表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

第5話

「お主…………何を言っているのかわかっているのか?」


少し震えたような声で問いかける王。テンションだだ下がりだな。


「ええ、もし私が神を見つけた場合、それなりの名声を得ることになるでしょう?その時にどこか一つの国にのみ加担していた。というのはいささか聞こえの悪い話ですので。今回の話は遠慮させていただきます。」


言った。言ったぞ。これで 「はい、わかりました」って言ってくれないかなぁ…………


………無理だろうなぁ。


王は少し俯き、何かを考えていたようだったが、急に両手を天へと伸ばし、言った。


「異界人殿はいきなりこちらの世界へ連れ込まれ、少し混乱しているようだ。」



…………はっ?



「異界人殿を牢屋へお連れして差し上げろ。今少しの休息が必要なようだ。 …………それでは異界人殿、後ほどゆっくりと『説得』させていただきます。」


「えっ、ちょい、おい!!」


なんだよそれ!? 説得とか絶対拷問的なアレだろ!!! 休息に牢屋とか常識的にありえなくね!!?


兵士達は俺が急に暴れないようにするためか少しずつ近づこうとしている。ジリジリと詰め寄られる。流石に30人ほどに囲まれればなす術はない。まさに袋のネズミ。



ガシッ!!!



腕を掴まれた。

掴んだのは…………エスプリ?


「逃げますよっ」


「えっ?」


ダッ、というような効果音がつきそうなスタートダッシュをきったエスプリは俺の腕を引きながら走る。まぁ、俺も走るよ。こんな所嫌だし。


兵士達はエスプリの行動に戸惑ったらしく。一瞬動きが止まる。その隙に俺達は王の間を出て、階段を降りる。


「くっ…………異界人とエスプリを捕らえろ!どちらも殺すな!殺さなければいかなる傷を与えてもよい!!」


「「はっ!!」」


上からそんな声が聞こえる。ヤバイよ。殺さない程度とか。


そんな事を思いながら走っているとエスプリが急に角を曲がった。


「えっ!?出口はこっちじゃないの!?」


「ええ、出口はあちらですが…………」


と言いつも走り続けるエスプリ。腕を引かれる俺。


あ、まさかのこの人をあっちの味方ですか?このまま牢屋直行とか?


まじかよ〜〜…………


ガチャ。


「はやく、ここに入って、ください!」


「あっ、はい。」


言われるがままに入る。牢屋にしては個室だな。結構広いか?


エスプリも入ってきた。兵士達の足音が遠ざかっていく。ひとまずは大丈夫か。


「すいません。この国も先代までは素晴らしい国だったのですが、2年前にあれに変わってから、民へ重税を掛けたり、浪費を重ねたりと、自分勝手な行動が多く…………」


あれって言っちゃったよ。この人も苦労してるのかね。


「じゃあ、先王まではよかったんですか?」


「はい、これでもアロガン城は有名な国でしたからね。」


「……いつから働いていたんだ?」


「半年も経ってないですかね?」


それしかここに居ないのにあんな王と仲良さそう(?)だったのか…………、


「よくそんな短い期間で王に取り入れられたな。」


「ええ、一応、『神の一族』ですしね。」


…………発見、神族。王城とかにいるっていうのは本当だったのか。


「じゃあ、エスプリ、さん?は他者から好まれるみたいな能力があったってことか。」


うらやましいな。


「普通にエスプリでいいですよ?ええと、能力は違いますよ?神族は元から神の直属の配下の様なものですから、ある種で人と違う待遇、対応をされるのですよ………。」


ふむ………なんか嬉しくなさそうだな。その「対応」っていうのは、他人から遠慮されるっていうのも含まれたりするんだろうか。生まれた時からそうだったのなら、それは結構辛いだろうな。


それはともかく、


「っていうか、エ、エスプリ、ここは…………武器庫、か?」


「はいっ。」


辺りをぐるっと見回す。そこには巨大な斧や剣などが立て掛けられていた。盾や鎧らしきものすらある。中世って感じがヒシヒシと伝わってくるぜ。


「あのまま逃げて城から出ても、丸腰のままでは取り囲まれるのがオチですからね。何かしら欲しかったのです。」


「えっ、これテキトーに取ってっていいの?」


そんなのってありか?犯罪だぞ(既にに追われてるけど)


