Simultaneous Incidents(6)
~Ophelia Side~
私はスマホから生徒会長直通の電話をかける。
『もしもし』
「椎名会長、オフェリアです」
『バルザックさんか、どうしたの?』
「リリスと東條さんの居場所が分かりました!!」
『それは本当か!?』
「でも、このままじゃ、リリスが……」
『――――落ち着け、オフェリア!! 今、どこにいる?』
気が動転している私に一喝する会長さんは至って冷静に返してくる。
「えっと……、校門前、――――校門前の草むらです!!」
『わかった、今行く』
「救護班、救護班が必要です、そうじゃないとリリスが!!」
『了解した』
電話切れると直ぐ目の前の現実が見えて来る。
「あ、り、が、とう、リア……」
「もう喋らないで!!」
「それに、イリ、ス……」
「?」
イリスは首を傾げる。
「あな、たが、いな、ければ……、手、おく、れに、なる。とこ、ろ、だった」
「兄さんを行かせたことですか?」
リリスが静かに頷く。
「ならば感謝される理由がありません。私はただ、兄さんが行くべき道がはっきりしているにも関わらず迷っていましたので、マスターを正すのもまた従者の仕事ですから」
最近生まれたのは思えないほどにしっかりとした考えを持っていることに驚きつつも、リリスがソウスケのことを考えていることがわかって、少しずつ人間としての感性を身に着けているのだと実感する。
「今応急処置をするわ」
「手伝います、リアさん」
「お願いするわ」
私たちはダネルが入っているライフルケースの中から小型の救急キットを取り出し、脇の一番大きな傷を止血するために包帯を取り出す。
イリスはリリスの体勢少し変えて支える。
イリスも外套裏のポケットから小さな包帯で頭の傷を止血する。
この時には既にリリスの意識はなく、私たちに寄り掛かった状態になる。
ただ、この出血量であれば、失血の危険性は低い。
「――――遅くなったわ!!」
それから少しして会長と救護科の三年生が数人やって来る。
「会長!!」
私は少しだけほっとして涙が出てしまった。
「気を緩めのはまだ早いですよ」
「……イリス」
リリスのことは救護科に任せたイリスは鋭い瞳のままで東條さんの刀を拾いに行く。
そうだ、まだ東條さんが危ない。
「会長、これはかなり危ない状況です。救急車の手配が必要かと」
「そんなにか?」
「はい、応急処置で出血は収まりつつありますが、早い輸血が必要です」
担架に乗られたリリスは静かに眠っている。
救護科の面々は至って冷静に対応しているが、差し迫った危機があるようだ。
「――――誰だ!?」
突然、会長が大声を出したその瞬間、校舎の屋上からこちらに向かって飛び降りて来る人影が太陽と重なって見えなくなり、リリスが背にしていた樹木の上に飛び移り、担架の直ぐ近くに着地する。
その姿はよく知っている人だった。
「ユークリッドさん!?」
「002(ゼロゼロツー)がなんのようだ?」
会長はまるで敵での現れたかのような険しい表情で睨む。002(ゼロゼロツー)と呼んでいるあたりにかなりの敵意を感じる。
「敵対するつもりはないわ」
そう言ってスカートの裏からバタフライナイフを取り出して右手で握る。
「――――何をする気だ!?」
会長がユークリッドさんを止めようとしたが、ユークリッドさんは左手の人差し指の先端にナイフの刃の先端を押し付けてわずかに刺さる。
「信用が無さ過ぎるのも考えものね」
ユークリッドさんは自分で傷つけた指先から垂れるのは赤い血液ではなかった。
「金色!?」
そう、黄金の血液が滴り落ちる。
黄金の血液を一滴、わずかに開いていたリリスの口に入る。
「何をした?」
「いずれ分かるわ」
「待て、002(ゼロゼロツー)!!」
ユークリッドさんは直ぐに飛び立ち、校舎を囲う塀の上まで軽々とジャンプする。
「待たないわ、……東條羽朱明、彼女を助ける役目はあなたたちに任せるからね」
「なんでそのことを!?」
ユークリッドさんがどこかで聞き耳を立てていたのだろうか。彼女の前で東條さんのことは一切話していない。それに東條さんがどうなっているかは私たちでも把握していないというのに……。
「――――イリス!!」
「――――!! 何ですかユー?」
イリスは名前を呼ばれてビクッとなる。それよりも彼女のことをユーと呼んでいることに疑問が浮かぶ。いつの間にそんなに仲良くなったのだろうか?
「イリス、東條羽朱明を頼むわね」
「言われなくても、そのつもりです」
イリスは真剣な瞳で静かに言う。
「ならいいわ、それじゃあね」
そう言い残しどこかへ飛び去った。
それから直ぐにリリスの容態が安定し、出血が完全に収まったのだ。




