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練習試合 VS 関西国際女子②

 初回に不安定な内容を見せた真由、二回表は先頭の六番打者に四球を出したもののその後は三人で抑えた。

 二回裏の桜京の攻撃は〇対一の一点ビハインドで六番の羽倉さんから始まる。

 初回の大ピンチを好守で救ってもらった伊良波さんだが、この回も立ち直れない。

 先頭の羽倉さんにストレートのフォアボール、早くも四個目の四球となる。

 続く七番の広橋さんは得意なストレートを叩いた、三遊間を真っ二つにするレフト前ヒット。


 無死一・二塁となって八番の小賀坂さんが左打席に入る。

 初球ボールの後の二球目を叩いた。

 引っ張った強烈な当たりが飛ぶ、一二塁間を割ろうかというそのゴロをセカンドの詩帆さんが上手く止めた。

 振り返って二塁に投げて一つフォースアウト、一塁は間に合わない。


 ゲッツー崩れで一死一・三塁と代わり、九番の初瀬さんに打順が回る。

 初球ボールからの二球目にそのサインを出した、三塁ランナーがスタートを切る。

 スクイズ、外角に外れるボール球だったものの初瀬さんが上手くバットに当てて転がす。

 ピッチャーの前に打球が転がり伊良波さんが拾うも本塁には投げられない。

 諦めて一塁に送球する、スクイズ成功で同点に追いついた。 


 笑顔で初瀬さんがベンチに戻ってくるのを出迎えた。

「練習の成果が出たな、おめでとう」

「ありがとうございます、安島さんが色々教えてくれたからですよ」

「いやいや、初瀬さんの努力の賜物だよ」

 初瀬さんは重点的にバントを鍛え上げ、バントの腕前だけで言えばうちでも上から数えた方が早いレベルに達している。

 実際、先ほどスクイズを決めた速球もボール球だったが上手く転がして見せた。


 二死二塁となって打席に一番の星原さん。

 ストレートをなんとかバットに当てるもファールで追い込まれてしまい、最後は高速スライダーにバットが空を切って三振。

 これで二打席連続三振となった、星原さんが肩を落としてこちらに戻ってくる。

「今回はバットには当たったんですけど……なかなかフェアゾーンに飛ばないですね」

「一打席目より良くなってたと思うよ、次に期待できる内容だった」

「そうですか、安島先輩にそう言っていただけると自信になります」

 少し星原さんの表情が晴れた、なんとか一本どこかで結果が出てほしい。


 三回表、真由が再び試練の時を迎える。

 一番から始まるこの回の攻撃、先頭打者をセカンドゴロに打ちとってまずワンナウト。

 左打席に二番の柏葉詩帆さんが入る、先ほどはライト前にヒットを打たれている。

 この打席はストライク先行でノーボールツーストライクと追い込むことに成功した。

 しかしここから粘られる、決めに行ったスライダーをカットされボール球を見られる。

 フルカウントと逆に追い込まれると、最後は根負けしたように高めにボールが抜けた。


 四球でランナーを出して一死一塁、三番の柏葉歌帆さんが右打席に入る。

 初球から積極的に振りぬいた当たりは痛烈なライナー。

 しかしショート真正面、羽倉さんがしっかりと抑えてツーアウト。

 二死一塁となり四番の日下部さんを迎える、なんとか得点圏にランナーを置かずに済んだ。

 外野は長打警戒で定位置より後ろ、そして引っ張りを警戒して左寄りに守る。


 愛里は外に構えたものの、初球二球目と共に外に外れるボール球。

 それでも再び外を要求したが、これが逆球になって内に入った。

 日下部さんが叩いた当たりは左中間を深々と破った、センターの彩音が打球に追いつく。

 そこからショートの羽倉さんに中継、詩帆さんは三塁を回った。

 バックホームするも送球が走者と逆側に逸れた、タッチ出来ずホームイン。

 タイムリーツーベースを浴びて一点を失った。

 同点に追いついた直後、すぐに勝ち越されてしまう悪い流れ。

 彩音の肩はあまり強くない、羽倉さんも平均以上でこそあるが強肩とはいえない。

