夜遊び彼女
学校で一番頭が良くて真面目な彼女。
彼女は過去に夜が好きだと言った。
私は不思議に思って理由を聞いてみたら暗闇に溶けていけそうな気がするからと言った。
頭のいい人の考えることはわからない。
そんな彼女に連れられて夜に出かけてみた。
出かけると言っても大したことじゃない。
その辺をふらりと散歩するだけ。
冬が近づいているのか吸い込む空気が冷たい。
肺にじんわりと入り込んで犯していくようだ。
3歩ほど前を歩く彼女はテンポのいい曲を口づさ見ながら靴を鳴らす。
スタイルのいい綺麗系な彼女に良く似合う黒い皮のロングブーツ。
はぁっと口から白い吐息が吐き出された。
宛もなく意味もなくただただ夜の街を歩く。
真面目な彼女がこんな時間に出歩いていていいものなのか疑問に思う。
それでも本人はお構いなしで迷うことなく前を歩いていく。
そしてちょっと広めの自然の多い公園の前で立ち止まった。
そこは人気もなくて街灯も少ない。
不安になってきた。
私のそんな気持ちを察したのか彼女は小さく笑った。
「夜はね、全部を食べてくれるんだよ。悲しい感情も辛いことも全部」
そう言いながら夜空を見上げる。
満天の星空が私達を見下ろしていた。
「だから私は夜が好き」
完璧に見える彼女が泣いた気がした。
暗いから涙なんて見えなくて。
声が震えてるわけでもなくて。
ただ彼女の心が泣いているような気がしただけ。
その日から私は彼女と夜の散歩をするようになった。
夜が私たちを癒すから。
彼女が一人で泣かないでいいように。
月と星はただ輝いて私達を見下ろしている。