Airforce versus Army(8)
問題はそれだけじゃない、山積みだ。
ここから出ても状況が好転するわけじゃない。むしろ悪化する。下道に出ればスピードが出なくなる上に信号もネックだ。
警察に囲まれたら最悪、
「最悪の場合86は放棄するしかないか……」
「それは無理だよ!!」
「どうして」
「私とハチロクちゃんは三位一体だからだよ!!」
「三つも繋がってないだろ、要するに放棄する気はないと」
「当たり前だよ、この子を放棄するくらいなら、あんたを降ろすわ」
「意外と薄情だな」
「そりゃあ、わたしはハチロクちゃんを愛しているもの」
「それはいい、本気で放棄するわけじゃない。もしもの時は俺がこの子連れてLEGEND東京支部にでも逃げるさ」
「ハチロクちゃんを連れて?」
「言い方が悪かった。この子ってこの子のことだよ。というかそれくらい察しろよ」
腕に抱えた少女を少し持ち上げる。
「ああ、その子ね」
「長く高速にいるためにスピードは落した方がいいと思うが?」
「それもそうだね」
さっきまで150キロメートル前後だったが80キロメートルくらいまで落とす。
これで若干の延命はできた。
「もし封鎖されてたら引き返すわ」
航空レーダーが飛行物体を検知した時のアラートが鳴る。
「後方から別のが来る。機体はMi-1だ」
機体の名前が表示されるだけでソリッドモデルとか英語による機体解説が一切なく、ただ吹き出しに型版が出るだけだ。
「それを陸上自衛隊は所有してないよ。どこのだろう? 海上? 航空?」
「俺はそこんとこ詳しくないからわからん」
「でもそれって確か第二次大戦前の奴じゃなかったかな? 私の記憶が正しければロシアの民間ヘリコプターだよ」
今携帯で調べたところ、確かにそうだ。
どうやらニルの言ったことは正しい。
Mi-1はロシアで戦後に開発された民間用ヘリコプターで乗員は一名だが、後ろに最大もう二人まで乗れるらしい。
基本的には貨物運搬、人員輸送、航空郵便、救急搬送などに使われ、かなり多く生産されたようだが、日本では運用されなかったようだ。
こんなもの博物館で展示レベルの古さだぞ。
飛んでいることが奇跡的だ。
「ロシアンマフィアとか?」
「そうだとすれば、もっと真面目な物を使うだろう」
だとすれば……。
「学園のかな?」
「何で学園にそんなもんがあるんだよ」
「知らないの? 学園の車両庫に行ったことがないの?」
「いや、ある。今日バイク借りたばかりだ」
「ならわかるはずだよ。あそこに古い戦車とか装甲車とかたくさん展示されていたよね」
「確かに何か見えた気がする」
そういえばドイツとかロシアとかのデザインは古い戦車とロケットシステム積んだトラックあったな。
デザインは古そうだが、埃を被ってるわけでも塗装が剥がれてるでも泥や砂に塗れて訳でもない。
新品同様だった、まるで戦争には参加しておらず倉庫に眠っていたように。
「それは現理事長様が世界を回り集めた第二次大戦で使用されたものを安く払い下げてもらったものを修復したものたちなんだよ!!」
イキイキと語るような、車というより乗り物が好きなんだなニルって、でもあれは綺麗の域を遥かに超えていた気がする。
まるでパーツを複製して新品を作ったみたいだった。
それと理事長に「様」を付けていたことも気になった。
「じゃあこれも」
「そうでしょうね、間違いなく援軍ね」
それにしても頼り無さそうな援軍だ。
相手はあのニンジャだ。ジェットエンジンを二基搭載し、時速290キロメートルも出る。それに対してこっちは民間用のヘリコプターだ。
非武装だと仮定するなら勝ち目はゼロだ。
だがレーダーのヘリはこっちに向かうことなく海上に出てレーダーから消えてしまったのだ。
「どうやら援軍ではなかったようだ」
「そ、そうみたいだね」
さっき援軍と断言した手前恥ずかしくて顔を赤くして黙ってしまった。
よくあるよ、そういうこと。
援軍でなければ何だったのかは謎のままだが、今深く考える必要はないだろう。
再びアラート音、さっきまでロストしていたにOH-1が今度は後ろから来ている。
海上で大きく旋回して後ろについて来たのだ。
距離は2キロ弱、
「今度が後ろから来るぞ!!」
ドンッという花火を鈍らせた音が車体後部から鳴る。
フレアとチャフを上空に散布する。
後ろは発射の煙で良く見えないが、それから直ぐに大きな爆音が鳴り響く。
さらにもう一発撃ちあがり、三発目も回避する。
「後一発だな」
追いかけられているが速度は維持したままだ。
煙が晴れるとレーダーで見てある程度は分かっていたことだがかなり距離が縮まっている。
ヤバいぞ!! 機関銃は見当たらないが、ミサイルが後一発ついているのが見える。
さらにインターチェンジでは警察車両の赤いパトライトが複数見える。
下りることは無理だろうと思っていたが行動が早い。
「もう半分以上来ちゃったよ。荒っぽいことになったらあんたに全部任せるから、覚悟しておいてよね」
「それくらいわかってるよ」
そうだな、最後が出口の敵を蹴散らして強引に突破する意外無いからな。
「でも車両は無理だぞ」
「そこは問題ないよ、この子にはレーダー誘導ミサイルが搭載されているから」
親指を立てながら自信満々に言った。
「……」
「あれ?宗助、無反応だね」
もう驚き過ぎて、それくらいでは反応することがなくなってしまった。
「もう慣れたよ」
誘導弾の妨害装置が付いてるのだから、それくらいあるだろうさ。
ヘリは速く行けと言わんばかりに後ろにぴったりついて圧力をかけてくる。
「ヘリの圧力になんか屈しない」
「だがこの距離から撃たれれば作動する前に木端微塵になるな」
「結局、追いかけてくるなら状況は変わらないよ」
それもそうだ。
それだったら遅く走った方が時間を稼げる。
それに相手も人質……物質?の奪還を諦めたわけじゃないようだし、終点まではまだ安全だろう。




