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ラストメモリーズ  作者: はらずし
第三章 秋
14/24

第十二話 準備

どうもっ!はらずしです!


いや、あの、ホントスンマセンっしたぁぁぁ!


とりあえず、どうぞ!

日が早く落ち始め、着々と冬へ向かう準備をするかのように風が冷たい十月の中旬。秋風が冬のカラッとした風に変わり、キレイに紅葉した葉っぱが枯葉となり落ちていく。

その枯葉を横目に見ながら結と一緒に海斗は学校へ向かう。そんな海斗は枯葉を見て風情を感じるのではなく、ただただ憂鬱だった。

「棚瀬くん、そんなに嫌なの?」

「いや、まあ、そういうわけじゃないんだけど…」

「その様子じゃあ嫌そうにしか見えないけど」

結は苦笑しながら言う。

それもそのはず、否定している海斗からネガティヴな感情しか感じられないからだ。しかも時折ため息をついているので否定されても説得力がないのだ。

確かに、と言う海斗が何を嫌がっているかと言えば、もちろん結と一緒にいることではない。

「文化祭の準備そんなに嫌がる人初めて見たよ」

「まあ、そうだろうなぁ」

結が言う「文化祭の準備」こそ海斗が学校へ行くのを嫌がる原因だ。

今週一週間は二年生が修学旅行について行き二学年担当の教師たちがいなくなる。そのため一年生と三年生の授業を担当している教師が当然いなくなり、授業変更を余儀なくされる。そしてこの学校はそれが面倒なのか、二年生が修学旅行旅行に行っている期間は一、三年生は文化祭の準備を行うのだ。生徒にとっては授業が一切ない一週間で、しかも高校生活を彩る行事の一つなのでそれはもう大喜びなのだ。

たが、海斗は違ったのだ。

「なんでそんなに嫌なの?」

「僕不器用だからさ、仕事頼まれてもろくに出来ないんだよ……」

「そうなの?」

「中一の時に頼まれた仕事が出来なくてみんなに迷惑かけちゃってさ。結局他の人がやってくれたんだけど、申し訳なくて…。それ以来嫌なんだよなぁ、文化祭の準備」

顔をしかめ嫌そうに言う海斗を見て、結はクスクスと笑う。海斗はそれが少し気に食わなく、結に批難の目を向ける。すると結は笑みは消さないものの手を振って「ごめんごめん」という。

「何がそんなに面白いんだよ」

自分が思ったより機嫌の悪い声を出したのを自覚しながら結に訊くと結はまだ笑いながら答えた。

「その話、ただの自己嫌悪にしか聞こえなくて。本当にお人好しだね、棚瀬くんは」

言って、結はクスクスと笑い続ける。

まさかお人好しなんて言われると思わなかった海斗はポカーンとしたまま結の隣を歩いた。

自分はお人好しなんかじゃない、そう思いながら……




「おーい、こっちにそれ持ってきてくれ!」「布ないから誰か買ってきてくれなーい?」「メニュー表どうする?」

活気の良い生徒の声があちこちから聞こえる。それは一つのクラスだけではなく一、三年生のクラス全てのクラスから聞こえてくる。

さすが高校生だけはある。高校生活の一大イベントの一つ文化祭は大変盛り上がるのだ。その準備だけあって、みんなやる気がみなぎっている。海斗以外は。

「海斗、お前そんなとこで何してんだ?」

海斗に話しかけたのは勝。そして話しかけられた海斗といえば、教師の隅っこでただボーッとしていた。

「何って、応援?」

「ふざけてんのかテメエ。まあいい。ちゃんと仕事はやってもらってるしな」

後もよろしく頼むぜ。そう言い残すと勝はさっさと自分の持ち場に帰っていく。

「本当にやってるかどうか分かんないけどなぁ」

海斗はボソッと呟くと、また周りを見ているのか見ていないのか分からないほど焦点の合わない目線を教室に向ける。

海斗のクラスは喫茶店をすることに決まった。そして大きく分けて店の内装を担当するグループとメニュー製作を担当するグループの二つに別れている。そして内装を担当するグループのリーダーが勝。メニューを担当するグループのリーダーが有紗だ。

二人は文化祭の実行委員も兼ねており、そこそこ忙しい。だから勝は海斗に重要なことだけ告げてさっさと戻っていったのだ。

どちらかといえばメニュー製作担当に女子が多く割り振られているがどちらのグループも男女比はほぼ等しい。

もちろん結はメニュー製作担当のグループだ。一人暮らしをしていて、料理は得意としているので当たり前といえばそうだが。

そのどちらにも属していない海斗はほとんど雑用に徹している。

とはいえ、雑用もそれなりに忙しいのだ。足りないものの補充のために買い出しに行ったり、先生への許可申請を行ったり、邪魔なものを退けたり、両グループの進行状況を共有させる橋渡し役になったりとそこそこ働くことになっている。

