Overlooking The Night View(4)
あまり遅くなると夕食が遅くなってしまう。家でイリスも待っていること出し、今日はこの辺にするとしようか。
帰って何か作るのも面倒なので駅までの道にあるコンビニで適当に買い物をする。
電車に乗ってからはあっと言う間だった。
学園前駅を出ると誰かに見られたら困るとアイリスも思ったのだろう。
お互いに手をそっと離した。
「見つかったら恥ずかしいもんね」
「ああ、リアとかニルなら間違いなく茶化すだろうな」
大爆笑している姿が目に浮かぶ。そういやニルの車だったけど無事に帰れたのか今更心配になる。
「後少しで新学期だけど、準備は大丈夫?」
「正直に心配は絶えないな。俺は元々国際科だから着いていけるだろうか……」
俺の居た国際科がカリキュラム的には戦闘とは一線引いたような学科だった。だからLEGEND月宮高等学園では比較的に一般科に近かった。それが一転して最前線で戦うエリートを集めたような学科へ転科なのだから不安にもなるだろう。俺自身、決して弱いとは思っていないが、エリートなのかと聞かれれば疑問だ。今までは中級者の中でトップだった訳だが、これからは上級者の中で戦っていくことになる。
「宗助くんは勉強が苦手なの?」
「逆だよ、アイリス。俺は座学の方が得意なんだ。特に語学なら優位に立てる自身がある」
そりゃ語学を専門に学んで来たんだから当然言えばそうだが……。
「でも実践が苦手には見えないけど」
「苦手ではない。でも何か基礎的なことを学んだ訳ではないから、共同作戦となるとボロが出そうでな」
俺のやり方は二単位程度の護身術基礎という選択科目と夏川道場で学んだ経験からなっている。今まで色々と上手くやって来られたのは単独任務やそれに近い任務ばかりをこなしていたからだ。先月の館山二号作戦では集団での行動に慣れずにほぼ単独戦闘のようになってしまい。チームワークの欠片もなかった。
「宗助くん、他人と合わせるのは苦手そうだもんね」
「やっぱりそう見えるか?」
「う~ん……、具体的には言えないけど、そんな感じには見えるかも」
「直した方がいいんだよな~」
「そういうことでも無いと思うよ。私は別に今の宗助くんで良いと思うよ」
アイリスに慰められつつアパートの前に到着してしまう。
学園前からここまでの十分あまりが非常に短く感じる。
ニルのTOYOTA86は駐車されており、無事に帰って来たことを確認する。
「それじゃあここまでだね」
「そうだな」
「また何か護衛することがあればいつでも呼んでね」
「わかった。頼りにしてるよ」
そうは言ったが新学期まで特に出歩く用事もない。次には会うのは教室だろうか。
「それじゃあ、またね」
「ああ、じゃあな」
アイリスに背を向け階段を登ろうとした時だった。
「宗助くん、ちょっと待って!!」
俺は即座に振り返る。
アイリスが駆け寄りポーチから小さな双子のアライグマのキーホルダーが付いた鍵をそっと手渡す。
「これって……」
「私の部屋の鍵だよ。大切にしてね」
「……ああ、大切にするよ。ありがとう」
こんなに早く貰えるとはあまりにも想定外過ぎる。これが伝説のアイテムと言って用だろう合鍵という奴だ。
何だかよく分からないけど涙が出そうなほど嬉しい。
「それじゃあ本当にまたね」
「じゃあ」
アイリスは普通な態度で部屋に戻って行く。
そんな姿を見守りながら震えるような歓喜を必死に抑えていた。