに一歩踏み出したところで、
一歩
「うおおらあ!!」
思い切り殴りかかった。
殴ったのは顔面。男は顔を覆いながら痛みに耐えている。
結はそれをポカーンと見ていた。
男は痛みに耐えていたがそれも数瞬。すぐに反撃が来る。
「いってえなあ……っとおわぁっ⁉︎」
「へへっ!ザマァみやがれ!」
男が殴りかかる前に後ろから走ってきた勝が足を払ったのだ。そのまま男は転倒。すぐさま海斗は男の馬乗りになる。
「キサマ、何で結をストーキングする」
“久しぶり”に使うドスの利いた低い声で相手を威嚇しつつ、質問する。
その声に勝と結が少しだけ肩をピクッと震わせていた。だが今はそんなものは関係ない。
「質問に答えろ」
ぐっと胸ぐらを掴み上半身を浮き上がらせると黒いキャップが取れて地面に落ちた。
そして、見えた顔に海斗は一瞬で恐怖し自分のやってしまった過ちを即座に悔いた。
「海斗、テメエ……誰の顔を殴ってんだよ、コラ」
そう、その男は知り合いだった。いや、『知り合い』で済ませられるほど安い関係ではない。
「し、俊兄……?」
彼は、海斗の従兄弟だった。
その後、彼は気を失う。
えっと、なんと言いましょうか。
この話、たぶんなんですけど、見てくれている方の期待を裏切った形になるのではないかと思い少々ビクつきながら投稿させていただいておりまする…。
いやね⁉︎犯人がまさか従兄弟だなんて、そんなバカな……みたいな?
詳しい事情は次話としまして、今回の遅れた(期日は一週間以内なんでね、本当に遅れているわけではないのですが…)理由としましては、ただ書いてなかっただけです。ハイ。それだけです。本当に。
読んでくださる方が待っているという状況で書かないというのは私自身少し罪悪感を感じるに禁じ得ないところなんですが(これ、日本語あってる?)ま、まあ、そこはね⁉︎人間ですから……。ご容赦願いたいと存じます…。
それでは、少し次話に関して告知を。
私、実は現役学生でしてね、来週から手に血を滲ませ、目に血を溜め、頭をまるで台風のように回さなければならない地獄の日々が始まるのですよ。
端的に言えばテスト期間です。
てとこで、来週、再来週とテスト期間、になりますので更新がもしかするとテスト明け、なんて事態が起きる可能性があります。なので、最低10月20日には更新させていただきます。
申し訳ないのですが、ご理解頂けるとありがたいです。
それでは、またお会いできることを楽しみにしています!バイバーイ!