海斗はそれをほとんど一人でこなしているにも関わらず、特に疲弊している様子はない。というより疑問の方が大きい。

何が疑問かといったら、普通リーダー的存在の勝や有紗がやるような書類整理をただの雑用である海斗がやっていることだ。

ただ、疑問というだけで海斗自身、不満は全くない。むしろこういう書類整理の方が得意な海斗からしたら万々歳な仕事なのだ。

そして効率良くやっていたらいつの間にか暇になるのだ。休憩は数分だが、仕事も数分で終わるので結局は暇になる。その暇な時間はただボーッとするだけだ。海斗は何もしない。

(暇だな……)

そう思いつつ、一々面倒なことはしなくていいこの状況が嬉しかったりする海斗だった。

「試作出来上がったよー!」

ボーッとしていると、クラスメイトが前の入り口から大皿を持って入ってきた。とても美味しそうな匂いだ。

「よしっ。取り敢えず休憩に入るぞ〜」

勝がクラスに響く声で言うとみんなが疲れたような声を漏らしつつ、試作の食べ物に群がる。

海斗も少しおこぼれをもらおうかと群がるクラスメイトに近づこうとすると勝が肩をポンと置いた。

「なに?」

「お前は、仕事」

「鬼か」

「ちゃんと残しといてやるから。ほら、これ纏めといて」

「メニュー表?これどうすんの?」

「パソコンでいい感じに仕上げてくれ。数種類用意してくれるとありがてぇんだけど」

「お前は本当に鬼か」

「雑用だろ?まあ頑張りたまえ」

「お前のあだ名、本当に鬼にしてやろうか?」

「やめてくれよ。事実なんだから」

「よし、絶対に広めてやる」

「もう遅えよ。みんな気づいてる」

「残念だったな。勝くんよ」

「うっせ。さっさと仕事済ませてこいや」

はいはいとおざなりに返事して、置いてあるノートpcを立ち上げる。さっさと片付けるために、今まで行ったことのある店のメニュー表を思い出し、適当にデザインを混ぜて三種類メニュー表を作り出す。印刷はコンビニまで行かなければならない。そんな面倒なことはしたくないので勝を呼んでここで確認する。

「おーい、勝。こんなんでいいか?」

「仕事早えよ。どれどれ……」

呼ばれた勝はノートpcを覗き込んで作った三種類に目を通すとうーんと唸る。

「そうだなぁ。どれもいいけど、俺だけで決めるわけにはいかねえし。取りあえずコンビニまで行って印刷してきて」

「それは自分でやれよ」

「ああ?……しゃあねえな。んじゃ行ってくっから、並谷に適当な時間で休憩終わらせてくれっつっといてくれ」

言うと勝は教室を出て行った。

言われた通り海斗は有紗に伝えると

「了解、了解!」

と元気良く引き受けてくれた。

それにしても、と海斗は思う。

(それくらい自分で言ってけばいいのに…)

ここ最近勝はずっとこんな感じなのだ。

有紗に対してだけ必要最低限のコミュニケーションしか取ろうとしない。誰かがやってくれるような、例えば先ほどの伝言なんかはほとんど人に任せる。自分から何かアプローチしようという気が全くないのだ。

かといって有紗と会話することが嫌なわけではないらしい。

話を振られればちゃんと応じるのだ。自分からは滅多に振らなくなったが。

そのことに有紗は気づいているのだろうか。勝が有紗を避けていることを。

(ま、そんなこと僕が考えてもな……)

海斗が考えたところで当人達がどうにかしない限りこのことについてはどうにもならない。だから海斗が思考を巡らせても意味はないのだ。

そう思い、海斗は残った試作のクッキーをつまむ。

(うん、美味いな)

