LEGEND SENDAI Base(2)
仙台基地には東北方面隊の主力部隊が常駐しており、東北地域で一番大きいLEGENDの拠点となる。今向かっているのは陸軍の施設のように見えるが違う。LEGENDは陸海空を省庁で分けてはいないため、共用の施設となっている。これは大戦の反省から生まれたシステムの様に見えるだろうが、そうではない。警備会社の発展系としてPMCだからできた構想である。
基地内に入ればそこは多国籍軍のような統一の無さであった。戦車が通る道に置いてあるだけで数十両以上、だが車種はバラバラだ。日本製の少なく、ドイツの三号、四号戦車が一番多く、次にロシアのT-34が目立つ。その中でも七四式戦車も数両程度だ。しかしながらこの中で一番強いのは七四式戦車であろう。数は多いものの、現代の戦車には到底及ばない。ただ日本の陸上自衛隊が現役で使用している96式装輪装甲車はあるようで、古めかしい雰囲気の中で一際目立っている。
横浜の地下車両庫の中で見て戦車に驚かされたのを覚えているが、これはそれらを何倍も上回る光景だ。しかも現役である聞く、これを驚かずにはいられない。
そんな中を抜け頭一つ飛び出した大きな建物に着いた。他の施設は迷彩を意識した地味な色だったが、これだけは他とは異なる。全面ガラス張りで先端を意識したデザイン性あふれる建物だ。天気が晴天であることもあり、ガラスを反射した太陽光が眩しく、建物全体が輝いている。
俺たちは少将に連れられ指令部の施設へと足を踏み入れた。
建物の外で待っていた仙台司令部の者の案内で地下へ降り、とある一室へ案内された。
少し意外だったのは地下に案内されたことだ。俺はてっきり最上階へ案内されるものだと思っていたからだ。
「ここです」
案内された一室は応接間であろう。
中はとても広く、地下である圧迫感を与えないような開放的なつくりになっていた。
「待っていた、とりあえず適当にかけろ」
荒い口調の男、その男は若く、鋭い眼光を持つ。ソファーに足を組み座っている。
少将から聞いていた、この人が仙台司令部所属第二一一機甲大隊の隊長、皐月大佐だ。話によれば見た目通りで素行の悪さが目立つ男である。だが腕は立つ、さらに能力者であるとも聞く。
その隣の座っていたのは月代瑠亜だった。
俺たちはその向かい側に座る。
「俺は皐月というものだ。お前たちの護衛の件を長月総司令に丸投げされたんでな。少なくても二日以上はかかるそうだ。別ルートでの潮泉への送迎も考えたが、航空ルートは却下として、海上ルートも天塩以外で北海道に向かう艦は七日後だ。よって短い間だが仙台に滞在してもらうことになった。その時の護衛についてだ。要望によれば最小に人数でいいらしいな。本当にいいんだなヴァイス・ツヴァイ?」
どうやら俺のことを知っているようだ。
通り名とはいえども世界からして見ればマイナーな部類に入る。そこまで世界に知れ渡っているわけではない。あくまで一地方のローカルネームのようなものだ。
「ええ、俺たちの自衛能力は高い、それにそこまで大それたゲストでもない俺たちにSPは不要だ」
「ならば、護衛は一人、俺の隣にいる月代を付ける。彼女は元々お前たちを美咲市までの案内役だからちょうどいいだろう」
とは言ったものの、彼女の実力を知らない、足でまといが増えるだけならばいない方が良い。
「彼女の実力を疑っているようだな」
「……」
皐月大佐は月代に視線を向ける。
「実力に関しては相手が長距離タイプでない限り問題ありません。私は月神流剣術免許皆伝の剣士です。近距離においては能力者にも勝る。自衛能力が低いそこの女を守るには十分です」
表情には見せないが少し不愉快そうにニルを指す。
今度はニルが不機嫌になるが、概ね正論だ。
「話がまとまったようだからお前たちは滞在中好きにするといい、月代、色々と面倒を見てやってくれ」
「あなたの命令口調は気に入りませんが、良いでしょう。これは元々本部からの命令ですし、それでは行きましょう。施設を案内します」
俺たちは月代に連れられ部屋を後にした。
その後でも会議は続いていた。
「それでは今回の案件に移りましょうか」
「そうだな、陸軍の俺からの報告は不自然かもしれないが、日立沖で一件はやはり保安局による攻撃で間違いないようだ。だが待ち伏せていた訳ではない。任務からの帰還途中で偶々発見しただけらしい」
タブレットにより資料を掲示する。
「それではあの武装漁船はいささか合点がいきません」
「そうだろさ、あれはまた別動隊だ。潜水艦からの報告で急遽近くから出てきた工作船であることが確認されている。結論から言えば運が悪かったってことだ」
「流石は仙台司令部です、情報収集が速い」
「それもまた偶然だ。あの海域には仙台基地所属の潜水艦がいましてね、それで情報が早かったと言う訳だ。潜水艦の観測によればアスロックは全て外れたそうだ。向こうには何か特殊なシステムを組み込んでいる可能性を技術スタッフが示唆している所を見ると、この後の航海も気を付けた方がいい」
「そうですね、こちらの兵器で当てることができない以上、次はないかもしれない。あの人工少女のイリスがいなければ確実に沈んでいたよ」
「報告は聞いている。あれは化け物だ。物理防御力は最強だ。そうだ、中島大将の懸念を少しでも減らせるように増援呼んだ、二日後にインドネシアから潮泉へ帰投する輸送船団がやって来る、それに合流するといい」
「第二機動艦隊ですか?」
「そうなるな、これで安全に行けるだろうさ」




