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GENERATION☆DESTRUCTION!!  作者: Yuki乃
EP11 Northern Land
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Northern Land(4)

 雪降り積もるグラウンドを窓越しに廊下で一息つく。緊張したわけではないが、新しい環境にまだ慣れていないのだろう。少し疲れを感じる。

「これからどうする?」

「私は家に帰るわ。今日は疲れたし……、それに必要なものを揃えないといけないし」

「それそれ、向こうから何にも持って来れなかったし、私も帰ろっかな」

 ニルもリアも買い物があるらしく直ぐに帰るようだ。

「じゃあ、二人にイリスを任せたいんだけど」

 二人が買い物に行くならちょうどいい、イリスの日用品もついでに買ってもらおう。俺じゃあ女物は選べないからな。

 イリスの方を見ると俺の制服の袖をがっちりと掴んでいる。

「……私たちはいいけど、イリスちゃん離れなさそうだよ」

「……確かに」

「……イリス」

「ダメです、マスターは私を置いていきました」

「少しだけでもダメか?」

「ダメです」

 無表情のまま一歩も引かないイリスは端から見れば駄々をこねている子供のようだ。

「ダメそうだから、先帰ってくれ」

「あれ? ソウスケは一緒に帰らないの?」

 リアが首を傾げる。

「教室の下見に行く」

「そう、ならお先!!」

「じゃね」

「ああ、くれぐれも運転には気を付けろよ」

 校門前で滑っていったことを偶々思い出したのだ。TOYOTA 86は駆動方式がFR(後輪駆動)だから冬道は滑りやすい。

「――――私を誰だと思ってるの!!」

 俺の忠告も空しく、ニルはドヤ顔で去って行き、リアがその後を追いかける。

 イリスと彼女たちを見送ると二人で学園を見てまわる。

 外は寒いので三つある校舎を一階から三階まで隅々を見て回る。授業は終わっているが、残っている生徒は多い。そのため、すれ違う生徒から必ず二度見される。制服が違うことよりもイリスを連れていることが原因だろう。イリスは向けられる視線に特に反応もせず何食わぬ顔をしている……というか、いつも通り無表情ということだが……。

 第一、第二校舎はある程度賑やかだったが、第三校舎に入った途端に人足が遠のく。

 第三校舎は現在守護部設立のため教室の移動などが行われておりもぬけの殻となっている教室が多い。それに区画の工事などで足場なども組まれており廊下を狭くしている。

 ただ守護科の教室自体は仮のものでここの3階に置かれている。

 階段を上がるとそこは人一人いない静かな廊下が続いていた。

 深々と舞降る雪の速度が次第にゆっくりと感じられるようになり、廊下はまるで時間が止まったかのように静寂を保っていた。

 守護科の学級表札を見つけゆっくりとそこへと歩き出す。

 ついてくるイリスはゆっくりと俺から離れ横を歩く。

 俺は教室のドアの把手に手をかけたときに中に誰か女子生徒が残っていることに気付く。

 女子生徒は半分だけ空いた窓からグラウンドを見つめている。

 俺はゆっくりとドアを開けて中に入った途端、見覚えのある背中に俺の記憶が3年の時を遡って鮮明に思い出される。

 艶のある白っぽい銀色の長髪は降り続く雪を背景に美しく輝き、俺の思い出と重ねるが、少しだけ髪が伸びている。

 誰かが入ってきたことに気づいた彼女はゆっくりと振り向き、教室の時間が完全に静止したかのように、世界から隔離される。

赤っぽいゴールドの瞳が俺を見た。正面の大きなリボンはあの時のものに違いない。

「……見かけない顔ですね、どなたですか?」

 首を傾げた彼女のその言葉に一瞬言葉を失うが、こう絞りだすように言う。

「……アイリスなのか?」

 少しかすれたような声で言うが、彼女は表情一つ変える様子はなかった。

「私を知ってるんですね。そう、私がアイリスです。私に何か御用ですか?」

 彼女の姿形は同じでも全く別人のように感じられる。それは気のせいではない。

「俺のことを覚えてないか?」

「……どこかで会っていたのならすいません」

 そして俺の推測は的中する。

「――――私記憶がないんです」

「……」

 俺は込み上げてくる気持ちに急ブレーキをかけて、自分の中で仕切りなおそうとするが、そう簡単にはいかない。それでも何とか堪えている俺の様子を見ていたイリスが俺の右手をそっと握った。イリスの意図はわかるが、イリスがそんなことを考えられることに少し驚く。さらに驚いたのはイリスの体温が伝わり俺の心が落ち着いたことだ。

「そうか、なら仕方ない」

「ちょっと待ってください。私に会いにきたんですよね?」

 俺は直ぐにでも立ち去ろうとするが、アイリスが俺を引き止める。

「まあ、そうなる」

「だったら、あなたのことを聞かせてもらえませんか?」

 さっきとは打って変わって少し必死そうな表情をする。

「やっと私を知っている人に会えました。だから知りたいんです」

 真剣な彼女の瞳は真っ直ぐ俺だけを見つめた。

「――――本当の私を!!」

 少し声を荒げた彼女は少しだけ昔にようだった。その瞬間、3年前に止まった俺たちの時間は再び動き始める。それは音楽記号で例えるならアダージョ、ゆっくりとした速度で……。

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