Sports Festival ~Second Day~(5)
後半戦も残り三分を切ったところだ。
イリスは相変わらずの素早さで相手のディフェンスを躱していく。やはり体が小さいおかげで相手もファウルを警戒してかボールを奪いに行けない。そのままレイアップでシュートを決める。
二年守護科20-25四年工学科
これでもかなり追い上げたが、相手の攻撃を止めなければ勝つことは難しい。
やはり、アイリスが抜かれるが、ニルがシュートを妨害したため、右サイドにパスを出し、俺の方へ向かってくる。
ようはジャンプのタイミングが重要なのだ。身長差がこれでカバーできるかどうかはわからないが、やるしかない。
相手の動きをよく見るんだ。銃弾の弾道を見切るよりよほど簡単じゃないか。
予備動作から動きを読む。
相手のジャンプするタイミングに合わせて飛び上がる。
シュートした瞬間のボールに手が触れる。
そのままボールを押し上げる。
「ニル!!」
「オッケー!!」
弾いたボールをニルがキャッチし攻撃を仕掛けるが、相手に二人がかりでブロックされるのを見越したのかセンターライン超えたあたりでイリスにパスをする。
左サイドから攻めるイリスは小柄な体を活かして再び攻撃を仕掛ける。
ディフェンスを抜き、そのままシュートをするが、そこにもう一人が防ごうと立ちふさがる、更にボールを取りに来ていたセンターにいた奴がボール奪おうと横から入ってくる。
あれはやばいな。
瞬間的に理解する。普通に同じ体格同士での衝突であるならば、大したことない接触だろうが、おそらく体重差は二倍以上ある。その衝撃はかなりのものになるだろう。
俺はイリスへ向かって走るが間に合わない。
よく見えなかったが腕が当たったのだろう。
イリスがシュートしたボールはそのまま吸い込まれるようにゴールに入り、会場が再び沸き立つ。
二年守護科26-25四年工学科
しかし、イリスがその後、突き飛ばされたことで、更に会場が騒然となる。
審判の生徒がホイッスルを吹き、試合を中断させる。
イリスの体はそれくらいのことで宙に浮いてしまうくらいには軽いのだ。
「――――ファウル!!」
イリスがボールから手を放し、体育館を惰性で転がる。
「大丈夫か?」
駆け寄りイリスを抱きかかえる。
「……問題ありません」
「そんな訳あるか!!」
腕には衝突したであろう跡が赤くなっている。
アイリスとリア、それにニルが駆け寄り心配してくれている。
ただ、相手の選手は悪びれもせずに試合を早く再開しろと審判からの注意の大して聞かずに言っている。
この屑野郎をこのままにしておいては俺が俺を許せない。
「ニルとりあえずベンチに休ませてやってくれ」
「兄さん、まだ……」
「イリスもわかったな」
「……」
不満があるのか何も喋らない。
「とりあえずベンチに移動しましょう」
ニルがイリスを抱えてベンチまで移動する。
アイリスも一緒に付き添う。
イリスのことは二人に任せておいて大丈夫だろう。
まだやれると最後までそう言いたそうな顔をしていたが、それは今後のことも考えると止めておいた方が良いだろう。それに一メートル以上飛ばされているのだから、怪我の状態を見てもらうべきだ。
それにしてもあいつは全くこちらを向く気配も他の奴らに謝りに来る様子もなく。フィールドの他の連中を一人ずつ睨むが、一人は目を背け、それ以外の三人は悪びれもしないような顔でこちらを見返していた。
ベンチにいる奴は全員関係ないと言わんばかりに目を逸らす。
「……おい」
俺はイリスを突き飛ばした長身の男子生徒に近づく。
「何だ、てめぇ?」
審判と話すのを止め、こちらを振り向く。
「さっきからふざけたことばかり言いやがって、審判に抗議するのも結構だが、まずはお前が頭を下げる先だろうが!!」
俺は上だろうが下だろうが関係ない。言いたいことは言うそれだけだ。