プロローグ
初めまして!はらずしです!
今回はこの話を読もうと思ってくれてありがとうございます!
読者様方が納得出来るようなお話には出来るか分かりませんが、楽しんでくれると嬉しいです。
では、どうぞ!
プロローグ
病院内で泣き崩れる両親。それを見て無力さに打ち震えている医者たち。彼らの纏う雰囲気は暗く、重かった。
そんな彼らを無表情に眺めていたのは棚瀬海斗だった。
海斗はただ、無表情に、無感情に言葉を発した。
「帰ろうか。家に」
海斗はただ一人、病院から少し離れた公園のベンチに座っていた。この場にいない両親には先に帰ってくれと伝えたのだ。
海斗の心情を慮ってか、そんなことはさせないと怒っていた母を父が宥めてくれ、一人になれた。
特にこれといった用事はない。ただ、一人で空を見上げたかったのだ。
海斗は空が好きだった。理由はない。ただただなんとなく好きだったのだ。
そんな空をずっと眺めていると「ニャー」と鳴き声が聞こえた。
上を向けていた視線を下に向けるとベンチの近くにネコがいた。
「なんだ、飼い猫か?」
そのネコには首輪がついていた。迷いネコだろうか。どこかに預けた方がいいかな、と思っているとネコはぴょんとベンチに飛び乗って海斗の足に乗っかって丸くなった。
「ミャー♪」
「ははっ。気持ちよさそうだな」
とても気持ち良さそうに寝ているものだからどける手を止めて一緒に日向ぼっこをすることにした。
そのままいくばかの時間が過ぎ、眠くなってきた海斗が船を漕いでいると声がかかった。
「あの、すみません。そのネコうちのネコなんですが…」
眠くなった目をこすって何とか意識を覚醒させると目の前には一人の少女がいた。
背中まで伸びた綺麗な黒髪をもち、人当たりの良さそうな、しかし憂いを感じさせる顔をもつその少女に海斗は一瞬見惚れてしまった。
「あ、ああ。ごめん。このネコ探してた?」
「あっはい。すみません。迷惑かけたみたいで……」
「そんなことないよ。僕もこのネコも気持ちよかったし」
な、と未だ海斗の太ももの上で寝ているネコに声をかけると「ニャー」と小さく鳴いた。
「そうですか。そう言ってくれるとありがたいです。ホラ、カイくん行くよ」
彼女はそう言うとカイくんと呼ばれたネコを抱き上げる。
それを見ていた、というより聞いていた海斗は少し笑ってしまう。
「ど、どうしたんですか?」
「いえね、僕と似たような名前だったからつい」
海斗とカイ。こんな偶然(というには少し大げさだが)あるものだな、と笑ってしまったのだ。
「カイってお名前なんですか?」
「ちょっと惜しいね。僕は海斗って言うんだ」
「ふふっ、確かに少し似てますね」
海斗が理由を言うと彼女は柔らかに微笑を浮かべた。
その表情にまた少し見惚れてしまいそうになったが、彼女の声で我に帰った。
「では、また何かご縁があったらお会いしましょう。あ、何の礼も出来ずすみません」
「いえいえ、そんなのは結構ですよ。僕も気持ちよかったし。じゃあ、さよなら」
そう言うと彼女は一礼してから去って行った。まだ明るく照る昼の太陽を浴びながら輝く彼女を海斗は見えなくなるまで見届けていた。
それは高校に入る前のとある春の日の出来事
次話は出来次第投稿します。
たぶん、一週間以内かな?
ではまた!