「この城に戻ってくるつもりでもあるのですか?」


「あっ、そっか。」


もう来ないから何しても良いってか…………


まぁ、それもありか。


「では、良さそうなのを選んでください。欲張ると運ぶのが面倒なので、二つ、三つほどで。」


「わかった。どれにしようかなぁ。」


とりあえず手近にある斧を持ち上げ………


「って、重おぉ!?」



「ちょ、ちょっと、静かにして下さい!」


「あ、ゴメン」


ゴッ、っと床に降ろす(落とす)。


てかこんなに武器って重いのかよ…………

持ったのは木こりで使うよりは二回りほど大きい物だった。異世界に来たからって腕力が上がってるわけじゃないんだな…………


てか、こっち来て俺の身体にある変化は魔力位だな。他には目立った点もないし、後で詳しく調べないとな。


「ん?なんだこれ?」


そんなことを思いながら武器を見繕っていると、500mlの水筒くらいの筒に取手が付いたようなものがあった。


「あ、それは(ガン)っていう武器だそうですよ。その種類は数がかなり少ないので希少ですが、取手を掴むと魔力が吸い取られるだけて使い勝手が良くないそうですが…………」


「あ、なるほど、わかった。」


つまりは銃なんだな。魔力が吸われるってことは、実弾とかを使うやつじゃなくて魔力を弾に変えたりする魔力銃(マジックガン)の様な感じだろうか。魔力を物を通して変換するとかの発想はあまりなさそうだからな。使われないもの頷ける。


「じゃあ、これと…………この剣かな?あんましデカくないし。」


そう言ってさっきの銃の他に腰に差せる程度の長さの剣を手に取る。斧よりは軽いな。それでもズッシリくる。うまく扱えるだろうか。万が一の場合は鈍器の様な感じでもいいか。そもそも服装が服装(制服)だから腰には差せないので持ち歩くが。あぁ、銃はポケットに入れるよ?はみ出るけど。


「選べましたか。じゃあ、脱出しますか。」


そう言った彼女も短剣を2本ほど拝借している。杖だけでは心細いのかな?


ガチャッ。


2人で廊下へ出る。


「何処まで逃げればいいんですか?」


「ひとまず城、いえ、国から出るべきですね。町に隠れて見つかる可能性もありますし。城から離れておきま………しょ………う」


「ん?」


エスプリの視線が背後へ注がれている。後ろには…………






「「「「「あっ」」」」」


はい居たー。数十名の兵士とバッタリー。



…………数秒、硬直。 その後、


「「「「かかれー!!!」」」」


「「逃げろー!!!!」」


ダッーシュ!

今までにない位がんばって走る。


城を光の速さよろしく駆け抜け、町をGo!


………で、


「…………つ、疲れた…」


「えぇ!?」


驚愕するエスプリ。こんなの高1にやらせんなよ。大人数十人相手に逃げるとか逃◯中でもそうそうないぞ。


「くっ、………あとどのくらいで門!?」


「あと1kmもないですから!頑張ってください!!」


うわ、1kmかよ………。

俺いま剣持ってるんだけど。5kgあるんじゃねえの?これ持って逃げるとからキ、キツイ…………


「もうっ。…………『我らが求めるは俊敏たる脚力』。」


ブォォォン。


「うぉぉ!」


俺の脚に別の感覚が交わる。込めている力は変わらないのに急にスピードが倍ほどになる。


魔法。直感でわかる。多分、魔法は感覚を使うんだ。


…………まぁ、体力は戻らんけどね。


「もう、ちょい…………!あと、少し!!」


門へと近づく。中をくぐって、逃げ切れる!そう安堵し、ホッとため息を…………







つくことは出来なかった。


「……ふぅ…………まじかよ、」


「用意周到ですね……………」









厚めの門をくぐり抜けた先、そこには数十ではなく、数百、千へ届きそうな数の兵が弧を描いて囲んでいた。




「はぁ、はぁ、…………諦めたら、どうですか?」



城から追ってきて、追いついた兵士長が放った言葉。



……………………うん、ムリじゃね?














評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