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ラストメモリーズ  作者: はらずし
第一章 春
3/24

第二話 自己紹介

久しぶり?ではないかな。はらずしです!


えー、今回は少し長めにしてみました。

ちょっとアイデアが出にくかったのですが頑張りましたよ!


では、どうぞ!


「一緒に帰りませんか?」

彼女、結にそう提案されて海斗は了承し、今、帰り道に至る。

「君もここに引っ越す予定だったのか?」

「はい。そうです。その準備中にカイがいなくなっちゃって……」

あのネコ、海斗によく似た名のカイがあそこにいたのはそういうことらしい。

少しは気にしていたことが理解出来たからか海斗は少しだけスッキリした。

「でも、何でこっちに?」

「ああ、えっと、お父さんが海外へ赴任することになったんですけど、さすがに海外は無理って行ったら、じゃあ一人暮らしすることになるけどって言われて……」

「今一人暮らしなの?」

「そう……なのかな?こっちに引っ越してきた理由はおばあちゃんの家が近いからって理由だから一人暮らしとは言わないかもしれないけど」

つまり両親が海外へ行き、ついて行きたくない結は一人暮らしを始めることになった。ここに引っ越してきた理由は祖母の家が近いから何があっても大丈夫だろう、ということなのだろう。

「でも、おばあさんに頼るなら一人暮らしじゃなくてもいいんじゃない?」

「それはですね……。うちの祖母は少し体が弱くて、あまり心配はかけられないんだ……」

それなら一人暮らしされる方が余程心配になるんじゃないかと思ったが口にはしなかった。

少しだけ言い淀んでいた風に見えたので何か事情があるのだろう。

例えば……

「そういう棚瀬さんはなんでここに?」

「僕?……君と似たようなものだよ。父がこっちに飛ばされてね」

海斗のように。

それはさておき海斗は一つ結に不満があった。それほど大きなものでもない些細なことだ。

「あのさ、敬語やめないか?僕もだんだん地が出てきてるし正直めんどくさい。君もそうだろ?」

「あ、はい。……じゃなくて、うん。そうしてくれると嬉しいな」

「そうか。じゃあ改めて、棚瀬海斗だ」

「凛堂結です。一年間よろしくね」

そういって海斗と結は笑いあった。

そのままずっと道が別れることも無く歩いて雑談をしていると海斗の家に着いた。

「ここ、僕の家なんだ」

「え?ここなの?」

「ん?何かおかしいか?」

「えっと、それは……」

「あれ?海斗?何してるの?」

結が言葉に詰まっていると海斗の母親が出てきた。

母は海斗を見て、次に結を見て固まった。

「あ、あの、母さん?」

一応呼んではみるものの反応はなかった。

そのかわりに母は何か納得したような表情で無言で扉をしめていった。

「え?あの、えっと……」

母の反応に結は困ったようにあたふたしていた。その仕草がすごく可愛らしく、海斗はつい失笑してしまった。

「な、なによ。何がおかしいの」

「あははっ。いや、ちょっとね」

「もうっ、なによ」

「なんでもないって」

「お〜し〜え〜な〜さい」

このようなやりとりを数分間やり続け結局結が折れて終わった。

「で、結の家はどこ?」

「な、名前……!」

「ん?どうかした?」

「ううん!なんでも!えっと私の家だっけ?もう少し向こうかな!」

なんでも、と言う割には顔が若干赤いがそこはつっこまない方がいいのだろう。

言ったら厄介なことになる気がして海斗は言わないことにした。

「じゃあ送っていくよ。行こうか」

「え?いいの?」

「構わないさ。ほら、案内してくれよ」

「う、うん」

言われて歩き出した結は不思議そうにしていた。

その表情を見て海斗は苦笑する。

「何か質問でも?」

「あ、あの。何で送ってってくれるの?」

「何で、か。そうだな〜」

海斗は自分でも何でそう言ったのかしっかりとした根拠はなかった。

ただ、女の子を一人にするのは危ないと思ったからか。それでも今は真昼間だ。襲われる心配はほとんどない。

