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ラストメモリーズ  作者: はらずし
第二章 夏
10/24

第八話 補習

どうも、はらずしです!


ちょうど一週間後に投稿となりました。


今回は少し短いかもです。

ではどうぞ!



「いいよね〜棚瀬くんは頭良くて」

もう昼を過ぎて客も少ない喫茶店にて、大きなテーブルに突っ伏しながら結は目の前にいる海斗をなじる。とある事情により机には宿題が積んであるが、終わっているものはそれの四分の一程度だ。

「僕は勉強してるだけで、頭は良くないぞ。つか、早くやらないとそれ終わらないんじゃないのか?」

読んでいる本から目を離した海斗が目をやったのはもちろん積んである宿題。指摘された結は机に突っ伏したまま肩をピクッと動かすのみ。

「おい、結?」

「……分かってるけど、多いんだもん」

再度海斗が問いかけると結はぶつぶつと小さい声で愚痴り始める。

「そもそも、なんで補習で宿題が出るのさ。テストだけでいいじゃん。そうじゃなくてももう少し量減らしてくれないかな、まったく。テストだって一回だけでいいのに二回も受けなきゃいけないし……」

このように結がぶつくさと文句を言うように、とある事情というのは全国にいる数ある生徒の敵、定期テストで赤点を取ってしまったことだ。そのため補習に加え宿題を出されたのだある。

「結、ぶつぶつと恨み言を並べるのはいいけど、やらないと終わらないぞ?」

これ以上聞いていても何も変わらないので止めに入った海斗だが、あまり意味がなかった。

「その点、棚瀬くんはいいよね。補習なんてないし、頭良いし。赤点何て余裕で回避するし」

標的が補習から海斗に変わるだけだった。海斗は少し言葉を詰まらせるが、ここで黙っていても自分が攻撃されるだけだと思って反論する。

「今回のテストはちゃんと提出物さえしてれば赤点なんて取らないテストだったんだぞ?そこは結の力不足じゃないか?」

「うっ………。そうなんだけどさあ〜……」

ハア、とため息をつきながらようやく顔を上げた結に海斗もため息をつきそうになった。

「それに、分からないところがあるなら並谷とかに訊けば良かったじゃないか」

「有紗ちゃんなら先生より分かりやすく説明してくれるかもね〜。あの点数だし」

なぜ海斗が有紗に結の説明役を推すかと言えば、結の言う通りテストの点数が関係する。

海斗達の通う学校は自分の成績はプリントで。各教科ごとと総合点数のテスト成績優秀者上位5名が学校の掲示板に貼り出される。

その中で全校生徒に驚愕を与え、異彩を放ったのが有紗だ。テストに出された全教科の内、ある教科を除いて1位を独占。ダントツの総合1位を勝ち取ったのだ。

それは今回のテストだけではなく、中間テストでも同じような結果だった。だが、中間テストの時はまだ習った範囲は少なく、比較的簡単であったためさほど驚くことはなかったのだが、今回の期末テストによって有紗は学年1の秀才として名が知れ渡った。

本人は「ちゃんと予習復習してただけだよ?」と言っていたがそれだけでもすごいのではないかと海斗は思った。

「分かってるなら訊けばいいじゃないか。今回赤点取った教科、数学と現文なんだろ?」

「だからこうして訊いてるじゃん。現文1位さんに」

「僕のはたまたまだ」

そして有紗が1位を逃した教科は現文。その1位が海斗なのだ。有紗が92点だった現文を海斗は満点の100点を取り1位。中間では有紗と一点差で惜しくも2位だったが今回逆転したのである。