 その二人の中継プレーでは刺せないぐらい、詩帆さんの走塁が良かった。


 二死二塁から関西国際女子の攻撃は続く、五番の和泉さんが右打席に立つ。

 カウントワンボールワンストライクからの外のスライダーを上手く流し打った。

 初瀬さんの横、一二塁間を破って打球はライト前に転がっていく。

 二塁ランナーの日下部さんは三塁を回る、ライトの広橋さんが勢いをつけてバックホーム。

 鋭い送球だが少し高く逸れている、愛里が手を伸ばしてそれを捕球しタッチしにいく。

 本塁上で日下部さんと激しく交錯した、体格差で愛里が吹き飛ばされ後ろに倒れこむ。

 それでもボールは離さなかった、判定アウトでスリーアウトチェンジ。

 勝ち越されたものの追加点は何とか防いだ。


「愛里、大丈夫か?」

 クロスプレーでどこかを痛めたりしていないか、愛里を気遣う。

「……うん、へーきだよ」

「そうか、よかった……よくボール落とさなかったな」

 軽く頭を撫でてやると愛里が目を細めた。

「……どうしても点取られたく無かったから、この回で追い付かなきゃ」

 三回裏は二番の愛里から始まる、なんとか先頭打者として塁に出てほしい。

 前の打席では慎重に攻めた愛里だったがこの打席は違った。

 初球、アウトコースのストレートを得意の流し打ちでレフト前に運ぶ。


 無死一塁で三番の彩音が左打席へ、つないでチャンスを広げてほしい。

 ツーボールツーストライクからの内に切れ込む高速スライダーを上手く捉えた。

 引っ張った当たりはライト日下部さんの頭上を超えて長打コース。

 一塁ランナーの愛里は三塁を大きく回ってストップした。

 ライトの日下部さんの強肩を考えれば賢明な判断だろう。


 無死二・三塁、度々ピンチを背負う伊良波さんに再び内野が集まる。

 ここで四番の樋浦さん、問題の得点圏にランナーを置いてのバッティングだ。

 ワンボールワンストライクとなってから外の高速スライダーに手を出した。

 引っ掛けた当たりがショートの前に転がる。

 三塁ランナーの愛里が緩いゴロを見てホームに突っ込む。

 ショートの歌帆さんが鋭く本塁に送球した。

 足元への完璧な送球で愛里はタッチアウト、得点ならず。


 少しでも逸れれば得点出来ていただろうが、素晴らしい送球が来た。

 一死一・三塁と場面が変わり、打席には先ほど併殺に倒れた五番の真由が入る。

 アウトコースの高速スライダーを叩いてライトフライ、定位置ぐらいまで打球が飛ぶ。

 三塁ランナーの彩音は一旦タッチアップしたもののすぐに引き返した。

 日下部さんの強肩を考慮しての判断だろうがこれが正解だった。

 レーザービームのような返球がライトから飛んできた、走っていたらアウトだっただろう。


 二死一・三塁とアウトカウントだけが増えて、右打席に六番の羽倉さん。

 一球ファールにしてのツーボールワンストライクとしてからの四球目、甘く入った高速スライダーを叩いた。

 強いあたりが三遊間に飛ぶ、抜けるかと思われたそれをショートの歌帆さんがスライディングキャッチした。

 素早く立ち上がると踏ん張って一塁に遠投してアウト、スリーアウトで得点ならず。

 難しい打球に良く追いつき、捕ってから送球までがまた早かった。


 無死二・三塁と大チャンスを作りながら得点出来ず。

 試合序盤の三回が終わった、一対二と一点ビハインドの展開。

 ここまで大量のランナーを出しながら後一歩のところを好守に凌がれている。

 得点出来そうで出来ない嫌な流れだ、これが守りにも影響しなければ良いのだが。

 それと真由のことも心配だ、ここまで二失点という結果以上に内容が良くない。

 相手の一流打者に対して追い込んでからの決め球に苦しんでいるように見える。

 これは思ったより早く詩織の出番があるかもしれないな。

 マウンドに向かう真由の背中を見ながら、そんなことを考えていた。

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