なら、なぜ。自問しても答えは出てこない。

「棚瀬くん?」

「ん〜……わかんない」

「わ、わかんないって」

「いや、ほんとにわからないんだ。取って付けたような理由はあるにしても本当の理由ってのがわからない」

そう海斗が言うと結はポカンとして次にふふふ、と笑い出した。

「棚瀬くん、変だね」

「よく言われるよ」

「よく言われたらダメだと思うな」

「ん、そうだな」

「ふふっ。ほんとに変っていうか、面白いね」

ふふふ、と笑い続ける結。

それを見た時、海斗はようやく悟った。自分がなぜこの女の子を送ろうとしたのか。

「これが、見たかったからか……」

「え?なに?」

「いや、なんで結を送ろうとしたのか分かったんだ」

「何々〜?」

上目遣いのように海斗の顔を覗き込む結に少したじろぎながら海斗は答えようとした。

「そうだな……」

「……?」

「……結と話してるのが楽しいから、だな」

「………え?……あ、そう…なの?」

海斗が言うと結は驚いた表情で身を引いた。その顔はほんのりと紅い。

(うん、これでいいかな)

海斗はそう思った。先の答えは本当であって本当ではない。なぜ本当の本音を隠したかといえば、それを言うのはイケない気がしたのだ。

自分のその答えは今は胸の内にしまっておこうと思っていると結が声をかけてきた。

「あ、私のアパートここなんだ」

「へえ〜……ここか」

結の住むアパートは二階建てだった。

新築なのだろうか、そこらのアパートより綺麗だ。

「ここ、家賃いくらするの?」

「えっとね、5,6万くらいだったかな。うちの親戚が不動産屋で、安くしてくれたんだ」

この綺麗なアパートで5,6万はかなり安いと思う。持つべきものは不動産屋の親戚なのかと思いつつ海斗は結にバレないように苦笑する。

「しかし、案外僕の家と近いじゃないか」

海斗の家から歩いてきたが10分くらいしか経っていない。

「そうだね〜。私もビックリだよ」

言いつつ結は笑っている。

「じゃあ、私は帰るね」

「ああ、僕も帰るよ」

「また明日」

言って結は二階へ上がっていった。結が階段を登って部屋の前に着いたところで、海斗はアパートに背を向けた。また来ることがあるのかなとここ最近の趣味である未来の想像をしながら家への帰り道を歩いた。

家に帰ると母がリビングで興奮したように帰ってきていた父に話をしていた。

「ねえあなた聞いてよ!あの子ったらもう女の子に手だしてるのよ?すごいと思わない⁉︎」

「そうか、あいつも盛りなんだな。もう手を出すとは。俺に似たのかな?」

「何を不名誉なことを言ってるんだ」

帰ってきて早々海斗は抗議の声を上げることになった。なぜこんなことに、とため息をつきそうになる。

「あ、おかえり海斗。ご飯出来てるわよ」

「食べるけど、僕はあの子に手を出したわけじゃない」

言いつつ海斗は食卓の席につく。

海斗が座るとリビングでタバコを吸っていた父もやってきた。

「何、照れることはない。父さんも昔は色んな女と付き合ったんだ。お前もその血が流れてるんだよ」

「誰が。あの子はそういうんじゃなくて、ただ向こうで会ったことがあるから喋ってただけだよ」

「ふーん。俺はあんな子見たことないけどな」

父がそう言うと母も「そうよそうよ」と言ってきた。

「一回会ったことがあるだけだからね。そう大した中じゃない」

海斗がそう言ったっきりその話は終わり学校の話になっていった。

遅めの昼食をとった海斗は食器を片付け二階なは上がろうとしたところで母に止められた。

「あんた、本当に手出したんじゃないの?」

「何度も言ってるだろ?そうじゃないって」

海斗は呆れ返ったようにため息をつく。

「ふ〜ん。それにしてはなんか嬉しそうね」

「まあね。あの子と話すのは楽しかったから。それじゃ上がるよ」

「かわいい子だったわね。あの子」

「もう、なんだよしつこいな。何が言いたいんだ」

「あんた、惚れてない?」

言われて、海斗は押し黙る。

(あれは、惚れたというのだろうか)

