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GENERATION☆DESTRUCTION!!  作者: Yuki乃
EP17 New Semester
149/277

New Semester(7)

 そこから降りて来る黒いスーツを着た数人の男たちが辺りを見回している。誰かを探しているようにも見えるが目的は分からない。

「なんだありゃ?」

「Hummer H1ですね」

 さっきまで無言だったイリスがそう言った。

「わかるのか?」

「Hummer H1は元々アメリカ軍の軍用車です」

 そういえばアメリカ軍基地とか保安局との戦闘でたびたび見かけたような気がする。用途は兵員輸送を主としてルーフに機関銃を搭載して市街地で運用するなど多岐に渡る。

「確かH1は軍用車を民生用にスペックダウンしたモデルであの有名なシュワちゃんのために作られた車なのよ」

「詳しいんだな」

「職業柄と言ったところかしら、あなたは逆に知らなかったの?」

「ああ、俺はこの界隈に入って一年しか経ってないからな、まだ軍人かぶれはしてない」

 言っていて思ったがまだ一年しか経ってないんだな。色々な事がありすぎてもっと経っているかと思っていたが……。

「ふ~ん、でもその内戦うことになれば嫌でも覚えることになるわ」

「あの車、装備は至ってノーマルですが、搭乗者はどれも軍人ですね」

「わかるのか?」

「統合的に判断した結果です」

「私も同意見だわ。何の目的かしら?」

 東條は顎に指を当てるような仕草をする。

「イリスやアイリスを狙っているってのは考えすぎか?」

「考え過ぎということはないわ。私が少し様子を見てくるから、あなたたちはここで待っていて」

 俺たちも揃って降りればイリスも着いて来ることになるため本末転倒だ。ならば大人しくここで様子を見守ることにしよう。

「一人で大丈夫か?」

「当たり前でしょ」

 自信満々で答えて、校内へと戻って行く。階段を凄い勢いで下りたことを確認して姿は見えなくなる。

 俺たちも屋上から奴らの様子を伺う。

 この学園の性質上、どんなイレギュラーなことが起きても驚くことはない。彼らが不審な動きをしているのは事実だが、敵であるという以外にも様々なことが考えられる。

 例えば、どこかの令嬢を迎えに来ただけとか、今日はVIPを学園に招いているとか、俺たちのようにボディーガードを依頼しているなど、例を挙げればきりが無い。

「もし狙いがこっちだったらどうするかね……」

「三体四くらいですので、敵の正体を掴む良い機会かもしれません」

「相手が無能力者なら余裕だろうけど」

 現実はそう上手くは行くまい。

 そろそろ時間的には下に降りている頃だろうが一向に姿が見えない。どこかに隠れて様子を伺っているのだろうか。

 東條が戻って来るまですることがなくなってしまった。

 ユークリッドは相変わらず給水タンクの上で景色を眺めている。ユークリッドと言えば今思い出したが言うべきことがあった。本当はイリスの居ないところで言いたかったが、常に一緒なので仕方が無い。

 給水タンクの方に近づくと話かけるなオーラ全開でこちらを睨んでいる。

「――――ユークリッド!!」

「?」

「少し前だが花咲区でイリスが迷子になった時に付き添ってくれたみたいだな」

「……イリスから聞いたのか?」

 少し驚いたような表情をする。

「そうだ、それにジュースまでご馳走になったそうだしな、一応お礼を言っておこうと思ってな」

「そんなことお前が気にすることでもない。私はただ世間話をしただけだ」

「あんたがそう思ってるなら、それはそれでいいが、お礼くらいは言わせてくれ、ありがとな」

「ふん、まあいい。……一応『どういたしまして』とでも言っておこうか。それよりも二度と迷子にならないようにしっかり見張っていろ。それがお前たちに課せられた使命だと思え」

「ああ、重々承知してる」

「ならいいわ」

 ユークリッドはここで話は終わりだと言わんばかりにそっぽを向いた。

 俺たちは柵越しに様子を見守る。

 しばらくすると何無かったかのようにHummerは去って行き元の風景に戻る。

 それから一拍置いて人ごみの中からこちらを振り返る一人の生徒に目が行く。

 そして視線が合った。

 その時、俺はかなり驚いた。てっきり遠くから、または俺たちのいる場所から死角になる場所から様子を伺っているのか思っていたからだ。しかし東條がいる場所はハマーが停車している場所から数メートル程度しか離れていない校門の真ん前だったからだ。

 距離が離れているとは言え、上から探したにも係わらず見つけることができなかったのだ。ましてやあの特徴的なパープルの髪色だ。

「イリスは気づいていたか?」

「いいえ、彼女の隠蔽能力は高いようです」

「なるほど」

 何らかの能力なのかそれとも単純にスキルが高いのか……。

「能力ではなく技能でしょう。周りの生徒と同じ動作し、校門で待ち合わせをしている風を装ったのかと」

イリスは俺の心を読んだかのような返答する。

「それにしてもわかりそうなものだが」

「この距離ですし分からないのも無理はないでしょう。しかしながら偵察スキルが高いことは証明されましたね」

「そのようだな」

 その後、俺たちも校門で東條と合流しアパートへと帰宅する。

 結局、何者なのかは分からなかった。

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