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GENERATION☆DESTRUCTION!!  作者: Yuki乃
EP19 Car Chase on the Highway
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Car Chase on the Highway(8)

 月代の制服に特徴的な赤いマフラーで口元を隠しており、真紅の瞳と目が合う。

 まさかユークリッドが応援に駆けつけるとは……。

 あまりに予想外の味方に驚く。守護科の授業に出ないでこんなところにいるとは誰も思うまい。

 ただ彼女は正真正銘の守護科所属であるとするならば、LEGENDあるいは学園からの指令で動いているということも十分考えられる。そうなれば単位も保障されているだろうし、授業に出る必要は無い。

 彼女はそのスピードを維持したまま俺たちの後方に付き服の袖から何かを車に向けて射出した。

 車にはカンという金属音が一回響いただけだ。

「ちょっと、あの女、何か当てて来なかった?」

 それに気づいたニルが少し怒り口調でそう言う。

 サイドミラー越しに確認すると彼女はもう走ってはいないが車に追従するような動きを見せている。

「なるほど」

 よく見えないが恐らくリアスポイラーにワイヤーアンカーを巻き付けて、靴の裏に仕込んであったローラーを使って、まるでローラースケートのように地面を滑っているのだろう。

「何なのあの子、リアスポ、傷ついたり、取れたりしたらどうするのよ!!」

「それの話は後だ。追いかけるぞ」

「もしそんなことになったら弁償だからね!!」

 何だかんだ言いつつも追いかける。次第に住宅街となるがフェラーリが止まる様子はない。札幌市内ではあるが俺の予想の数倍は早く移動しており信号をうまくかわしているのが分かる。

 住宅街を抜けると少し開けた場所に工場が立ち並ぶ工業団地に入る。道幅こそ広くはないが両側に立ち並ぶ工場のトラックなどが荷卸し場となっており窮屈さは感じない。その中の一つの工場の知識内にフェラーリは入ってゆく。

「ニル、車を止めろ。ここからは徒歩で行く」

 工場数百メートル手前、86が減速する。それと同タイミングで工場からハマーH1が出てくるのが見える。

「――――やっば!!」

 ニルは急ブレーキですぐ横のトラックの荷卸し場でドリフトしながら右に九十度回転し停車する。ユークリッドは急ブレーキのタイミングでワイヤーアンカーを袖に戻してそのまま慣性を利用したジャンプで86の頭を超えて横に道端に逸れるのを横目に見ながら、86から貰った初速を維持したままで走りながらこちらへ向かって来るハマーH1に向かって突進する。

「急いで!!」

「安全なところまで逃げろ。後は俺らがやる」

「わかったわ。気をつけて」

「了解だ」

 俺とイリスを降ろすと86はケツを振りながらもの凄い加速で来た道を戻って行く。

 まさに脱兎の如くとはこのことだろう。一歩判断を間違えればハマーH1にスクラップにされていたかもしれない状況だ。まるでニルの彼氏のごとく愛している86を傷つけたくなかったのだろう。

 ニルを見送る暇も無くユークリッドを追いかける。

 ハマーH1はユークリッド目掛けて加速している。

 あのまま轢き殺すつもりだろうか。

 ただ彼女に俺たちの援護は必要ないだろう。

 ユークリッドは無言のままハマーH1と衝突する寸前で右に避ける。

 俺はその瞬間そのままこっちに来るんじゃないかと焦ってイリスを見たが、彼女は左手から光の矢のようなものを放ちハマーH1の側面に衝突させると、左タイヤが浮き上がりそのまま横転して道路を滑り少し離れた荷卸し場のコンクリートでできた基礎にルーフを押しつぶされる形で衝突し止る。

 俺はてっきり大胆な攻撃で正面から吹き飛ばすのか思ったが、彼女は最小限の力でハマーH1を無力化する。

 パワーでゴリ押したりしないのが真の強さというものなのかもしれない。

 俺たちも早く追いつきたいところなのだが彼女があまりにも早すぎて差は開くばかりでまだ三十メートルは離れている。先に工場の入口に着いた彼女が中へと正面から突撃しようとした時だった。

 ――――――――――――ドォォォォォ――――――――ン!!!!!!

 突如、周辺の空気を振動させる重低音が響き渡り炸裂した弾頭から放たれる黒煙と爆風が立ち込める。弾頭は道路挟んだ向かいの工場の側壁を破壊する。

「――――ユークリッド!!」

 叫ぶ俺の声は爆発音にかき消される。

 晴れる黒煙の先に彼女の姿は無い。

 弾頭が命中したのか、爆風で飛ばされたのかは分からない。ただあんな攻撃を受けて生存できる人間はこの世に存在しないだろう。

 完全に晴れた先には血の一滴すら残っていない。

 そしてその元凶であろうものがカタカタとキャタピラでアスファルトを歪ませながら工場から出てくる。

 態々誘い出されるようなことをしたのはこっちだが、この状況では本当に死ぬかもしれない。

 砲塔を旋回させながら出てくるのは勿論戦車だ。円形を意識した曲面的な形状をした砲塔に車体には傾斜装甲が採用されている。

「七四式戦車ですね」

「特徴的な暗視装置は外されているけどな」

「兄さん、あれは後付けのものですよ」

 そんな暢気な会話をしている場合ではない。

「すでに装填は完了しているはずです。私が防ぎます」

「頼む」

 ただ防いだ後のことはまだ何も考えていない。イリスの能力を連発すれば攻撃は防げるがどう見積もっても弾薬が尽きる前にイリスの方が先に倒れるだろう。

 ただ現状の装備で七四式戦車の装甲を貫通可能ものはない。

 今のところ楯はあるが矛はない。ただ戦車は歩兵が居てこそ力を発揮できるものなのだ。つまり接近してしまえば向こうからは攻撃することは出来ない。

 ならばこのままイリスの能力で楯を作りながら突撃あるのみだ。

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