The Battle of Hitachi(1)
夜明け間もない学園は人一人としておらず、いつもとは違う雰囲気を漂わせている。しかし学園港へ一歩足を踏み入れれば、そこでは日帝の軍服や作業着を着た人たちが慌ただしく出港準備を始めている。
ニルは愛車であるTOYOTA 86を積むためにどこかへ行ってしまった。残されたのは大きな荷物と俺たちだ。
この港に泊まっているのは昨日の作戦に使用した艦ではなかった。詳しいことはわからないが、第五航空戦隊の大鳳はミサイルが被弾したものの応急修理を受けずに元に任務に復帰するため東南アジアへ、最後の方で援護に来た第三戦隊は横浜には寄らずというか寄れずそのまま母港である仙台へ、横浜司令部所属艦はそれぞれ元の場所に戻ったようだ。
そして俺たちがこれから乗るのはそれらとは別の船だ。
船体としては護衛艦よりも大きくパッと見は大鳳のような強襲揚陸艦にも見える。甲板がありヘリコプターBK117とUH60Jの二機が止まっている。
船体側面にはLST-802とグレーの下地に白字で書かれている。海上自衛隊で照らし合わせれば戦車揚陸艦の部類に属し大隅型輸送艦などが例として挙げられる。
この船は色からも察しがつくが歴とした軍艦だ。石狩型輸送艦二番艦 天塩というのが正式名称らしい。名前の由来は北海道の一級河川である。
輸送艦であるため主砲は搭載されていないが、機関銃やアスロックなどの防戦用の装備はそろっているようだ。
俺たちの搭乗には神無月先生が立ち会ってくれて艦長の中島少将が直々に艦内を案内してくれた。
これから一日半かけて行くことになるそのため来客用の部屋を一室貸してもらうことができた。広さは六畳間程度の大きさだが窓はなく執務用の机やテーブル椅子があり四人で過ごすには少し狭い。一応ベッドも完備しているがどう頑張っても二人が限界だ。それ以外にも色々と問題があると思うがその時になってから考えればいいか。
「中々いい部屋ね、少し狭いけど」
「そうだな」
それぞれ荷物を置き部屋を後にする。
リアは艦内を見ておきたいと部屋を出てすぐにどこかへ行ってしまった。
俺たちは艦内の空気はよくなかったので甲板に出ることにした。軍艦の内部構造は複雑で外に出るまでに苦労したが何とか辿り着く。
甲板には二機のヘリはそのままにTOYOTA 86が十五トンクレーンで甲板に引き上げられている所だった。
甲板には指示を出しているニルの姿があった。
石狩型にはおおすみ型同様にサイドランプがあり車両をそこから格納が可能なのだが、ニルは甲板上にロープで固定して運搬してほしいと頼んだらしい。理由はわからないが、おそらくただの気まぐれではないだろう。それにニルの愛車は潮風に耐えられるように耐食メッキコーティングされているので錆びる心配も少ない。ニルは細かい所にも気を使っているようだ。
その様子を眺めていると俺たちに気づいたニルが近づいてきた。
「こんなとこでどうしたの?」
「何となく外の空気を吸いたくてね、部屋は後で案内する」
「わかった」
ニルのTOYOTA 86が甲板にロープで固定されると俺たちは一端部屋に戻ることにした。
部屋に入ってニルが初めに行った言葉が酷かった。
「何ここ、物置か何か? 荷物だらけで超狭いんだけど」
「あまり大声で叫ぶな、外に聞こえたらどうするんだ!!」
「バッチリ聞こえたよ」
扉からリアが入って来る。
「二人共もう少し静かにしようよ、それと防音性は低いみたいだからソウスケはオオカミになっちゃダメだよ」
「つまらん冗談言うな」
アホなことを言った張本人はなぜか顔を少し赤くしていた。
それから直ぐに四人が揃ったタイミングを見計らったかのように扉がノックされた。
俺は艦長かここの乗組員だと思っていたが聞こえてきたのは女性の声、扉の前には俺たちが明日から通うであろうLEGEND月代高等学園の制服に身を包んだ黒髪の長髪の少女がたっていた。