先日の遭遇。今日の会話。そして、あの憂いを帯びた顔で綺麗に笑うあの笑顔。

それらを思い出し、海斗はこう結論をつける。

「違う、かな。まあ友達としては好きだろうけどね」

言って、母にまた質問されるのが面倒なためさっさと上に上がって海斗は自分の部屋に入っていった。

「……ウソ、だね」

「あれはウソだな」

「わっ。あなた聞いてたの?」

「聞こえてたの間違いだ」

だからこの会話は聞こえなかった。


「行ってきまーす」

「「行ってらっしゃい」」

翌日の朝、8時に家を出ても間に合うが少し早めに15分前に家を出た。

なぜなら、早く学校について色々と見て回りたかったからだ。特に本が好きな海斗は図書室に行きたかった。

両親に見送られ玄関を出て歩き出すと、後ろから声がかかった。

「あの、棚瀬くん?」

「ん?あ、結か」

後ろを振り返ると結がいた。

今日は長く伸ばした黒い髪を一つに纏めて縛っていた。それはそれでいいと思ったが、海斗としては何も手を加えない方が似合っていると思った。口にはしなかったが。

「偶然だね。何でこんな早く?」

「今日はたまたま早く起きたから。棚瀬くんは?」

「僕は学校を見て回ろうかなと思って。そうだ、結もどう?」

「うん、もちろん同行するよ。早く行ってもすることないし」

「じゃあ決まりだね。さっさと学校行こうか」

そう言って二人は学校へと歩き出した。

途中、先輩と思わしき生徒たちの視線を浴びたような気がしたが海斗は気にしなかった。

学校に着き、二人はクラスに入って荷物を置くと学校を見て回り始めた。

「どこか行きたいとこある?」

「う〜ん。ないかなぁ。棚瀬くんは?」

「じゃあ図書室行っていいか?見てみたいんだ」

「この時間空いてるの?」

「昨日確認したけど、8時から空いてるそうだ」

「じゃあ、そこ行こう」

行く場所は決まったが、少し時間があるので他のところを見て回ってから図書室に行った。

(これなら、退屈しないかな)

