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ラストメモリーズ  作者: はらずし
第二章 夏
12/24

第十話 プール

あ、あっぶねえ!まだセーフ!ギリセーフ!

はい、はらずしです!


この話を読む前に私のこの一言を目に刻んでください。


私は、変態ではありません。


意味は読めば分かります。ではどうぞ!

その日は絶好のプール日和だった。

天気は雲ひとつない快晴。気温は高く、まるで真夏日のようだ。

街を見れば日がさをさして歩く人もいれば、パタパタと手で風を送るサラリーマンもいる。彼らは暑そうに流れる汗をぬぐっている。半袖でも暑いくらいだ。

それは海斗たちも例外ではない。

「あ、暑いよ……」

「ほら、もう少しでバス停だからがんばれ」

「う、うん…」

うなだれながら歩く結に苦笑を抑えつつ、海斗は励ましながら結を歩かせる。

海斗も暑いことは暑いのだが、こういう暑さは好きな方なのでそこまで苦ではない。だが人並みには暑いと思うし、汗だってそこそこかいている。

「まあ結の言う通り暑いな。今年一番の真夏日じゃないのか、これ」

海斗は頭から流れる汗を半袖の少ない袖で拭う。するとうなだれていた結が海斗にすっとハンカチを差し出す。

「棚瀬くん、これ使って」

「いや、いいよ。大丈夫だから」

そう言って手を振って断る海斗だが、結はくすっと笑う。

「いいから、ほら動かないでね」

言うと結は背伸びして自分のハンカチで海斗の汗を拭う。その結の表情に海斗はなぜか少し違和感を覚えたが、あまり気にしなかった。そんなことよりまるで子どものように扱われたことが恥ずかしかったからだ。

「……行くぞ」

「ふふっ、棚瀬くんは恥ずかしがり屋さんだなぁ」

そっぽを向いた海斗に笑う結に、より一層恥ずかしさを覚えた海斗はバス停に着くまで結の顔を見れなかった。

二人は汗を流しながらバス停に着くと、すでに勝と有紗がベンチで座っていた。

「よっ海斗。なんだ、二人で来たのか?」

ベンチから立ち上がって海斗と結を出迎えた勝はニヤついた笑みをかくそうともせず言ってくる。それを見て少々イラッときた海斗はあることを思い出す。

「まあ道は一緒だからな。それより勝、一つ頼みがあるんだけど」

「何だ?」

「一発、殴られろ」

海斗は言うが早いか勝のみぞおちを軽く殴った。

「お、おいおい。それ頼みじゃなくて……命令だろ……つか何で俺殴られるのん?」

殴られた勝はお腹を押さえながら海斗に訊くが海斗は察しろと言わんばかりの視線を送るだけだ。それを見て勝は納得したように声を出す。

「あ。あれか。……まあ、すまんな」

「分かればいいんだよ」

あれとは勝が海斗一人に結と有紗の買い物の荷物持ちを押し付けたことだ。それでも特に苦ではなかったため、そこまで強く殴らなかったのは海斗だからなのだろうか。

それを分かっているくせに勝はこう言う。

「学校でも評判のいい美少女二人独り占め出来たからそんなに強く殴らなかったんだろ?分かる、分かるぞ………ぐふっ」

ボソボソと耳打ちしてくる勝に海斗はもう一発拳を叩き込んでから話している結と有紗に近づく。

「ごめん並谷。遅くなってしまって」

「別に遅れてないわよ?バス来てないんだし」

「そうそう、大丈夫だよ棚瀬くん」

「あんたは少しくらい気にしなさいよ、結」

「あはは…」

有紗につっこまれて結は笑う。海斗はそれを見て口角が少しだけ上がったのを感じた。

そんなことをしている内にバスが来た。全員乗車し、空いている席に座った。満員に近いかと思っていた海斗だが予想に反して客はまちまちと言ったところだった。おかげで座れるのでありがたいことだと海斗は思った。

