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GENERATION☆DESTRUCTION!!  作者: Yuki乃
EP18 End of Silent Night
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End of Silent Night(3)

「私も肩貸すわ」

 リアが東條の右側で支える。

 その後ろからニルとイリスとアイリスが並んで付いて来る。

「病院に行くなら車だすわよ?」

 ニルが少し笑いながら茶化す。

「あなた、私に負けた癖に馬鹿しないで頂戴、そんな必要ないわ」

 保健室の扉には外出中となっており中には誰もいない。

 ベッドの上に強引に座らせ靴とニーソックスを脱がせた。

 脱がせる前から少しニーソックスに血が滲んでいたので分かっていたが足の甲に一センチほどの切り傷がある。既に出血は治まってきているが消毒しておいた方がいいだろう。

「救急箱有ったよ」

 リアがベッド近くの棚においてあった木製の救急箱を持ってくる。

「サンキュー」

 俺は消毒液を脱脂綿につけて東條の足をスッと持上げる。

「え!? 小宇坂くんがやるの?」

「何今更驚いてんだ?」

「だっておかしいじゃない」

「そんなことよりもう少し足上げるからスカート押さえろよ」

「い、言われなくても分かってるわ」

 突然弱気になられても調子が狂う。

 俺は赤ちゃんの肌をタオルで拭くように優しく傷口に脱脂綿を当てる。

「痛っ、もっと優しくして欲しいわ」

「ならニルにでも代わってもらうか? もっと痛いと思うぜ」

「ちょっと私を引き合いに出さないでよ」

 頬を膨らませながら言う。

 否定しないことからも分かる通り、自身でも自覚しているくらいガサツなのだ。しかし例外はある。それは車だ。ニルは車の事に関してだけはとても慎重かつ正確なのである。

 それからも脱脂綿が傷口に触れるたびに少し涙目になりながらビクビクするので少し楽しくなってしまったが、あまりやり過ぎると後が怖いので遊ぶのは少しだけにしておこう。

 傷口に絆創膏を張って今度は少し青くなっている足首にシップを張る。そしてその上から包帯を巻く。

「あなた、男なのに包帯も巻けるのね」

「ソウスケはこういう時だけ無駄に器用だからね」

 リアよ、無駄は余計だ。

「東條は俺が元国際科出身だって知らないのか?」

「前情報で知っているけど、それと関係あるの?」

 どうやら科のことはあまり知らないようだ。

「国際科は非戦闘系の学科なのは知っていると思うが、それだけに予備役としての配備は救護か後方支援部隊の配属だからこういうことも授業である程度は習っているんだよ」

「あなたが後方支援何て私は考えられないけど」

「結局、向こうで後方支援部隊に配備されたことはなかったけどな」

 包帯を巻き終わり、東條の足をそっとベッドに置いて俺はゆっくりと立ち上がる。

「これで東條さんは大丈夫そうですね」

「別に治療何ていりませんでしたけどね」

「僕はこれで教員室に戻ります」

「先生、授業の続きはどうするんですか?」

 リアが「はい!!」と手を挙げる。

「午後の授業は全員出席ということで今日の講義は終了とします」

 随分適当だが先生が良いと言ったのだからそれで良いだろう。

 何だかリアもニルを嬉しそうだし、……せめて先生が帰るまではその表情を隠して欲しいところだ。

「それじゃあ私たちは教室に戻ろうか」

「そうね」

 リアとニルが保健室から出て行く。

「立てるか?」

「当たり前よ」

 俺が手を差し伸べようとしたが、それよりも先に東條は立ち上がる。

「大丈夫よ、問題無いわ」

 左足の感触を確かめるように軽くステップをする。

「包帯で補強はされているが無理はするなよ」

「勿論分かっているわ。私たちも戻りましょう」

 少しぎこちない動きではあったがゆっくりと大講義室まで四人で戻った。

 大講義室では既に帰ろうとしている二人の姿が会ったがそれ止めるような形で扉の前で東條が仁王立ちする。

「せっかく時間が余ったのだから反省会を行いましょう!!」

 その言葉にニルとリアは嫌な顔をする。

「それは明日じゃダメなの?」

「別にいつでもいいけど、放課後残るよりは良いと思わない?」

 明日の放課後残ってやる気だったのか。

 随分と張り切っているようだ。

「放課後は嫌だけど、今日はもうニルとパフェ食べに行くことにしちゃったもん。そうだみんなもこれからスイーツを食べに行かない?」

「オフェリアさん、私は真面目な話をしているわ」

「私だって真面目な話よ。パフェ食べながら反省会すればいいじゃない」

「そんなの絶対ダメに決まっているでしょ」

 リアも東條も一向に引く気配がない。アイリスが横で「まあまあ」と宥めようとするが効果は薄い。

「東條さんも行けばわかるわ。美咲市で屈指の名店なんだってさ」

「そんなことで私の心は揺さぶられないわ」

「そっか、そうだよね。トーキョーにはいっぱい美味しい店があるもんね。でもでっかいパフェが三百円なんだってさ」

「さ、三百円!?」

 あっさり揺さぶられている東條を横目に、俺も確かにそれは安いと思った。……コスパは最高だが後は味だな。

「そう三百円だよ」

「税込み?」

「そうゼイコミだよ」

 リアが「ふふん」とドヤ顔をする。

「でも反省会をしてからでも遅くはないわ」

 東條はもう行く気満々だ。

「いい忘れていたけど、午後二時からの三時まで限定販売らしいわ」

「……」

 ついに東條が黙ってしまった。スイーツ系男子とかではないのでその感覚はあまり理解できないが、女子はこういう甘い物が好きと聞く。東條も同じなのだろう。

 なぜならこの世の終わりみたいな顔で反省会をやるかスイーツを食べに行くか悩んでいる。かなり高飛車な態度を取っていただけに「食べたい」とは絶対に言えないのだろう。

「別にいいんじゃねぇか。反省会なんやる気があればどこでもできるだろ?」

 アイリスとイリスを除く他の面子はやる気なんて微塵も無さそうだが……。

「確かにそうね。場所は関係ないわ」

「それじゃあ今すぐ行きましょう。早く並ばないと入れないわ!!」

 時刻は十三時三十分、リアの雰囲気から察するにどうやら一刻を争うようだ。

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