LEGEND SENDAI Base(3)
月代瑠亜から来客用の宿泊施設に案内された後で軍の施設についても説明を受けた。
それから直ぐにリアの熱い要望により仙台観光のため中心街へと向ったのだったが、その前にニルがTOYOTA 86を取りに行くと騒ぎだし大変だった。結局、軍の車を一台貸してもらえることになりしぶしぶそれを運転することになった。
ニルの意見が通らなかったのは甲板から下すのが大変という訳ではない。仙台市は既に雪が積もっているため、夏タイヤで移動することは不可能だったからだ。車に対して色々と完璧なニルだが、東京にしか住んでいなかった所為か、そこだが抜けていた。もちろん冬タイヤ何て持ってない。
陸軍から借りたLEGEND使用のランドクルーザーで目的地なしに市街地へ走り出した。
「それでどこに行くんだ? 俺は仙台に行ったことないから知らないぜ」
「私はガイドブックで読みましたよ」
リアが有名な旅行雑誌を片手に目を光らせている。
ニルとリアがノリノリでそれ以外の俺、イリス、月代は冷めた表情をしている。というか俺を除く二人は無表情だ。
「今日の宗助はノリが悪いわね」
「武器の整備してた方が有意義だと思っただけだ。まあ、ニルとリアのハイテンションに水を差すつもりはないから安心しろ」
「既に水差してじゃん」
「俺のことはどうでもいい。どこ行くのか決めたのか?」
「もちろんよ、じゃん!!」
リアは自分で効果音を付けて観光雑誌を広げる。
「瑞鳳殿ってとこよ、ここから近いし」
「瑞鳳? もしかして空母のことか?」
「全然違うわ、これは伊達政宗を祭った霊屋のこと、何で真っ先に空母な訳? 完全に学校に洗脳されたわね」
「そうでもありませんよ」
さっきまで一言もしゃべらなかったイリスが割って入って来る。
「瑞鳳と言えば潜水母艦から改装された空母です――――」
ミリタリーについてかなりに知識を持っているのは実証済みだったが、ここでもイリスにしては珍しくベラベラと語り始めた。
その姿は表情には現れないがかなりイキイキとしているように見えた。こういう話題が好きらしい。何とも戦闘兵器として生まれただけはあるようだ。無論、俺はそのようには見ていないが……。
それに同調するように助手席に座っている月代が
「もうわかった、ありがとう、イリス」
「了解です、マスター」
「とりあえず、行くからね」
ニルが念を押すが……。
「ああ、俺は元々反対するつもりはない。今日はお前たちの行きたい所について行くことにしたから、好きにしてくれ」
港への寄港が昼過ぎのことだったので瑞鳳殿に到着する頃には既に十五時くらいになっていた。
よくわからない流れで仙台観光をすることになったが、このメンバー自体もよくわからない構成だ。修学旅行でもないし、同じ学校の仲間だけという訳でもない。不思議な気分になって一人黄昏がれてしまった。
「東京とは寒さが違い過ぎる、イリスは大丈夫か? 俺は結構寒い、車に帰りたい」
あまり建物に興味が無かった俺と俺について来たイリスは休憩所のような場所でみんなが戻って来るのを待っている。
手に息を吹きかけ温める。こんなに寒いならもっと温かいコートを買って置けばよかったと後悔した。
「私は問題ありません、私の仕様上、痛覚や温度感覚は鈍くできていますから、それにこの九八式対徹甲弾防外套は防弾性だけではなく断熱性にも優れているので温かいです」
「そうか、ならいい」
「……ぴと」
何を思ったのか無言でイリスが前から抱きしめて来たのだ。手を腰に回してかなり強く抱きしめられ、イリスの熱が伝わる。俺よりも平熱が高いのか、まるで湯たんぽ状態だ。
俺もそっと手を回して抱き合っていると、冬の寒さは和らわいだが、何だか冷たい視線を感じ後ろを振り返る。
「――――ソウスケ、何してるの!!」
ちょうど瑞鳳殿を見て戻って来た三人がこの状況を勘違いしているようだ。
「……変態」
「小宇坂さんにそういう趣味が御有りとは、その子を引き取ったのも納得が行きます。一応忠告して置きますが、その歳の子に何かしたら犯罪です」
真顔で言われ反応に困る。
「待て、お前らの想像は誤解だ」
「どこが誤解なの? 現に抱き合ってるじゃない。キョウセイワイセツよ」
「それ意味わかって言ってるのか?」
「何か言ってみただけ」
それからも言い合いは続いたが、雪が降って来たので車に戻ることになった。




