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GENERATION☆DESTRUCTION!!  作者: Yuki乃
EP01 Remember
5/277

Remember(4)

 ―――――ドォォォォォ―――ン!!!!

 トリガーが引かれる、コンマ数秒前、突如として轟音が鳴り響く。

 だが、これは銃弾が発射された音ではない。

 その轟音と共に爆風のようなものが吹き荒れる。

「何なの!?」

 女は音の方を振りむく、その一瞬の隙をつきアイリスの手を離し俺は走り出す。

「――――このクソ女が!!」

「――――クソガキ!!」

 女は慌てて銃をこちらに向けて発砲するが、俺の直ぐ右に逸れる。

 そして銃を蹴り上げが殴りかかる。

 銃は女の手を離れ、屋上から柵を超えて落下していく。

 だが俺の拳は女に届くことなく回し蹴りを逆の俺が吹っ飛ばされる。

「――――宗助!!」

「大丈夫だ」

 俺は何とか立ち上がり、アイリスを守るように立ちふさがる。

「へぇ~、そう、以外とやるのね」

 ある程度は鍛えているのだから、これくらいは役に立ってもらわなければ困る。

「無駄話をせずにさっさと殺しておけばよかったわ。私の手を煩わせたお礼にあなたにはたっぷり痛みを味あわせてから殺してあげる」

 女はナイフを取り出し構える。

 左手から血が滴り落ちるが、だが不思議と痛みはあまり感じない。いや、痛みを感じないくらいの怒りが俺を支配しアドレナリンを分泌させているからだろう。

 ここで俺が死ぬわけにはいかない、アイリスは俺が必ず守る。

 そして二人で帰るんだ。

「お前はここで俺が倒す!!」

「威勢はいいけれど、できるかしら?」

「出来る、出来ないの話じゃねぇ!! やるんだよ!!」

「だったらやってみなさい!!」

 女はナイフを持って急接近する。

 俺は近くにあった「歩行者に注意」のマークの三角形の看板を旗立沓石から引き抜け振り回す。

 リーチが長く、女はバックステップで距離を取りジリジリと俺の周りをまわる。

「一般人だと思っていたけど、あなた才能があるのね」

「そんなこと言われても嬉しくねぇよ。大人しく引いてくれ!!」

「それは無理ね、失敗したと知られたら私が怒られてしまうわ」

「狂ってやがる」

「だから何をしても今日があなたたちの命日なことには変わりないわ」

 どうする、どうすればいい?

 この女を倒さなければこの女の言う通りここで死ぬことになるだろう。

 だが、これ以上俺に何ができるというのだろうか?

 少し振り返るとアイリスが放心状態で俺を見つめている。

「――――それじゃあ死になさい!!」

 俺に向かって来る女に向かって標識を振り回すがジャンプで躱される。

 そしてそのまま女が突っ込んでくる。

「がっかりね」

「――――この野郎!!」

 女のナイフを左腕でガードするが突き刺さり更に激痛が走る。

 だが、貫通はしてない。

 そのまま俺は右手で殴る。

「――――素人じゃないの!?」

 だがそれをいとも簡単に防がれる。

「残念でした、実はもう一本あるのよね~」

 女が目の前でナイフを取り出す。

 そして俺の顔面目掛けて振りかざした。

 ―――――――ドォォォォォ―――ン!!!!!!

 ―――――――ドォォォォォ―――ン!!!!!!

「なんだ!?」

「なんなの?」

 俺と女が同じ方向を振り向く。

 さっきの爆発音とは比にならない大きさの音が立て続けに二回も発生したからだ。

 その瞬間に爆風で俺と女が吹き飛ばされる。

 それだけではない。

 爆風が今までに巻き上げて来たものが飛来物として飛んできており、まともに立っていられる状況にはない。

 女は二十メートル奥に停車していた自動車に体を打ち付けられており、今すぐに追撃して来る様子はない。

 そうだ、アイリス、アイリスは!?

「――――アイリス!!」

「宗助、私は大丈夫」

 何とか起き上がった数メートル先にアイリスがしゃがみ込んでいる。

 どうやら無事そうだ。

 ――――ミシッ!!

 俺が駆け寄ろうとした瞬間に俺たちアイリスの間のコンクリートに大きなひび割れが発生する。

 それはまるで俺たちを隔てる壁のように……まずい!!

 そう直感が叫ぶ。

「アイリス、そこは危険だ、早くこっちへ」

 俺がアイリスに手を伸ばす。

「うん、わかった」

 アイリスがゆっくりと立ち上がり、一歩ずつこちらに歩み寄る。

 だが、更にひび割れが進行していくのが目に見えて分かる。

 そしてそのひび割れが屋上の端に達した瞬間だった。

 まるで地面がひっくり返ったかのようにアイリスの体が斜めになっていく。

「――――アイリス!!」

「――――宗助!!」

 崩れ落ちるコンクリートがアイリスと共に落下していくのが見える。

 俺は必死に踏み出し手を可能な限り伸ばす。

 二人が伸ばす手は互いの手と手が触れ合い、暖かな温もりを与えてくれている。

 届いたのか!?

 だが、それは一瞬の出来事だった。

 一瞬触れ合った、いや掠ったお互いの手は掴むことなくすり抜けていく。

 消えた温もりの変わりに、空を掴んだ俺の手の先の深淵へと呑み込まれていくアイリスの姿を最後まで見つめている俺がいる。

「嘘、だろ? なんで、なんでなんだ、アイリス、――――アイリス!!」

 叫んだ声は木霊しやがて静寂が支配する。

 その場にしゃがみ込む。

 俺の中を絶望は支配した時、俺がいるコンクリートが崩壊を始める。

 だが、俺は何もすることはできない。

 落下する中で俺の意識が徐々に失われたのだった。

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