有紗が1位を逃したテストの1位である海斗もまた、そこそこ名が知れ渡ったのである。

だが海斗は現文だけが異常に良く、他の教科は平均点とさほど変わらない。だいたい60点代でたまに70点代が入るだけである。

だから海斗は言う。「たまたまだ」と。

「たまたまで100点取るのもすごいと思うけどな〜。私なんてギリギリばっかだし」

「それは結が提出物全部答え丸写ししてほったらかしにしてるからじゃないのか?」

「な、なんのことかなー」

顔を逸らしそっぽを向く結に海斗はついにため息をついた。

「あのな、結。どんな点数取ろうがなんでもいいけど、赤点だけはまずいんだぞ?下手すれば進級出来ないんだから」

「わ、分かってるけど……。このままじゃ大学進学もキツイし…」

「どの大学行きたいかは知らないけど、せめて50点以上は取っておかないと。提出物きちんとやってさえすればそれくらいは取れるんだからさ」

「………むー。棚瀬くん、まるでお母さんみたい」

「そこはせめてお父さんにしてくれ」

「つっこむとこそこじゃなくない⁉︎」

「つっこまれるところが分かってるならちゃんとやれよ…」

海斗はまさか自分のボケがこんな形でつっこまれるとは思わず、呆れてしまう。自分で分かってるなら本当にちゃんとやってほしいものである。

「ま、まあまあそれは置いといて、棚瀬くんは大学どこか決めてあるの?」

「大学……?大学か……」

「あ、その様子じゃ決まってないみたいだね」

「まあ、そんな感じだな。結は?」

「私は私立文系。国公立は私じゃムリだし理系も得意じゃないし」

「現文も悪いようだけど、いいのか?」

「あ、あはは……。まあそうなんだけど、英語とか古典は点数いいからね。大丈夫だよ」

実際この前見せてもらった成績表は古典と英語の点数がそこそこ高いことが記されていた。

「まあどうにかなるならいいんだろうけど、その前に補習の宿題しなきゃな」

海斗がそう言うと、結はまた宿題にいやいや手を伸ばした。




「いいよね〜棚瀬くんは頭良くて」

「結、それ1時間くらい前に言った」

「もうちょっと慰めの言葉かけてくれてもいいじゃんか〜」

「そんなこと言ってないでやれって。僕だって手伝ってるんだからさ」

結局集中は続かず、つい5分前くらいから結はこうしてまた不貞腐れている。実際は30分くらい前に集中が切れていたのだが、

「ほら、僕も手伝ってやるから。さっさと終わらせよう」

とそれまで本を読んでいただけの海斗が手伝い始めたので復活したのだが、そう簡単には集中は続かなかった。

「もうやだ〜!めんどくさい〜!」

うがーっ、と言うように体を伸ばして背もたれにもたれる結を見て海斗はこりゃムリだと思った。

(この調子じゃ終わらないぞ、これ)

何とかしないといけないことは結は分かっていると思うが、それが行動に移せないのだろう。何かやる気にさせるものでもあれば確実にやるとは思う海斗だが……。

(いかんせん、そんなものすぐには思いつかないし……)

何かあるかな、と考えていると結がため息をつく。

「あー……遊びに行きたいな〜。補習なんて放ったらかしにしてさ。私たち高校生なんだよ?夏休みくらい遊びたいよ……」

夏休みくらいと結は言うが、夏休みでなくても放課後そこそこ遊んでいたのだがそこはご愛嬌というものだ。

「結、遊びたいなら早く終わらせようとか思わないのか?」

「だって予定とかないでしょ?やる気も起きないよ…」

「予定があればいいのか?」

「え?まあ、たぶん……?」

「たぶんかよ」

こてん、と首を傾げる結に海斗は苦笑しつつあることを頭の片隅で考えていた。

(これなら、ちょうどいいかもな。よし……)

「でも、どうして?」

不思議そうに訊く結に海斗は柔らかく笑う。

「予定が作れるかもしれないから」

「え?なに?」

身を乗り出して、というほどでもないが、何があるのかと期待で目がキラキラしている結。その新しいおもちゃを買ってもらう子どものような目をした結を見て海斗は失笑しかけるが堪えて話し始める。

