Airforce versus Army(3)
後ろを振り返ることはしないが、射線を感じたので、開けてそのままとなっていた扉に入る。
――――バン!!――――バン!!
MP5から発射された9mmパラべラム弾は金属の扉に命中する。
中に入った瞬間、俺の足は止まり、剣を構えた。
何が起こったのかわからない。
その部屋には人がいたのだ。
女子生徒……ではないだろう。
巫女服の女性、ただの巫女服ではない。旧来あるべき姿である白衣に緋袴という形ではなく。
緋袴は本来あるべき長さを持っておらず、ミニスカートのように短い。
腰にも本来ならば前に来るはずのリボン結の結び目がなく、代わりに後ろ側に来ている。
白衣は袖と胴が緋色のクロス状の布で繋がれていて腕が見える。
白のニーソックスを履いており、下駄もただの下駄はなくハイヒール下駄とか呼ばれているタイプのものだ。
現代版アレンジというべきだろうか?
それでだけでも困惑するというのに、巫女服の少女はアイマスクというか仮面をつけている。
銀色の仮面だ。
目だけを覆うようにつけられたそれは対角からクロスに引かれたラインとその中央上よりの部分にνとVの筆記体を融合したような文字が彫られて黒で塗られている。
そのため表情を読み取ることはできない。
さらに少女はその美しい姿に似合わない大きな刀を後ろのリボンの結びに差しているのだ。
鞘の頭と柄の先が金で装飾してあり、柄の先からはチェーンが二つほど垂れていてその先に紡錘形を限りなく鋭利にした氷柱を二本合わせたような金の装飾品が付いている。
あれは間違いなく名刀だ。
しかも、その辺のものとは全く異なる。
金一文字シリーズの一本であるに違いない。
だが、それがどれなのかを特定することはできなかった。
距離を取るにも部屋は狭い、どうしようもなく対角の一番遠い場所まで自然と移動する。
まさか、他の部屋にも敵がいるなんて……。
入った瞬間に本当なら死んでいた。
だが撃つことなく、抜刀することもなく、何の構えも見せず、ゆっくりと扉に向かうのだ。
何者なんだコイツは?
どう見てもここの部屋の寮生ではない。
食堂でもこんな姿の人をみたことはない。
いや、そもそもこの階は男子生徒しかいない、女子生徒は三階と決まっている。ありえない。
そんなことをしているうちに戸村に追いつかれてしまった。
――――やばい!!
巫女服の少女が扉に近くづく動きと連動するように窓際に移動する。
「見つけたぞ、小僧!!」
そう言い放ち、9mm自動拳銃を向けた時だ。
戸村の目の前には巫女服の少女、あの戸村も思わず一歩下がり距離を取った。
「「……まさか、き、貴様は……」」
戸村の焦っているような声と単調な巫女服の少女の声が重なる。
一体あの子は何者で何が起きたんだ?
巫女服の少女は静かに喋り続ける。
「…………久しぶりですね、戸村永治」
本当は彼らの会話を聞いていたかったが、戸村を足止めしてくれている。
逃げるには絶好の機会だ。
俺は開いている窓から双剣の鞘のワイヤーアンカーを窓の柵にかけて自由落下する。
あの廃ビルと同じ方法だ。
ワイヤーをブレーキでコントロールして着地する。
どうやら追ってくる気配はない。
さっき爆散したヘリコプターから降り立った部隊は半壊しているがまだ数で言えばかなりいる。
だが寮へ攻撃してきてはいない。やられた味方の救出を優先している。
ニルの車は学園の裏口、こいつらとやり合う時間も、武器もない。
ならばバイクで迂回するしかない。
寮の自転車置き場に適当に置いてあったカワサキ ZL1000を回収し、校舎の方へ向かおうと寮の前を横切った時だった。
女子生徒が二階の窓ガラスを割って飛び出してきたのだ。
そいつはそのまま何事もなかったかのようにアスファルトへ着地する。
――――ドゴォォォォ――――――ン!!!!!!
その直後に寮の二階が吹き飛んだのだ。
あの二人でやりあったようだ。
背中には慎重よりも高く伸びるバレルとサプレッサーが突き出ていて、背中から少しはみ出した銃の本体が肩掛けベルトで背負われている。
あれは大口径アンチマテリアルライフルDenel NTW-20だ。
重さは二十六キログラムくらいあったはずだが、そいつを楽々と背負っている。
それにどこからでみたことある顔だ。
美しいハーフの整った容姿で薄茶色っぽいアーモンド色の長い髪の右もみあげを三つ編みにしていて背が高いハーフと言えばリアしかいない。
バイクを止めて、リアがリアに跨る。ダジャレだ。
ヘルメットはもう一つないが、細かいことを言ってる場合ではない。
「無事でなによりだ」
ヘルメットのバイザーを開ける。
「ソウスケはムチャばかりしてるみたいね」
「そんなことはない。リアこそ何でそんなデカいの持ってるんだ?」
「これが私の愛銃よ」
「じゃあ、あのヘリ吹っ飛ばしたのは」
「そう私よ」
怖い、怖過ぎるだろ、人は見かけによらないとか言うけど、それ割とマジだと思うぜ。今、俺がそれを実感している。
まさか、ただの美形女子だと思っていた同級生が、まさかヘリ吹き飛ばすようなクレイジーな奴だったとは驚きだ。
「ソウスケはそうやってすぐ顔に出るんだから、驚きすぎよ」
「驚きすぎってことはないだろ、だってDenel NTW-20だぜ。そうそう持ち歩かないぞ、一人でしかも女子」
現に身軽そうな女子であるリアが背負っていること自体信じられないくらいだ。
「そうかな? みんなライトマシンガン担いでるじゃん! それと同じよ」
「いや、違うだろ」
あんまり無駄話もしていられないのでバイザーを閉じて、アクセル全開で校舎の方を通り迂回する。
校舎近くには風紀委員などが先導して生徒を避難させている。
俺とリアはこのままニルのいる車両庫近くまで走った。




