Strategy Preparation(8)
~Campus Side~
「……失礼します」
神無月慶明が理事長室に入る。時刻は既に四時を回り、寒波のせいか雪がちらほらと降り始めている。
「どうした、中佐。作戦開始までそう時間はないぞ」
「それどころではありません。本作戦ですが、六部隊での敵全勢力を足止めすることは非常に困難です。故に私がここへ来たのは機甲師団を派遣するべきではと思いましてお願いに伺ったのです」
「私もそれは考えた。しかし昨日の件で高速が通行止めである以上、陸上輸送は難しい」
険しい表情で答える。
「理事長もお分かりかとは思いますが、いくら私といえども複数の戦闘車両を相手のすることは困難です。このままでは生徒を危険に晒してしまいます」
「航空部隊なら動員可能だ」
しかし神無月はさらに表情を曇らせる。
「それは逆効果でしょう。付近には海上自衛隊の航空基地があります。晴嵐の攻撃ですら危険であると考えています。零戦を出したところでスクランブルをかけられ追い返されるか、撃墜されるのが落ちでしょう」
「そうだな、だが誰が何と言おうと中止はできない作戦であることはわかっているな?」
「もちろんです」
「どうしても必要ならば私が直接出向いても一向に構わないぞ」
「それはいけません。学園でもしものことがあった場合に対処できなくては本末転倒です。せめて後二部隊あればどうにかなりそうなのですが……」
理事長はデスクのパソコンから何か資料を探す。
この時期はそこまで立て続けに重要任務は来ることは少ないのだが、今年に限って優秀な生徒が別ミッションで出払っているのだ。
神無月もそれを承知の上で話している。
「そうだな、ならば我が一族を京都より一人召集する。それなら行けるか?」
神無月は少し考え込む。
「どうにかして見せましょう」
「作戦は定刻通り実行せよ」
「よろしいのですか? 定刻まで二時間弱しかありません。間に合わないのでは?」
「そこを気にする必要はない」
「承知いたしました」
「では武運を祈る」
神無月は理事長室を後にする。
その表情はまだ曇ったままだった。
「さて、作戦を遂行できるでしょうか?」
廊下でそう呟く。
「きっとできますよ」
理事長室前の壁に寄りかかり神無月を待っていたと思われる一人の少女、ライムグリーンのツインテールにアイスグリーンの瞳だが、左目だけに逆三角形の白い線が刻まれており、それの部分だけが異様な雰囲気を漂わせている。
「フィリア、どうしてここに? 確か今日は別の作戦があったのでは?」
教師と生徒の会話であるが名前で呼んでいる。
「慶明先生が困っていると思いまして」
幼い顔立ちとは裏腹に丁寧な口調で大人っぽい。
「なるほど、もうこの話は広まっているという訳ですね。まあ、極秘扱いではありませんから問題はありませんが……」
「生徒の間ではかなり大きな話題になっていましたよ。広まっていることを知らないのは先生たちだけではありませんか?」
「そうですか。なるべく知られずに行いたいものですが……」
少し残念そうな顔をする。
水原が広まっている内容を大まかに話す。
「広まってしまったものは仕方ありませんね」
「先生は人員不足で悩んでいたんですよね?」
「それは、そうなんですが……」
「じゃあ、私が出ます」
「フィリアが? そうですね……」
少し考えるような素振りを見せる。
「そういえば、フィリアはあの作戦に参加されていましたね」
「そうですよ、先生。……ダメでしょうか? 先生の役に立ちたいんです!!」
「わかりました。フィリアの実力は十分承知していますが、気を付けてくださいね。僕は別の場所に着きっきりになりそうなので」
「わかってますよ。ありがとうございます。それでは定刻でまたお会いしましょう」
水原は嬉しそうに走っていく。
「戦力は揃いつつありますね」
神無月も足早にドッグへと向かった。