海斗は勝と、結は有紗と座った。後ろに結と有紗が楽しくガールズトークしているのをBGMに海斗は外の景色を眺めていた。勝は昨日夜更かししていたからなのか、ぐーぐーと寝ていた。

バスがプール前のバス停に着き、四人はバスを降りる。寝ていた勝は海斗に(手段は選ばず)叩き起こされた。その時、

「つ、着い、た…のか…」

「着いたけど?」

「だ、大丈夫?山本くん」

「何してんのよ……」

というやりとりがあった。

バスを降りた四人はそのまま入り口でチケットを使って入ると、待ち合わせ場所を決めてから着替えるために二手に分かれた。

更衣室に来た海斗はそういえば、というように思い出した疑問を隣で着替えている勝に投げかける。

「そういえば勝は赤点取らなかったんだな」

「おいおい。俺をなんだと思ってやがんだよ、ホントに。数学に関してはクラス二位だぞ?」

「学年じゃ六位だけどな」

「うっせ。まあ赤点回避なら余裕で出来るくらいには賢いんだよ、俺は」

「それ賢いって言わなくないか?」

「凛堂よりは賢い」

「それを言ったら終わりだろ」

言って、二人してひとしきり笑ってから着替え終える。更衣室から出てちょっとした人混みを抜けてから待ち合わせ場所に着く。

バスの中を見ても海斗は思ったが、真夏日の今日、人は多いかと思ったがそう多くはない。逆に少し空いているくらいに思える。

キョロキョロと周りを見ていると勝が話しかけてきた。

「おい、海斗。あれ見ろよ」

「ん?なんだよ」

「すげえだろ。さすが我が校トップクラスの美少女だ。男共の視線釘付けだぜ」

あっはっはっ、と勝は笑うが海斗は呆れていた。笑う勝が指差すのは結と有紗だ。

結はホルターネックの白いビキニで、髪型はピンクのシュシュで縛ったポニーテールとなっていた。当然真っ白というわけではなく、ピンクの花が彩られていて、制服や私服では分かりにくかったが、豊満な胸が強調されており一層女性と感じさせる。

有紗はレースがついたセパレーツで髪はそのままにしてある。結が可愛さを表現しているとするならこちらは大人らしさを表現しているように見える。色が黒一色なのでより大人らしく見え、控えめ(何も貧乳というわけではない)の胸だが、ウエスト部分が少し透けていて、ちゃんと(?)色気も感じさせる。

その二人を見る男共はまるでお嬢様を扱うかのように道を譲っていく。海斗と勝とは大違いだ(男なので当たり前なのだが)。

海斗が呆れているのは結と有紗ではなく、その道を譲っている男共を見てのことだ。理由としては日本でのレディファーストとは全く紳士的なものではないのだなと思ってしまったからである。

「よっ。お二人さん。どうだ?みんなに道を譲られた感想は」

勝がそう茶化すと有紗がため息をつく。

「あのねえ、そんなにいい気分じゃないわよ。ジロジロ見られるし」

「そうだよ。逆に嫌だったんだけど…」

同意する結は嫌そうに顔をしかめる。それを見た海斗は苦笑する。

「ま、それだけお前らが気を引く存在だっつうことだ。さて、んじゃ遊びに行きますか!」

「そうだな、さっさと行こうぜ」

暗い雰囲気を飛ばすかのように明るく振る舞う勝に海斗は笑いながら乗っかると、結と有紗も笑いだしてプールへ向かった。




人が少ないため海斗たち四人は思う存分楽しむことができた。色々なウォータースライダーや流水プールで遊び、勝が借りてきた水鉄砲で二対二に分かれて勝負したりと遊びまくった。

このプールの名物、地上50mから全長300mを誇る巨大ウォータースライダーに乗った時は海斗と結と有紗が腹を抱えて笑った。

ウォータースライダーのチューブに入る前にスタッフに「頭から着水するのは頭を打つ危険があるので、してもいいですがあまりオススメは出来ません」と言っていたのに、勝は全ての説明を無視して頭からつっこんでいったのだ。