学校の図書室だからそんなにないだろうと思っていた海斗だが、予想外の広さに加え量もあったので少し安心した。

気になった本を一冊借りてから結と教室へと戻ることにした。時間がそこそこ過ぎていたのだ。

ちなみに図書室で結は料理の本を探していた。一人暮らしだから色々と苦労があるのだろうと海斗は思った。

教室に戻るとほとんどの人が教室にいた。

昨日とは違いざわざわしている。交流しているのだろう。名前を言い合っていた。

「じゃあ、私席に戻るから」

「ああ、またな」

戻っていった結を見ながら海斗も自分の席に着く。すると、短髪頭の一人の男子が寄ってきた。

「な、なあ。君、あの子と付き合ってるの?」

初対面でありながらこの不躾な質問。流石は色恋沙汰には目がない年頃というべきか。

訊かれた本人である海斗は昨日の親の質問を思い出し、ため息交じりに答えた。

「違うって。そんな仲じゃあない」

「へえ。でもたぶん、他の人は皆そう思ってると思うぜ?」

「勘弁してくれ。何でそんなことになってるんだよ……」

「昨日、一緒に帰ってたからだろ?」

「おいおい、マジかよ……」

別に嫌なワケでは無いが、変な誤解を産むと結に迷惑がかかる。それだけは人として嫌だった。

「ま、心配すんな。俺が違うみたいって言っておいてやるからよ」

「本当か?それは助かる。ってか、もうクラスの人と全員喋ったのか?」

「まあな。昨日のうちにお前とあの子以外は」

何というコミュニケーション能力。普通は尻込みするであろう場面なのに、と海斗は驚いていた。

だが、あることに気付いてそれもそうかと納得した。それは彼が昨日、先生に初めに質問した男子だったことに気付いたからだ。

「君、昨日先生に質問した……」

「ああ、その人こそ俺だ。俺、山本勝っていうんだ。お前は?」

「僕は棚瀬海斗。一年間よろしく」

「つれないこというなよ。三年間かそれ以上だぜ」

シニカルに笑う勝。その笑みは人懐っこさがとても出ていて海斗は勝とはいい友達になれそうだと直感した。

「さて、皆。こんな感じのやつだ。ビビるこたねえよ」

勝は急に後ろを振り向きそう言った。何だ?と思い海斗も振り向くとそこにはクラスの男子全員がいた。

「あー、良かった。不良とかだったらどうしようかと思ったよ」「んなわけねえだろ。あのナリだぜ?」「あ、これからよろしくな」

色んな人からいきなり色々言われたものだから海斗はたじろぐ。それを見ていた勝は腹を抱えて笑っていた。

「おいおい皆押し強すぎんだろ。もう少し気いつけろ」

勝が言うと「ああ、すまんすまん」という声が上がり、そのまま質問タイムへと移っていった。

チャイムが鳴り、そこでようやく解放された海斗は机に突っ伏していた。

結の方を見てみると、結も同じような歓迎を受けていたらしく海斗と同じように机に突っ伏していた。


午前の授業も終わり、昼休みになって海斗は結と屋上で昼食をとっていた。

なぜ結と同じかと言えば、質問攻めに合うのを回避したいがために海斗が屋上に行くとそこには同じことを考えた結がいたからだ。

そこで成り行きで一緒に昼食を、ということになった。

「疲れたねえ。あれ」

「本当にあれはキツイ。結、大丈夫か?」

「あはは。大丈夫だよ。慣れてないから少し疲れたけど……」

「それは僕も同じだ」

弁当を広げて食べながら二人は話していた。

海斗はふと結の弁当に目を向けた。

「これって、結が作ったのか?」

「うん。手作り。あんまり美味しくないけどね」

結は苦笑するが、海斗から見て、その弁当の中身はかなり美味しそうに見えた。

「なあ、これ一つもらっていい?」

「うん。いいけど、味は保証しないよ?」

言いつつ弁当を差し出す結。

海斗はその中の一つの卵焼きをとって食べた。

「…………!」

「ど、どう?」

「………やっぱり」

「やっぱり?」

「美味い。これ、かなり美味しいぞ!」

「そ、そうかなあ」

「お世辞じゃなくて、本当に美味いからな?これ。なんなら毎日食べたいくらいだ。もう一つもらっていいか?」

「あ、いいよ。どうぞ」

自身なさげな結だが、美味しいと言ってもらうのは嬉しいらしく先ほどより明るい表情で弁当を差し出してきた。

「うん、おいしいな」

「美味しいって言ってくれてありがとう。自身なかったからさ」

「お礼を言うのは僕の方だ。こんな美味しいものを食べれたんだから」

その後結が海斗の弁当のおかずを美味しそうに食べて、今度レシピを教えてくれと言われた。

二人とも食べ終わって片付けると、ちょうどいい時間だった。

「そろそろ教室帰るか」

「そうだね」

ベンチから立ち上がって屋上のドアに手をかけると中から「わわっ!」と2人分の声が聞こえてきた。何だ?と不思議に思いつつドアノブを捻って開けると、そこには勝とおかっぱ頭の女の子がいた。

「おい勝。何やってんだよ……」

「有紗ちゃんも、何してるの?」

後ろからひょこっと顔を出した結が言う。

有紗とはもう一人いるおかっぱ頭の女の子のことだろう。(女子で)平均的な身長の結より低い。あれは160は無いのではないだろうか。

身長の高い勝と並んでいるからか、有紗という女の子がかなり低く見える。

まあ、勝より背の高い海斗だからそう思うのかもしれないが。

「いやあ、事の真相を解き明かそうと思って」

事の真相。それはたぶん僕たちの仲についてのことだな、と海斗は考えた。

それ以外、海斗たちを見張る理由がない。

「だから言ったろ。そういうんじゃないって」

「二人で飯食ってたやつに言われても説得力ねえぞ、海斗」

「まあそれはいいとして、もしかして君もかい?」

海斗が言う君とはもう一人いる有紗という女の子のことだ。

「うん、まあね。何か面白そうだったし」

「もう、何回も言ったでしょ?棚瀬くんとはそういうんじゃないって」

「それでも気になるものは気になるのよ、結」

この様子だと、結の方でも海斗と同じ質問があったらしい。男子であれだったのだから女子はもっとすごかったのだろう。

「で、僕は君のこと知らないんだけど…」

「知らないとは失礼な。まああんな時間の自己紹介なんてほとんど誰も覚えてないだろうし、当たり前か」

その時間眠そうにしていた海斗は更に覚えていないのだから仕方ない。

「私は並谷有紗よ。よろしく、棚瀬くん」

「僕の名前を覚えているのか?」

「記憶力は良い方でね」

トントン、と有紗は自分の頭を叩く。

「そうか。これからよろしく、並谷」

海斗が言うと、ちょうど予鈴のチャイムが鳴った。

「おっと、チャイム鳴ったし早く教室帰ろうぜ」

「そうだな。行くか」

勝が言って続いて海斗も言うと後の二人も一緒になって教室に戻っていった。


これが、この四人の初の会合だった。



はいっ!今回はここまで。


そういえば、キャラの読み方書いてないなあと思ったのでここにのせておきましょう。本文では書きませんからねww


棚瀬 海斗 (たなせ かいと)

凛堂 結 (りんどう ゆい)

山本 勝 (やまもと まさる)

並谷 有紗 (なみたに ありさ)


この四キャラが主要キャラになるかな?

海斗の両親の名前はそのうちに……。


では、また一週間以内に会いましょう!


感想等お待ちしております。気軽にどうぞ!

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