Battle of Tokyo Bay(10)
~Kannazuki Side~
ひうち型多用途支援艦から少し潮に流され離れた潜水艦の甲板の上に月宮の制服を着た生徒が、大きいシュノーケルの上には神無月中佐が、潜水艦の乗組員は全員艦内に避難しており、甲板は二人だけの戦場と化していた。
「こんな夜中に出歩くのは女子生徒としてふさわしくない行動だとは思いませんか? 一年守護科淡河くん」
毅然とした態度を崩さず問い掛ける。
「ご存知でしたか神無月先生、まさかテロリストも兼任されているとは思いませんでした」
「見解の相違ですね、あなたのことは担任の千手院先生から聞いていましたよ。特別優秀な人材が入って来たと」
「その先生は見る目がありませんね」
「そんなことはありませんよ、私の目にも淡河くんは優秀であるとわかります。それがこのようなことになってしまうとは非常に残念です」
本当に残念そうに女子生徒を見つめる。
「勝手に残念がられても迷惑です。私は元からこちら側の人間ですから」
「ならば潜入調査中は別ミッションに参加するべきではなかったですね。素性が明かされてしまいましたよ」
「これも計画通りですので心配には及びません。それよりそろそろ時間稼ぎは終わりにしませんか?」
「時間稼ぎではありませんよ。ですがあなたと話す事柄ももうありません」
コンコンっと靴で足元を叩く。
潜水艦のスクリューが回転し動き始める。ひうち型多用途支援艦から離れていき、東京湾を出る方向に進んでいく。
「何をするつもりですか? 全ての行動は無駄ですよ」
「……それはどうでしょう? ――――全圧力隔壁閉鎖三番区画バラスト注水、作戦をαに移行!!」
穏やかな声色から突然叫び出す。
「――――何をする!?」
スカートの裏から小型のナイフのような飛び道具を構える。
「溺れないでくださいね、私はこういう身分ですが、人殺しは嫌いな性質なものですから」
ひかり型潜水艦は神無月中佐と淡河を残し潜水していく。
「死ぬつもりか?」
先に沈むのは淡河が立っている前部甲板つまりカタパルトだ。
「私は海を渡る術を熟知しているのです」
――――――シュン!!!
構えていたナイフを投げつけるが全て指と指の間に収まる。
「私は戦いを好む者ではありません、淡河くんさえよろしければ浮き輪を一つ差し上げますよ?」
救難用に完備されている浮き輪を投げるが蹴り飛ばし受け取ろうとしない。
「断る!!」
甲板は海に沈んだが靴が濡れる寸前で飛びあがり神無月中佐と同じシュノーケルに着地した。
距離にして三メートルだろうか、敵意を向けているのは淡河のみ、中佐は攻撃チャンスをわざと逃す。
「私をコケにするとは……、あなたが初めてですよ」
「コケになんてしていませんよ。それに能力はまだ私もあなたも使っていません」
「ならば最後にこれでも喰らってください」
淡河の周囲に異常な瘴気が漂い淡河の中のある一点に集まる。
空間が歪みシュノーケルの防護柵がねじ切れる。
「――――――Riot!!」
近くの25mm三連装機銃改を破壊し、中に舞った残骸の中から砲身を掴み瞬間的に音速の何十倍の速さで振り上げる。
それを難なく躱すが後ろに数十メートルという跳躍をしたため真下は海だ。
「意外と単純な能力でしたね」
「舐めないでください」
「そんなつもりはないですよ」
淡河の足場が沈む瞬間にシュノーケルをへこませる脚力で飛び上がりもう一撃加えようとするが、気が付けば砲身の上に中佐が立っている。
「ここまでですね」
「――――待て!!」
再び跳躍した中佐は東京湾の暗い海に消えて行ったのだ。
その後、淡河は砲身を足場に艦まで戻った。