そして有紗、結が怖いと言い始めたのが有紗が行ってからだったために海斗と結が一緒に(海斗が結を後ろから抱くような体勢)、という順で滑って行き、そのスピードと長さに感心しながら終着地点に着水すると案の定頭を打った勝が頭を抱えていた。

そうやって遊んでいるとすぐに昼ごろになり昼食を取ることにした。じゃんけんした結果、勝と有紗が買い出しに行くことになった。海斗と結は二人に欲しいものを伝えてお金を渡し、二人と別れてから席を確保して待つことにした。

「あ〜、楽しいね〜」

「そうだな。これて良かった。これは俊兄に感謝しなきゃな」

「そうだね。また今度俊さんにお礼言っといてよ」

「ああ、伝えとくよ。でも、ウォータースライダー乗る時、何で断らなかったんだ?怖かったんだろ?」

「最初は大丈夫だと思ってたんだけど…。いざ行こうとなると怖くなっちゃって…」

えへへ、と恥ずかしがるように結は笑う。

「そういうことか。ま、誰しも本番となると心境が少しは変わるもんさ。プラスでもマイナスでもね」

僕もそうだし、と付け加えると結はくすっと笑った。

「そうだね。やっぱり私、高いところ怖いのかもしれないなぁ」

「僕だって人並みには怖いさ。全く怖くない人なんてそうそういないよ」

「そのそうそういない人が近くに一人いるけどね」

結がそう言うと海斗は思わず笑ってしまう。

「あっはっはっ!確かに、勝はそうだな」

そして結もつられるように笑いだし、二人してひとしきり笑った。

少しして海斗は結にトイレに行くと告げてからその場を離れた。

海斗は何気なく周りを見ていると買い出しを済ませたような様子の勝と有紗を見かけた。声をかけてから行こうかと思ったが、聞こえてきた真剣な声音がそれを止めた。

「山本くん。………マサくん、だよね。………会いたかったよ」

「やっぱり……や………有紗だったか。その……見て思い出した。何で今それを………」

二人の声は聞き取りづらかったが、それでいいと思った。あれは聞いてはならない会話だ。そう思わせるほど二人の声は真剣だった。そして声をかけずにトイレに向かった。

トイレを済ませて戻るとまだ勝と有紗は戻っていなかった。あれはまだ買い出しの途中だったのだろう。その代わりと言うように海斗たちが陣取った場所に二人の男がたかっていた。

ハァ、と海斗がため息を出すのは致し方ないことだ。どうせナンパ野郎だろう。こんなところには必ずいるんだな、なんて思いながらそこに近づく。

「だから、遊ぼうぜ姉ちゃん」

「ほらほら行こうよ〜」

ぐいっと男の一人が結の腕を引っ張る。

「や、やめてください…」

案の定、強気に出れない結は困惑し、弱々しく抗議するだけだ。それを見て海斗の怒りが上昇する。結の手を引く男の手を結の腕から離し、それと同時とも言える速さで腕を強く払う。

「いってぇなぁ……何すんだよ」

「あん?テメエ、なにもんだよコラ」

こんなベタなチンピラマンガやアニメにしか出てこないと思っていた海斗は呆れた。だが怒りは収まらない。

「こいつは俺の女だ。手ェ出すんじゃねえよ」

結には見えないように鋭い形相で、低い声のトーンで脅すと男たちは後ずさりし、さっさと消えていった。

顔を普段の表情に戻してから振り返ると結は涙目で笑っていた。海斗は驚く。涙目なのはまだ分かるにしても、なぜ笑っているのか。まだ怒りがゼロ地点に着かない海斗は頭が回らず、理由が分からなかった。

「何で笑ってるのかって顔だね。棚瀬くん」

「うっ。な、何で分かるんだよ…」

「ふふっ、分かるよ。それくらい」

ふふふ、と笑い続ける結に海斗はより困惑する。それを見かねた結が答えを教えてくれた。

「私が笑ってる理由は、棚瀬くんが少女マンガの主人公みたいな登場の仕方と少女マンガの主人公みたいなやり方でさっきの人たちを追い払ってくれたからだよ」

言われてから、ようやく理解した海斗は自分の行動に恥ずかしさを覚える。結の言う通りあんな、少女マンガに限らずマンガの主人公のやり方はあのチンピラたちと同じくらいベタすぎる。人のことは言えないと思いながら海斗は一つ思い出す。それは自分があんなことをした理由の一つでもあった。