一人勝手に感心してから元の定位置に戻る。すると、結が声をかけてきた。

「どうだった?棚瀬くん」

「試作品か?クッキーしか食べてないけど、おいしかったよ」

「そっかぁ。よかった」

結はそういって嬉しそうに笑う。

「オムライスとかカレーとかも作るから、良かったら食べてね」

「うん。楽しみにしておく」

それじゃあねと言い残して結は友だちのところへ帰っていった。海斗も他の男友だちのところへ混ざりに行けばいいものの、特に話すこともないと思い、机に突っ伏した。




いつの間にか眠っていた海斗が顔を上げると30分くらい経っていた。

「やばい。仕事が……」

自分の役割は雑用だ。30分経ったならそれなりの量が溜まっているに違いない。そう思った海斗は勢い良く立ち上がったが、結論としてそれはただの勇み足に終わった。

「あれ?……まだ休憩中か?」

周りを見ればみんな何もしていない。いや、している人も多少いるが大半はご飯を食べていた。

「有紗ちゃんがキリがいいからお昼休みにしようって言い出したんだよ」

独り言のつもりだった海斗の疑問に答えた声の主は、海斗の隣に座っている結だ。

「そうなのか。あれ?勝は?」

「もう帰ってきてるよ。ほら、あそこ」

結が指差した方向に勝はいた。勝もまた昼食を取っている。

「そうか。なら僕もお昼食べようかな」

「あと20分くらいで休憩終わっちゃうから早く食べてね」

「はいはい〜」

海斗は自分のカバンにあるパンを取り出して食べ始めた。

「あれ?棚瀬くん今日はパンなの?」

「うん。母さんが二日酔いで潰れててね。弁当はないんだ」

「あはは……。そういうこと」

「まあたまにはパンもいいもんだよな」

「うんうん。お弁当作らなくていいから楽だしね」

「さすが一人暮らし。着眼点はそこなのね」

「あはは、まあね」

そんなたわいない会話をしていると、前で紙くずを丸めてキャッチボールをしているクラスメイトが目に入った。紙くずの中にオモリが入っているのか、中々スピードが出ている。

特に気にすることではないが、さすがにご飯中にするのは止めてもらいたいな、と思った海斗は今食べているパンを食べ終えてから軽く注意しようかなと思った。

しかし、

「あっ、ヤベッ」

一人の男子がコントロールをミスったのか紙くずがあらぬ方向へ飛んで行ってしまう。

その方向には有紗がいた。

そこそこスピードは出ていて、オモリも入っているが基本当たっても大丈夫だろうと海斗は思っていたが、当たる場所が分かった瞬間、焦った。

それは顔だったのだ。

「バカっ……!」

海斗は勢い良く立ち上がろうとしたが今出てももう遅い。男子ならいざ知らず、女子の、しかも顔に当たるのはいけない。

有紗が避けてくれれば、そう海斗は思ったが、有紗は驚いているのか、それとも怖がっているのか分からないが、目を見開いたまま動かなかった。

当たる、海斗はそう思った。

だが、有紗に紙くずが当たることはなかった。いつの間にかいた勝が受け止めていたのだ。

有紗は硬直から解放され一息ついていた。

同じくホッと胸を撫で下ろした海斗はそのままもう一度座り込む。他の人は今のことに気づいていないようだ。

まあ何も無かったんならそれでいい。

海斗はそう思って紙くずをキャッチした勝を見ていると、勝がいきなり持っていた紙くずをキャッチボールしていた片割れの男子に投げ返した。それもかなりの速さで。

ビュンっ!と音が鳴り、壁にぶつかって床に転げ落ちる。当たりはしなかったが、男子のほほをかするようにして飛んで行ったため、その男子は腰を抜かしている。

「気ぃつけろ。危ねえんだよ」

勝は怒りを抑えているように見える表情で言う。その声は低く、それほど大きな声では無いのだがクラスの誰もが聞こえた。

騒がしかったクラスは一瞬にして静寂を纏う。

それに少し遅れて気づいた勝はハッとしたようにいつものスカした表情に戻る。

「ったく、遊びてぇんならもう少し待て。あと何時間かしたら終わるんだからよ。小学生かお前ら」

おどけたように言うとクラスの全員が笑う。一瞬の静寂はどこかへ飛んで行き、また騒がしさを取り戻した。

有紗は勝に何か言っている。たぶんお礼だろう。勝は少し話した後すぐに自分のいた場所に戻った。

「ビックリしたぁ。山本くんのあんな声初めて聞いた」

「僕もだよ。どうしたんだろうな」

海斗がそういうと結はすぐに興味を失くしたのか違う話題を振ってきた。海斗はそれに返答しながらも勝を見ていた。

その勝は、勝の表情は先ほどまでの怒りは全く感じられない。しかし、全く別種の感情が顔に映し出されていた。

それは海斗しか気づかなかっただろう。何せ数秒だけのことだったから。

その勝の表情は、憤りか、後悔か、嫌悪か、もしくはその全てが混ざって、とても苦しそうな、悲しそうな顔をしていた。




勝のこの表情の意味を知るのは、文化祭最終日だった……。

えー、まずは全力で謝罪申し上げます。


ホンットにすみませんでしたっっっ!!

更新予定日が1日ずれこんでしまいました……。

本当に申し訳ないです。


理由としましては(というかただの言い訳ですが)書き始めたのが日曜の夜9時だったんですよ。

そして三時間で書き終えれるはずもなく、今後書きを書いている時点で午前4時です。はい。

かなり時間かかってます。


本音を言わせてもらえば、この話あまり筆が乗らなかったんですよ。なんか、書きづらかったです。


まあそんなことはさておき、次回の更新予定日ですがたぶん12月の7日になるかもしれません。

ええ、お察しの通りテスト期間です。

しかし、もしかしたら今週の日曜に更新する“かも”しれませんのでよろしくお願いいたします。


それではまたお会いしましょう!

See you!

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