Battle of Tokyo Bay(9)
「俺が戸村を相手する。もう一人はリアに任せる」
「わかったわ」
リアは潜水艦が接舷している方と逆側の左舷から周り込む。
俺は正面で睨んでいる戸村と対峙した。
「おっさんも懲りないな、もう諦めたらどうだ?」
「悪いがこちらも仕事なのでな、その減らず口二度と叩けなくしてやる」
右手の漆黒を瞬時に撃ち出す。
狙いは正確に俺の顔面だが、狙いが正確であった方が躱しやすい。
お互いに船尾と船首に近い場所、中距離ではこっちが不利だ。前進しながら躱し距離を詰める。SIG SAUER P220で銃撃しつつさらに前進する。銃弾はすべて漆黒で消失させられた。
全く効かない。だが距離は詰めた。
「近距離は俺の領域だ!!」
「近距離は私の領域だ!!」
さらに左手にも漆黒を灯し、両手で甲板を打ち抜いた。
船体は大きく揺れ、亀裂は俺がいる場所を通りブリッジの近くまで達する。
そして崩れた。
船体の傾きで戸村の部下は海に投げ出された。だがリアの姿は見えない。
何とか防いだか?
俺は甲板の瓦礫の上に着地したが、その高度差を利用し位置エネルギー込みの高速拳が飛んで来る。
「悠久の翼を授かりし剱=Permanence Wing Edg抜刀」
右剣を抜刀し防ごうとするが、足場が不安定で瓦礫の中に靴が食い込み後ろにずるずると後退する。
拳と刀が触れ合った途端、手にまとっていた漆黒が消失し始める。
すぐに腕を離し戸村は両足で俺の腹部を蹴りつけるが右剣でガードする。その反作用で後ろの大きく飛び下がる。
その滞空時間は長い。
足元の瓦礫の中にリアのDanel NTW-20が顔を出していた。
即座に引き抜きボルトアクションの装填レバーを引く。
「――――これでも喰らえ!!」
照準器など使わずに目見当で撃ち放った。
―――――ドゴ――――――――――――ン!!!!!という重低音が船を振動させ、俺も反動で吹き飛び、艦の内壁に軽く衝突する。
拳銃とは比べものにならない反動、こんなものをリアは普通に使っていたというか!?
お粗末な狙いではあったが、見事命中して爆散した。
それはもの凄い爆発であり、学園でCH-47 チヌークを撃墜した時のような感じにコンテナの側壁を破壊し、脱出用のボートを吹き飛ばした。ボートは左舷に飛び着水した後にさっきの爆発で穴が開いていたのか沈んだ。
これは俺も想定外だった。てっきりさっきまで使っていた通常弾が入っていたものだとばかり思っていた。
しかし実際に装填されていたのは20mm×110AP弾と呼ばれている特殊弾で、軽装甲車くらいなら一発で撃破できるくらいの攻撃力を持つ。詳しくは知らないが、一発あたり数十万すると聞いたことがある。
これは完全にやってしまったような気がしたが、爆風が晴れるとそこには漆黒を薄く伸ばしたものが広がっており、戸村は無傷だった。
「汎用性が高すぎる」
「武器に頼るとは情けない、―――――お前の能力をみせて見ろ!!」
船尾の崩れず残った甲板に着地した戸村は漆黒を再び膨張させ圧縮し、一発解き放った。
「残念ながら俺は無能力者だ!!」
Danel NTW-20を担ぎ、漆黒を躱しながら瓦礫の山を駆け上がる。
外れた漆黒は左舷船体に命中しそのまま貫通していった。そこから大量の水が入り込み艦は少し斜めに傾く。
何とか登りきり艦橋の壁に設置されている梯子に掴まり、侵入する海水から避難する。
バキン!!と梯子に漆黒が命中し一瞬宙吊りになるが壁を蹴り上げ自力で上まで上がって行く。
「ちょこまかと動いているだけでは勝てないぞ」
そんなことはわかっているが、巨大な主砲を向けられている中、それに無闇に突っ込んでいく奴はいない。
ブリッジの天辺まで登り切り艦全体を見渡すが、既に大破しており、ドッグ行きは確定したようなものだ。
さらに言えばダメージコントロールがうまくいっていないのか艦は次第に傾きを増しているように感じられる。これは港まで持つかを心配した方が良い。
逆サイドにいるはずのリアの姿が見当たらない。
さっきの衝撃で海に落ちたのか?と思ったが、よく見ればブリッジ横の甲板に力無く横たわっていた。
気絶しているようだ。
俺はDanel NTW-20のコッキングレバーを引き最後の弾で狙いをつける。
「それは通用しないとまだわからんのか?」
―――――――――ドォ――――――――ン!!
戸村の声は轟音で打ち消され後部甲板で爆散する
攻撃が効かないのはわかっている。
Danel NTW-20をリアの横に投下する。投げ捨てたように見えるが、見事リアの横に落下し艦の傾きにより海に落ちることはなくブリッジの方に寄りかかった。
爆風が消えない内にブリッジから飛び出し後部甲板に着地し右剣を抜いた。
煙が晴れて戸村と再び対峙する。
「――――俺の本気はこれからだ!!」
「望むところだ」
ブレードと拳の漆黒が衝突し合い、そのたびの漆黒が消失するがすぐに元に戻る。
「銀幕の双剣はどうした小宇坂!!」
「お前程度、一本で十分だ」
「生意気言ってくれる」
漆黒の威力は大きく、同じ威力でも重みのようなもので甲板に足がめり込む。
徐々に後退し海水が溜まっている甲板の穴を迂回して艦の縁を綱渡りのように高速で駆け抜け艦首の方に回る。
「もう逃げ腰か?」
拳を前に出す動作で何回も漆黒を打ち出すが全て右剣で弾き離散させる。
「俺もそれは飽きたぜ」
かかって来いという手を動きに、
「いいだろう」
足に漆黒が発生したかと思ったら姿が見えなくなる。
右か左か……いや、
「「―――――上だ!!!」」
無音で拳と右剣が衝突する。
上から下分だけ威力負けする。すぐに剣を引き艦首に下がった。
作戦は成功した。
俺はそう確信し戸村と無駄な鍔迫り合いに身を投じた。




