First Session(10)
俺は模造刀一本でフィールドに向かう。
「頑張ってね、宗助君」
「……」
「ありがとう、行ってくる」
アイリスの応援で気合が入る。イリスは何も言わなかったが、視線で何かを伝えようとしていた。
これは負けらない戦いだ。
こちらと同じと相手も同様に模造刀一本である。まあ、二刀流の方が珍しいので普通の装備ということになる。
接近戦の模擬戦では基本的に太刀か日本刀を使用することが多い。
「両者準備はよろしいですね」
「「はい」」
俺は居合の構えをとったのに対して相手は抜刀し垂直に構える。相手はかなり気を張っているように見える。この模擬戦が成績に関わる訳ではないのでそんなに気を張るか?と思うが、俺も別の理由で気を張っているので同じだろうか。
「――――始め!!」
審判の掛け声と共に試合が開始される。
相手は俺の居合抜きを警戒し、接近しつつもこちらのレンジ内には入ろうとしない。
ジリジリと右へ左へと刀を構えたままでこちらの様子を伺って来る。
俺は別にこちらから切り込んでもよかったのだが、最も剣術の型を綺麗に見せるならばこちらの方が得意だからだ。
なぜ、綺麗に型を見せたかったのか、それは勿論、アイリスが見えているからだ。これは絶好のアピールチャンスだ。逃す訳にはいかなない。ただ、相手に不足があるように感じており、全力を出しきれるかはわからない。
先に痺れを切らしたのは相手の方でこちらのレンジに一歩踏み込んで来る。
「――――やぁ!!」
相手は掛け声と共に走りながら踏み込みながら振り下ろして来る。
剣術の型を習得している訳ではなく、基礎的な攻撃だ。
「――――朱雀流守玖型【百日紅】!!」
居合の構えからの抜刀そして相手の剣撃を受け止め、そのまま相手の刀をした側に地面に叩きつける。
一瞬のうちに相手の刀は地面に突き刺さる。
相手の剣の速度が遅かったこともあり綺麗に技が決まる。
ここからはこちらのターンだ。
「朱雀流攻陸型【睡蓮】」
更にその状態からの突きで攻撃する。
相手は刀が抜けないことを察するとバックステップで回避しようとするが間に合わない。それに加えて、隠し持っていたアーミーナイフを取り出し、突きを逸らそうとする。
そんなナイフごときで躱せる突きではないことを教えてやろう。
ナイフによる横からの力は誤差レベルでしかなく、俺の突きを逸らすには不十分だ。
そのまま、俺の突きは相手の腹部に突き刺さろうとする。
「――――そこまで!!」
審判のジャッチで試合は終了する。
突きはギリギリのところで止まり、俺は直ぐに納刀する。
もしも突きが相手の当たってしまったとしても防弾制服により貫通は防ぐことができるので致命傷となることはないが、ハンマーで殴られたような衝撃は受けることになるので無傷とはいかないだろう。一応プロテクターとかも貸し出しているが、装備していない人の方が多い。
俺が試合から戻ると、次は第三フィールドでアイリスの試合があるようだ。
「宗助君、お疲れ様!」
「ああ」
「さすが、宗助君だね!」
「そんなこともないけどな」
「私もそれじゃあ行って来るね」
「怪我しない程度に頑張れよ」
「うん♪」
ニコニコした表情のままフィールドに向かう。
「対戦相手は三年強襲科の武田信行、学科次席ですね」
「次席相手じゃきついか?」
「それはどうでしょうか。アイリスさんは兄さんが思っているほど弱くはないですよ」
イリスが何か知っているのかはわからないが、イリスは余裕の表情だ。
そんなイリスとは裏腹に俺はかなり心配だ。
フィールド上ではお互いに位置に着いた。