First Session(14)
「『02(ゼロゼロツー)が動きました」
生徒会長の椎名が理事長へ報告する。
「間違いないのだな?」
「はい、転校生と接触したようです」
「詳しい状況はどうなっている?」
椎名はA4ファイルから報告書を出し理事長へ渡す。
「現在解析できている限りのデータです。零粒子(Hi-Particle)の影響かノイズが入っており今も不明箇所については解析中です」
「そうか、それで002(ゼロゼロツー)の意図は掴めたのか?」
「いいえ、接触理由については不明です。判明しているのは転校生に未来視の結果を伝えたことだけです」
「なるほど、その行動に対してどう思う?」
椎名は少し考える。
「他の人間の行動を変えることで自分の未来に何らかの影響を与えようとしているのではないかと」
「私もそう思う。このままいけば002(ゼロゼロツー)は半年と持たないはずだ」
「自然消滅してくれればこちらの手間が減り、損害も少なく済みますね」
「それが一番良いのだが、果たしてこの接触によりどのように結果が変化するかなど誰も想像できまい。まるでバタフライエフェクトのように全く異なる結果になるとも考えうる」
結果とは予測される未来のことを指している。
「そうなる前に早めの対策が肝心であると考えます」
「しかし大規模な作戦を展開するには時間がかかる。幸い向こうはこちらの動きに気づいていない。生徒会には引き続き監視強化をお願いする。それと風紀委員会はいつでも動けるよう春休み中も待機とする」
理事長室の部屋の隅にいた風紀委員長の風間は小さく頷く。
「待機はいつものことだが、奴は俺たちの手には負えない」
「それは承知だ」
「ならばこちらとしては問題ない」
報告を終え二人は理事長室を後にする。
部屋の外では九条が壁によりかかり待っていた。
「それで例の件はまた保留か?」
「お前には関係のない話だ」
風間が吐き捨ててその場を去る。
「連れない奴だな、椎名お前もか?」
「いいや、そんなことはない。協力できるところはするべきだと私は思っている。それで今回の件について知りたいのか?」
「ああ、今まで通りならそれでいい。風紀はもとい生徒会でも手に余るだろうしなあ」
「そうだな。対応については今まで通りだ。案件は事実上保留の状態を継続するようだ」
少し不満げにそう語る。
「そうか、時間と取らせて悪かったな」
「構わない、九条、あんたは非常時のバックアップなのだからな」
そこで会話は途切れ二人をそれぞれ去っていく。