Transfer Students are GUARDIANS(3)
ニル以外も扉の音に反応し振り返る。
その姿は奇抜で初見であろうリアとアイリスは少し驚く。二人共かなりの警戒感を露にしたが無理もないだろう。
奇抜な点を上げるならば、まず巫女服を着ているところである。それもただの巫女服ではない。上半身で言えば袖の部分が肩のところで切り離されており、それを繋ぐように赤い紐のようなもので結ばれている。スカートはミニで後ろに大きなリボンがついており、そのリボンの紐の部分に日本刀を挿している。
まるで漫画やアニメなど創作の世界で出てくるようなデザインなのだ。それだけに収まらず、鼻の上から額までを隠すように仮面を付けている。そして特徴的に真っ白なロングヘアーだ。その白さは雪ように純白で艶やかである。
そう仮面の少女なのだ。俺は直ぐに東京での出来事を思い出す。
「ホームルームを始めます。席についてください」
あんな格好に似つかわしくない平凡な台詞だ。
「あんたが担任か?」
「相変わらず言葉遣いが悪いですね、小宇坂くん」
「俺の名前、やはり知ってるようだな。東京以来……、いや、三笠の館内振りと言うべきか」
「勿論です。僕はこのクラスの担任ですから」
今思い出したがこの少女は世にも珍しい一人称に僕を使う少女だ。僕っ子は国が保護すべき天然記念物である、出典はもちろん準司だ。
「担任? ということは月宮で教師をやっていたってのは本当だったのか」
「その通りです。そろそろ始めたいのですが」
アイリスとリアは作業を止めて俺たちの後ろの席に座る。小さい教師とやらの声が細く通らないのでニルが気づかずに寝ている。
「それではあらためてホームルームを始めます。最初に僕はこの春からこちらの学園に転任して来ました。千手院有希乃といいます。ここの前はバルザックさん、小宇坂さんと同じ月宮にいました」
少しだけニルの方を見たような気がしたが寝ているのをスルーして話を始める。
教壇に立っても教卓から顔が少し出るくらいでとても小さい。
「僕の担当科目は戦略専攻ですが、基本的にどの科目も教えることができますので、何か質問があれば気軽にしてください」
そうは言っても表情が分からない上に口調も平淡で正直に言って近寄り難い雰囲気だ。
「はい先生、質問いいですか?」
リアが「はいはい」と手を挙げる。
「そういう意味で言ったわけではありませんが、いいでしょう」
「先生は私たちより歳上なんですか?」
それは聞いてはいけないような気がするがリアは無邪気に問いかける。
「バルザックさん、女性に歳の話は禁物ですよ。ただ強いて答えるならば、あなたたちよりは上です」
怒ってはいなさそうだけど、あんまりそういうのは止めておいた方が良いだろう。また変なこと首を突っ込むことになりそうだからだ。
「ソウスケ、歳上だってさ。あんなにちっちゃいのに……。あれかな、準司とかに言わせたらロリババアって奴かな?」
「おい、静かにしてろ」
お互いに小声でやり取りをするが……。
「バルザックさん、聞こえてますよ」
「すいません」
「……話は逸れましたが、僕の自己紹介は以上とします。この後十時から始業式ですが、その前に転入生を紹介したいと思います。入ってきていいですよ」
ガラガラッと勢いよく扉が開き堂々としたステップで入って来る一人の女子生徒がホワイトボードの前、先生の横に立つ。
濃い紫のロングヘアーを靡かせ、パッチリと開いたダークバイオレットの瞳が俺を……いやイリスを見た。
「私の名前は東條羽珠明、今日からあなたのボディーガードよ!!」
大きな声で自身満々にビシッとイリスを指差したのだった。