Sports Festival ~Second Day~(3)
会場は既に熱気で溢れており、観客数はキャパシティーオーバーではないかというくらい集まっている。
「随分集まってるが、まさか、俺たちの試合を見に来た訳じゃないよな?」
「残念ながら、たぶんだけど、うちらの試合を見に来たんだと思うよ。だって、期待の新人みたいな感じになってるじゃん」
「言わんとしていることは何となくわかるが、それにしても凄いな」
バレーボール側はまだ試合中だが、バスケの方は到着したときには試合が終わっており、コートに人はいない。反対サイドにも相手チームが到着しているが、やはり男子が圧倒的に多い。
「あれに勝てるのか!?」
身長百八十前後の男子が八人と女子が二人、ただ女子は選手というよりはビブスを着ていないのでマネージャーっぽいポジションだと予想できる。
「体格が全然違うね」
アイリスの言う通りだ。俺よりも身長が高く、かつ筋肉量を段違いだ。バスケ部の人かは分からないが、少なくとも運動部の人だろう。ただ、四年工学科ということで部活は既に引退しているので現役ではないとは思いたい。
「二回戦の相手とは比べものにならないな」
「でも諦めていけないわ。大事なのは気の持ちようよ!!」
「そうは言ってもなぁ」
東條は根性論が好きなのか、気持ちで負けていていけないのは分かるが、これは厳しい戦いになるだろう。
少なくともみんなまだやる気が失っていない。やれるだけのことをやるだけだ。
「おまたせ」
「早かったな」
大きなクーラーバックを持ってベンチの横に置いた。
「これくらいしかできないからね」
「マネージャーは必要だ。これで十分だよ」
「フォローありがとう」
少しだけ笑顔になる。
「――――それでは第三試合を始めます!!」
どうやら時間のようだ。
ポジションは前回の最終編成と同じで、バスケの詳しいことは分からないので、中央にリア、右前が東條、右後がアイリス、左前がイリス、左後が俺という布陣になる。
ただし、ジャンプボールだけは俺がやる。身長的に一番高いのが俺という単純な理由だ。
両者共にポジションにつく。やはり、相手は五人共長身の男子生徒だ。
試合開始のホイッスルが鳴り、ボールが宙に上がる。
俺は全力でジャンプしボールを保持すべく頑張るが、相手の方が身長が高いだけではなく、ジャンプのタイミングも上手い。
俺はボールに掠ることすらもできなかった。
「……ちっ」
小さく舌打ちをする。相手は余裕の笑みを見せる。
俺は少し後退し、東條が前に出るが、それよりも動きが早い。
相手はイリスの方へと突き進む。
やはり、相手の考えることは一緒か。身長の一番低いイリスの頭上をボールが難なく通過する。
俺はイリスの後でディフェンスするが、ボールさばきが上手い。相手は一歩下がり右サイドにパスを出しそのままシュートする。
二年守護科0-2四年工学科
俺はボールを手にイリス、ニル、東條を見る。
東條から強いアイコンタクトを感じ、パスを出す。
ボールを受け取ると右サイドのラインギリギリを高速ドリブルで攻めるが、東條が強いことはもう皆知っているようで、相手は二人でマークしているせいで、センターラインを超えたあたりで身動きが取れなくなる。
少し前に出ていた俺にパスを戻す。
そのまま左サイドのイリスにパスを出す。イリスがドリブルでセンターラインを超える。
東條が逆サイドで動きまわりパスを待っている。
イリスがそのままディフェンスを躱しシュートする。
二年守護科4-2四年工学科
その瞬間、歓声があがる。
「やるわね」
東條がイリスとハイタッチする。
一気に逆転するが、相手の攻撃を防ぐことができない。
相手ボールになると、アイリスと俺でディフェンスするが、止められない。
こちらの攻撃が防がれると相手に点数が入る状況がしばらく続く。
二年守護科4-22四年工学科
数分にかなり点差をつけられてしまう。
それでイライラしているのは東條だが、ディフェンスに何か言ってくる様子はない。
再び、東條にパスを出す。今度は中央から高速ドリブルで一人抜き去り、更に左サイドからスリーポイントシュートを決める。
二年守護科10-22四年工学科
やはり観客は俺たち、いや俺以外の女子目当てというべきだろう。
再び大きな歓声が上がる。
ただ。東條の表情は硬い。
前半戦終了のホイッスルが鳴り、一旦小休止に入る。