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GENERATION☆DESTRUCTION!!  作者: Yuki乃
EP18 End of Silent Night
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End of Silent Night(9)

「呆れた」

 少し発光したような金髪ロングで口元を赤いマフラーで隠している女がそう言った。

「あなた、屋上の……」

「ユークリッド」

「そう、ユークリッド。あなた、何しに来たのかしら?」

「まだ強がってるのね。そんな怪我をしてるのに能力も業も使わない何て……、馬鹿としか言い様が無いわ」

「煩い、何も分かっていないのに好き放題言うんじゃないわよ。部外者の分際で……」

 その時寮の目の前から射線を感じて冷や汗が出る。

 この女のことに気を取られており、外を監視していなかった。

 男が三人、寮の玄関を破壊する勢いで突進してくるのが見える。

 私は急いで抜刀体勢を取ろうとしたが左足で玄関の床をグリップする力も無く痛みと共に膝をついてしまう。

「そこでゆっくりしていなさい」

 ユークリッドは下駄箱から降りて、右手を三人の男たちへ手を翳す。

 その瞬間、まばゆい光と共に玄関のガラスを透き通るように貫通する光の矢が三本放たれ男の心臓を的確に突いたのだ。

 だがガラスは勿論割れてはいない。

 男たちからは血が溢れる訳でなく、その辺に落ちている石ころのように玄関の前に矢が刺さった状態で転がったのだ。

 気づけば私はその光景に圧倒されて尻餅をついており、その姿に恥じた。

「言葉も出ないか?」

「……惨めな私を馬鹿にしに来たのかしら」

「そんな訳ないでしょ。頑固なあなたに手を差し伸べるべくここにいるわ」

 頑固なのはわかっているけど、一度決めたら引けないのが私だわ。

「左足を酷使し過ぎだわ。あなたは軽い捻挫程度だと思っているだろうけれど、ダメージの蓄積によってかなり悪化しているわ」

「そんなこと、言われなくてもわかっているわ」

 あまりの激痛にもう左足で立っていることは出来ない。でも帰らなければならない。これ以上は時間をかけていられない。クライアントに心配をかけるのは持っての外だわ。

「そのままで帰るつもりか?」

 ゆっくりと壁伝いに歩き出す私にそう問いかける。

「当たり前でしょ」

 そう返すと彼女はため息をついて立ち上がる。

「東條、そこに座りなさい」

 彼女は自分が座っていた場所を指差すが私が無視して玄関の扉の方へと向かう。

「その足ではどの道アパートまでは戻れないわ。私の言うことを聞きなさい。お座りよ」

「私は犬ではないのだけれど……」

 少しイラつきながらも彼女の言っていることは事実で渋々彼女の言うことを聞いた。

「よく出来ました。靴脱がすわね」

「ちょっと何するつもり?」

「煩い、少し黙りなさい」

 彼女は問答無用で靴を脱がし患部を右手で優しく握った。

「少し痛むわ」

 彼女の手の平から無数の光が漏れ始める。

「――――んっ」

 私も口からも声が漏れる。

 痛いというよりも擽られているような感触でムズムズする。

 だがそれも一瞬の出来事で光が消失すると靴を丁寧に履かせてくれた。

「どうかしら?」

「……嘘でしょ?」

 さっきまで感じていた痛みから解放されまだ本調子ではないものの、軽い運動程度ならば支障がないくらいには回復している。

 私は即座に立ち上がり軽く足踏みをする。

「治ってる!?」

「それは良かったわ」

 ただそれと引き換えに体が火照っているがわかる。急速に回復を促進させた影響だろうか。

「あなた一体何者なの?」

 まず能力が何なのか、それから既に疑問に思う。

「そうね、私は『能力者の成れの果て』とでも言うべきかしら?」

「能力者の成れの果て」

「そう、能力を最大限まで高めた時、行き着く先は皆同じ、それがZEROの証」

「……まさか、あなた能力の理論上限に達しているとでも言うの?」

「流石だわ、東條。正解だ。能力者が行き着く先は三つだけ、私はその一つ」

「――――Type ZERO Plus Limit」

「もうリミッドをオーバーしているかもね」

「でもマイナスと相殺すればいいだけだわ。誰かいなかったの?」

「今まで居たことが無さそうなあなたに言われるのは心外だけれど、居たわ」

「過去形なのね」

「そう、彼が帰ってくるか、私が死ぬか、良い勝負だわ」

 諦めているような言動だが、彼女は決して諦めていない。それは傍にいて自ずと伝わる。

「私の人格が終わりを迎えたときはあなたが留めを刺してくるかしら?」

「その前にどうにかして欲しいものね」

「全くだわ。でもその鍵を握るのはあなたたち、だから東條、必ずや彼らを守って見せなさい」

「当たり前の事を言わないでくれるかしら? 護衛の役割はクライアントを命に代えても守ること、それだけよ」

「それなら早く行きなさい。クライアントが心配しているわ」

「言われなくても分かっているわ」

 私は軽い足取りで玄関を出る。そして一瞬だけ振り返った。

「ユークリッド、助けてくれて感謝するわ」

 私は火照る体を夜風で冷やすように軽く走りながらクライアントの元へと向かったのだった。

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