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GENERATION☆DESTRUCTION!!  作者: Yuki乃
EP18 End of Silent Night
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End of Silent Night(2)

 東條が一歩踏み出すそのスピードは俺の一歩より遥かに速いが、たった一歩それだけで間合いは詰まらない。

 しかしその距離からでは物理的に当たらない。だが東條は抜刀する。

 何をしてくるのかまるで理解できていなかったが反射的に刀での防御姿勢を取る。

 ――――――シュン!!!!

 一陣の風が俺を吹き抜けた瞬間にソードの先端がまるで鋏で紙を切るかの如く意図も簡単に切断され破片は空中を高速回転しやがて俺と東條のちょうど中間の床に無残な姿で突き刺さる。

「私の剣はこんなものよ」

 東條が何をしたのかは何となくではあるが理解できている。だが俺にはどうなっていたのか全く見えなかったのだ。

「やるじゃねぇか」

「こんなものは序の口よ」

 やはり俺と東條の差は歴然でどう頑張ってもこの模擬戦というルールの中で彼女に勝つことは無理だろう。それでもまだやるしかないのか。

 東條はさらにそこから前進し刀を振り上げる。俺は空かさず先端の欠けたソードで防御体勢を取る。さっきの攻撃で無意識に少し後退してしまっていたようで俺はライン際ギリギリだ。後半歩でも下がれば場外となり俺の負けが決定する。だからと言って前に出ても彼女の剣術に適うとは到底思えない。

「これで終わりね」

 東條は余裕の表情で刀を振り下ろす。前進する力を振り下ろす力に変えているのだろう。そして刀の先端は俺の頭上より高い位置で音速を超える。

ただ何かがおかしいと感じる。

 それは直ぐに理解することになる。

 東條と俺との距離が一メートルを切ろうかというところで彼女の体勢が前に傾いたのだ。

「えっ?」

 東條から予想外にも驚いたような声発せられる。

 そして俺は何が起きているかに気づく。ポイントは彼女の足元だ。さっきの攻撃で切断され弾き飛ばされたソードの先端に彼女が躓いたのだ。蹴っ飛ばせば床から抜けそうなものだが、予想以上に深く刺さっていたのだろう。彼女の脚力よりも刃と地面の間の摩擦がそれに勝ったのだ。

 躓いたタイミングで力が抜けたのか彼女の振り上げた刀はすっぽ抜け、俺の頭上を大きく越えて手裏剣のようにクルクルと回転しながらそのまま俺の背後数メートル先の壁に突き刺さる。ただそれだけでは終わらない。普通に躓いたのならばその場で手を着くくらいで膝に擦り傷程度だろうが、彼女は走りながら躓いたのだ。

 空中に浮いた彼女の体を支えるものは何もなく。無慈悲にも俺のソードの先端目掛けて突っ込んでくる。

 このままではまずい。

 俺は咄嗟の判断で持っていたソードを横に投げ捨てる。

 そしてそのまま俺たちが抱き合うように倒れこんだ。

 東條が手で俺の頭を抱きつくように守ったためぶつかることは無かったが、腰が床と衝突して痛みが走る。しかしそれとは真逆に俺の胸部には柔らか感触がしっかりと感じられる。それにはずっしりとした重みがあり着やせしていて気づかなかったが二年守護科でトップクラスだ。しかも彼女の持っている運動エネルギーを全身で受け止めたので彼女とは俺の間の距離は零ミリメートル、彼女と床で板ばさみだ。さらに彼女の全身が俺に押し付けられるような状態にあるが、彼女のそれは主張を止めずギュッと押し付けられ形と感触がはっきりと伝わる。そしてその彼女と俺の間にかかるストレスから逃れようと左右に膨らみ形を自在に変え無邪気に誘惑して来るのだ。

 それに意識が行ってしまうのは男として仕方のないことだろうが、さらにまずいのは彼女の唇が俺の左耳に触れてしまっていることだ。そこから静かに聞こえる吐息に耳を擽られる。そのことに今気づいたのは彼女のそれに完全に意識を持っていかれたことにあるだろう。

 正直に言ってあまりの激痛に叫びそうだが必死に耐える。

「痛っ……、大丈夫、小宇坂くん?」

 そのままの状態で少し顔を上げる。

「お前こそ、大丈夫なのか?」

「私はちょっと足を挫いただけで外傷はないけど」

 確かにあの時左足が思いっきり刃先にあたっていた。その時に打ち負けてひねってしまったようだ。

「俺も背中を打っただけで外傷はない」

「一応保健室に行く?」

「いいや俺は不要だ、それより足挫いたならシップでも貰ってきた方がいいんじゃないか?」

「馬鹿言わないで、模擬戦如きで怪我をしたとなればみんなの笑われ者だわ」

 俺たちはゆっくりと立ち上がり彼女は「ほら大丈夫でしょ?」と言わんばかりに仁王立ちしようと地面に着いて時、左足からバランスを崩したので彼女の左脇に腕を回してしっかりと支える。

「ちょっと、余計なことはしないで欲しいわ」

 少し強い口調だが顔は赤い。

 俺のことを振り払おうとするががっしりと掴んで離さないようにする。

「保健室行くぞ、無理した方が悪化する」

「嫌、絶対嫌!!」

 フィールドの近くで言い合っていると他のみんながやって来る。

「言い合っていても仕方がありませんので二人とも保健室に行きましょう」

 千手院先生が宥めるように言った後先導するように歩き出す。

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