Sports Festival ~Second Day~(4)
ベンチではニルが配っているスポーツドリンクをもらい水分を少し補給する。
「このままではダメね」
「それは俺も思っていたところだ。なるべく点差をはなされないようにしなければいけないだろう」
相手の攻撃を何とか防げればいいのだが……。
「ごめんね、全然ディフェンスになってなくて」
「いや、仕方ないさ。身長差がかなりあるからな」
アイリスは相変わらず申し訳なさそうにしている。
「じゃあさ、私がディフェンス、アイリスがオフェンスってのはどうかな?」
「身長的にもリアの方が有利ではあるが……」
「それでいきましょう」
東條が即決する。
「アイリスはダメだと思ったら直ぐに私かイリスにパスすればいいわ。得点は何としても私がするからディフェンスの二人には頑張ってほしいわ」
「オーケー羽珠明、まかせなさい!!」
リアが親指を立てる。
「それじゃあそろそろ配置につくわよ」
「了解だ」
相手は三人チェンジで体力的にも不利な状況となった。
再び、試合開始のホイッスルがなる。
そしてこれも再びのジャンプボール、身長だけが全てはない、タイミングも重要であることを俺は知った。
宙に上がるボール、ジャンプは最適なタイミングで最大の力で飛ぶこと。
まず、相手よりも早く飛ぶことだろう。それにおいて自分が最大の高さのタイミングでボールが来るようにする必要があるが、弾道計算に比べれば大したことはないだろう。
お互いにジャンプしボールを死守しにいく。
さっきよりは断然良い。
手がボールに届く。
お互いにボール越しでの押し合いのようなものになる。
この力のベクトル的に東條側に落とすのは無理だ。
「イリス!!」
「――――了解です、兄さん」
お互いに譲らない力の衝突により手から離れたボールは左サイド浮き上がる。それをキャッチするために相手はボールに向かって走り出すが、イリスは俺に向かって突進してくる。何となくだがやりたいことは分かった。
イリスは着地した俺の膝から肩へ瞬時に飛び移り、誰も出せない高さでジャンプしボールを奪い去る。厳密なルールではダメかもしれないけれど、審判は何も言わない。
あまりに奇抜な方法に相手は唖然とし、時間が一瞬止まる。
その隙にイリスがドリブルで前進する。俺もゴール前まで走る。
そしてイリスから貰ったパスでそのままシュートを決める。
二年守護科12-22四年工学科
「何だありゃ!?」
相手が驚いているのと同じくらい俺たちも驚いている。
逆転とは行かなかったが点差を詰めることはできた。
「やるな、イリス」
頭をポンと手を置く。
「これくらいは普通です」
表情には現れなかったが、少し喜んでいるような気がした。あれは体重の軽いイリスだからできた芸当だろう。
相手はそれを見て焦っている様子も見られる。
次は相手のターンだ。
これを防げるかにかかかっているが、リアをディフェンスにしたのが功を奏した。
リアは相手の動きをよく読み、シュートをブロックし、落ちたボールを俺がキャッチし、そのまま東條へパスする。
そしてさっきのイリスの活躍を見て火が付いたのか。さっきまでよりも高速なドリブルでディフェンスを躱しシュートを決める。
二年守護科16-22四年工学科
ついに逆転し勝ちが少しだけ見えて来るが、リアを警戒した相手のスリーポイントシュートが奇跡的に入る。
二年守護科16-22四年工学科
更にアイリスがパスしたボールが相手に取られてしまい、更にスリーポイントシュートで相手が優勢となってしまう。
二年守護科16-25四年工学科
「ごめんさい」
「気にするな、取り返すぞ」
「そうよ、私たちが取り返すせばいいだけなんだから」
「………」
イリスも静かに頷く。
今度はこちらのボールだ。
やはり、前回の試合のように東條を完全にブロックするような動きになって来ている。
まあ、そうなるだろうな。
俺は東條へのパスを諦め、イリスへとパスを出す。