Sports Festival ~Second Day~(8)
「イリス、大丈夫だった?」
リアが真っ先に駆け寄る。それに続き東條もやってきた。
「ええ、軽い捻挫程度なので問題ありあせん」
「それは良かったわ」
「それで、随分と早いな。もう試合終わったのか?」
「ええ、そうよ、相手が弱すぎてすぐに決着ついてしまったわ」
流石は東條というか、それにしても滅茶苦茶強いな。
「そんなにいい試合だったら、是非とも見たかったなぁ」
「それなら問題ないわ」
「?」
俺はよく意味が分からず首を傾げる。
「何、その顔?」
「……ああ」
そういうことか三回戦に勝ったのだから次があるってことか。
「ようやくわかったみたいね。私たち後三十分後に決勝があるわ。だからその時に私たちの強さを見せてあげるわ」
「ああ、期待しているよ」
そんな自信満々の東條とは裏腹に「まあ、頑張るけどね」とリアは少し自信なさげだ。
「バスケは結局どうなったんだ?」
そこも重要な部分だ。確か、点数的には勝っていたはずだが……。
「第三回戦は勝利よ。ただ、準々決勝は辞退したわ」
「そうか、やっぱり人数か?」
「いいえ、そこではないわ。イリスのせいではないといか、あの長谷川とか言う頭の悪い、スポーツマンシップのスの字も理解していない奴が悪いんだから。テニスの試合と被るのよね」
「なるほど、それでテニスを取ったってことか」
「ええ、バスケの次の相手も上級生よ。だからイリスとニルさんをチェンジして戦ったとしても勝率は低いわ。だったら確実にテニスの方が勝率は高いわ」
東條の意見はもっともな話だ。ただでさえギリギリの戦力だったところにイリスとニルを変えれば人数的にはレギュレーションを満たすだろうが、実質的な人数は四人ということになる。それに前の相手よりも弱いということはないだろうと考えると、勝率はゼロに近い。既に前の試合でもギリギリ負けそうな雰囲気ではあったしな。
「それは適格な判断だな。ということは俺たちと当たる予定だった奴らは不戦勝って訳か」
「そうね、どちらにしても向こうの方が勝率は高かった訳だしね」
東條は不戦敗で怒ってなくて一安心する。
「その顔は、私が怒ってなくてホッとしているわね?」
「何でわかった!?」
そんなに分かりやすかったか?
「ソウスケって意外と顔に出るしね」
「それは初耳だ」
「安心しなさい、そんなことで私が怒ったりしないわ。それでイリスが抜けた穴なんだけど」
「私が走ろうかと思ったんだけど……、結局うーちゃんが走ることになったわ」
ニルが申し訳なさそうに言う。
「ちょっと、私まだそのあだ名認めてないんだからね」
「まあまあ、それじゃあ東條が三回は走るってことか?」
「そうなるわね」
詳しい配分は東條が一走目、五走目それと九走目に走り、三走目にアイリス、七走目にリア、偶数周は俺ということになったようだ。バランスは取れているが、果たして俺の体力が持つのか今から心配ではあるが言った以上はやるしかない。
「そろそろ会場に移動しようかしら?」
「そうね」
最後の方が人数は絞られるので試合の間隔が短くなる。
東條は余裕そうだが、リアがちょっと不安そうにしている。
「大丈夫よ、ミスしてもカバーしてあげるから」
「あはは、ミスしないように頑張るよ」
リアは思わず苦笑いだ。
一緒に組むのは相当なプレッシャーだろう。戦闘では良いパートナーとなるかもしれないが、こういうことでは組みたくはない。
今の所、自分を責めるが、相手は責めず。スポーツマンらしい性格だ。
決勝戦の相手は三年生研究科の人らしい。話によれば前年度の優勝ペアだそうだ。二年連続で優勝を狙っているようでかなりの強豪だ。
外に出ると日差しは強く、かなりの晴天だ。
テニスコートには既に大勢の観客で賑わっており、その人混みをかき分けてテニスコートに入る。
相手チームはコートの端の方でアップをしている。
「それじゃあ行きましょうか!!」
リアと東條がコートに入る。