「あれは俊兄の受け売りだよ。あの人よくマンガ読むし、あの人の彼女ナンパにかかりやすいから、そういう場面でよくマンガのセリフ使うんだよ。僕は昔その場面を見たんだ」

言うと結は「言いそうだね、俊さん」と言って笑うだけだった。

そして海斗が結に背を向けていた時、結が赤面していたことは海斗は知らない。




ようやく帰ってきた勝と有紗を交えて昼食を取り、少し食後の休憩を取ってからまた遊んだ。

結と有紗はビーチバレーのボールで遊んでいた。25mプールを見つけた海斗と勝はそのまま50mのスピード勝負をした。結果は同時着だったが二人とも「自分が勝った」と勝ちを譲らず、もうひと勝負したがまた同時着。そのままもう一度、もう一度と体力の底がつくまで勝負していた。(二人とも水中で力尽きたため大騒ぎになった)

四人が合流したのは午後三時。最後にもう一回巨大ウォータースライダーに乗ることになった。最初と順番は同じだ。勝はちゃんと学習していて、頭からつっこむことはなかった。スタート地点まで来たもののやはり怖いと言った結だが、有紗は「がんばれ〜」と笑ってから先に滑っていった。そして結局海斗と一緒に滑り(体勢は最初と変わらず)楽しんだのだった。着水地点で勝と有紗はこちらを見た瞬間に自然にその場を去るように離れて行ったが、海斗だけはその自然さが不自然なのに気づいた。

そうやって遊んでから、着替えて帰ることになった。行きと同じ席順でバスに乗ると、後ろの結と有紗は疲れたのかすぐに眠りに落ちた。海斗は行きと同じく外の景色を眺めている。勝はボーッと考え事をするように上を向いていた。

海斗も勝も黙っていたが、その沈黙を勝が破った。

「なあ海斗。お前、いたんだろ?」

そう問いかける勝の声はいつもより小さかった。海斗は目線を変えず、勝の方を向かずに言う。

「いたって、どこに?」

「昼、俺と並谷が買い出しの途中で話していたところに」

海斗は最初、何の話だと思っていたが、少しして思い出す。二人の真剣な声で話すあの場面を。

「…………」

海斗は答えに困る。これは素直に答えた方がいいのだろうかと。だが、その考えている間が答えのようなものだった。

「沈黙は肯定だぜ、海斗。別に怒りゃしねえよ。ただ……」

間を空けたことを不思議に思い、振り返ってみると勝は上を向いたまま言った。

「このことに関しては、勘ぐるなよ」




それっきり会話はなく目的のバス停で寝ている結と有紗を起こして降りた。

海斗は勝のあの言葉を、あの声を頭の中で反芻しながら帰り道を歩いた。




この日最後の勝の様子は明らかにおかしかった。


はい、いかがでしたでしょうか。

この物語も着々と終わりに進んでいますよ。

まだ全然終わんないけどねwwww


さて、皆様覚えていますか?前書きの私の一言を。

そう、「私は、変態ではありません」の一言を!

あのね。一応私男ですので、女性の水着のことなぞサッパリです。なのになぜ、女性の水着のことに少し詳しく書けたかと言いますと、ちゃんと調べたからです。ホントですよ⁉︎まあ、合っているかどうかは知りませんが……。


さて、こんなギリギリで更新して申し訳ないと謝罪すると同時にご報告を、と思ったけどヤベエ!時間が……!とりあえず、明日か明後日中には活動報告を書かせてアップしますのでよろしければそちらにお目を通してくださるとありがたいです。


次の更新日はまあいつもと同じく、一週間以内に。たぶん来週の日曜日だけどねwww

ではまた、お会いできる方は明日か明後日に!

See you !

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