「この前、俊兄にもらったこんなチケットがあるんだけど…」

言いながらバックからサイフを取り出しその中にあるあのチケットを出す。

「これ、プールの入場券……?」

「そうそう。どうだ?この日なら補習は終わってるし、遊びに行けるけど」

「………」

「……結?」

結は海斗が出したチケットを握りそれをじっと見て、声をかけても反応しない。

もう一度声をかけようかと考えて声を出す直前、結がガバッと顔を上げた。

「棚瀬くん、これ行きたい!」

店内ということは自覚しているのか声は小さいがその分圧がある声だった。それに少し驚いた海斗は若干仰け反ってしまう。

「お、落ち着け結。誘ってるんだから行くって」

「やったやった!楽しみだな〜」

「その前に補習とその宿題きちんとやらないとプール行けないぞ?」

補習で赤点を取ればまた補習になるのでその日行けなくなるのだ。だが補習で受けるテストは定期テストで受けるテストとそんなに変わることはないので、補習の宿題さえすれば赤点は取らない。

「分かってるよ。じゃあ補習で赤点取らないようにがんばろっと」

柔らかい笑みを見せる結。その中にやる気が入っていることが分かった海斗はホッとした。

それは結がやる気になってくれたことと、俊がくれたチケットを渡せたことの二つの意味が入っていることに結はもちろん気づかなかった。

そこからやる気に火が点いた結は宿題を終わらせるまで集中は切れなかった。

途中で海斗と結の席にお代わりの飲み物を持ってきてくれた喫茶店の初老のマスターが「時間は気にしなくてもいいですから頑張ってください」と言ってくれたため、宿題が終わるまで店に居続けた。

結の宿題が終わり、店を出るときに礼を言うとマスターは「また来てください」とにこやかに笑ってくれた。

「はぁ〜……疲れた……」

ぐーっ、と伸びをする結。

「お疲れ、これで補習ばっちりだな」

「うん。ありがとね棚瀬くん」

「気にするな。僕暇だし、いい暇つぶしになったよ」

「部活もないしね。そういえば、あのチケット4枚あったけど他に誰か誘うの?」

「うん。勝と並谷誘おうかと思っているんだけど、いいか?」

「当然だよ。有紗ちゃんは私から誘っておくね」

「ありがとう。なら僕が勝だな」

「そうだね。あー、楽しみだなぁ」

言いながら、夕焼けの光に照らされて笑みを浮かべる結を海斗は少しだけじっと見ていた。

その時、海斗は自分がどんな表情をしているのか自分でも分からなかった。



ようやく誘えたとある日の一幕。




えー、いかがでしたでしょうか。

まあ有紗が少し(というか大分)有能過ぎかもしれませんがそこは置いておきましょうww


そして、ここで一つ大事なお知らせを。

お知らせというより謝罪です。しかも今回は本当に悪ふざけとかで済まされないのでかしこまった態度で行かせていただきます。


前回のお話である第七話である重大な矛盾点を生み出してしまいました。お気づきの方もいらっしゃるのではないでしょうか。その矛盾点とは第一話で紹介した担任と前回の第七話で紹介した担任が全くの別人だったことです。今回のお話が投稿される前に気づき第七話で出てきた「担任」という肩書きを持つ深城京を「副担任」という肩書きに変えさせていただきました。

それについて、深城京が副担任に変わったことで話が変わることはありませんのでご安心ください。

今回混乱された読者の皆様には深くお詫びするとともに、今後このようなことがないように精進させていただきます。本当にすみませんでした。


この話はかなりぶっつけ本番と言いますか、その場その場で考えたような感じの作り方をしているため今回だけでなく、この先もこのような間違いや矛盾点を作り出してしまうかもしれません。その時は気づいたら話に矛盾が生じないように変更していく所存です。

こんな作者が書く物語ですがこれから先も読んでいただけると幸いです。


さて、次回の投稿予定日ですがいつもと変わらず一週間以内をめどに投稿します。

次話の構想は出来ているので何時もより早めかもしれません。

ではまた今度お会いしましょう!

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