Recapture Strategy(10)
~Fort TATEYAMA Side~
鉄筋コンクリートで周囲を囲まれた広い部屋にコンピュータが大量に置かれ数十人態勢で指令を発している。
「北第一、第二砲台制圧されました」
「南第一砲台、観測所制圧されました」
「第四機甲部隊が館山港で交戦中、第八機甲部隊が十分で到着します」
戦局は思わしくない。
既に要塞の要である観測所が制圧破壊されてしまっている。
こちらとしてはある程度の戦力は用意していたが、それを上回る勢いで制圧されている。
特に東京湾の内側である北側で使える戦力は等間隔で配備していた機甲部隊と小隊だけだ。固定砲台は全て破壊され対空砲も機能していない。
「第十五小隊、谷口三佐から敵戦闘機の詳細が判明しました。LEGEND第一艦隊第五航空戦隊所属のF-1戦闘機です。爆装はなく、偵察だと思われます」
「どこのバカが払い下げたんだ!!」
塩沢二等陸佐が声を荒げる。
「となると近くに母艦がいることになりますね。所在は特定できていますか?」
二佐の隣の中川一等陸佐は至って冷静だ。
「アメリカ国防総省からの情報によれば十分前に東経140.78度、北緯33.46度を四十五ノットで移動中の 龍鳳型強襲揚陸艦 二番艦大鳳を発見したとの報告があります。直線距離で約二百五十キロです」
M1 Abramsからもわかるようにアメリカとの軍事的つながりがある。
モニターに護衛艦の判明している詳細スペックが表示される。
旧大戦時の大鳳とはまったくの別物で、甲板には特に艦載機の発着艦に必要なものはなく、ただの輸送艦にしか見えない。
こちらの持っている情報だけでは外観以外は何もわからなかったのだ。
この艦はLEGENDの本拠地である苫小牧港の潮泉基地所属である。現在は単独任務のために東南アジアにいるはずなのだが、日本に引き返しているようだ。
「既に攻撃機が出ている可能性もありますね。戸村一佐の部隊はどうなっていますか?」
「戸村一佐は現在千手院に掛かりっきりです。他の特攻部隊も敵の精鋭部隊と交戦中です」
「使えるカードが少なすぎる。それに投入してきた敵部隊も予想の三倍以上、肝心の月宮瑠音は奪還される。第二ヘリコプター隊と第一駆逐隊は壊滅だ。岸本司令は無茶を言っている!!」
第一駆逐隊により晴嵐による爆撃を中止させたまでは良かったが、作戦変更でLEGENDの西方防衛隊の潜水艦二隻が第一駆逐隊に雷撃を敢行したのだ。その所為でほとんどの艦が航行不能に陥っている。
このことから訓練と実戦での経験不足が窺える。
残っているのは一二式閉止障壁に使用されている三隻のみだ。この三隻には超能力者を配置したため雷撃を防ぐことに成功している。
「女一人にここまでの戦力を投入して来ることは流石に想定できませんね。作戦がデタラメです。陸上の増援部隊の足止めには成功していますが、このままではもう一人を奪還されるのも時間の問題ですね」
「どうすればいいものか……そうだ、江戸の部隊は何をしている?」
「詳しくはわかりませんが、第六小隊、山口伍長からの報告によりますと北側の防衛を放棄し南側に向かったとのことです」
「流石は江戸の剣姫と呼ばれているだけはあります。障壁の防衛の向かったのでしょう」
「追加でもう一つ判明したことがあります」
「何ですか?」
「第五航空戦隊の詳細です。岸本司令が情報を持っていました」
「確認する」
印刷されたコピー用紙を眺め中川一佐の表情は曇った。
構成している艦は二隻だけだが、搭載している艦載機に危機感を覚えたのだ。
「……これはいけませんね」
「さらに駆逐艦渦潮が急降下するレシプロ機を捕捉したとのことです」
急降下するレシプロ機と聞いて塩沢二佐が椅子から転げ落ちる。
額には大量の汗が噴き出ておりひどく恐怖していた。
「ま、まさか、そのレシプロ機はJu87C Stukaじゃないだろうな」
「……その通りです」
「…………悪魔のサイレンですか……」
「あれに乗っているのはあの男しかない!! ただちにここを放棄しなければ要塞ごと消し飛ぶぞ!!」
「やはり、あれに乗っているのは――――」
「「――――終わりなき闇だ!!」」




