First Session(9)
椎名会長がジャッジを行なうようだ。
「はい」
「OK」
「――――始め!!」
寺島は二本共に抜刀状態、真道は抜刀体勢で試合は始まる。高速で前進し攻めたのは寺島だ。一方の真道は動かない。
「――――共有結合(covalent bond)!!」
寺島が能力を発動するが、俺にはさっぱりわからない。
「――千手流三式【灰簾】」
物凄い風斬り音が聞こえるが刀が見えない。そして俺の思考スピードよりも速くに轟音が響き渡り二人の間に火花が散り、俺の目が刀を捉える。思考は遅れたが、千手流は初めて見た。四大流派の中では廃れており、使う者は極少数と聞いていたが、まさかここで出会えるとは思っていなかった。
「これを防ぐとは流石の剛性だな」
「相変わらず正樹の剣戟は見えないね」
その言葉でピンと来た。寺島の能力は共有結合を強化し金属に対して剛性を強めたり弱めたりできるものなのだろう。
「千手流五式【琥珀】」
抜刀速度も速かったがそれに近いレベルの剣戟を高速で何十連戟も加える。
形勢逆転し寺島が押され中央まで押し下げられるが、二本の西洋刀を駆使し剣戟を受け流す。
――――バキィィ――ン!!!!
しばらく続いた攻防戦の末に寺島の西洋刀のライトソードが根元からへし折れる。寺島は瞬時にライトソードを手放しレフトソードを右手に持ち替え両手持ちしさっきとは構えが変わる。
刃を強化したにも係わらず根元から折るとは、千手流は恐ろしいな、いや正確には真道の練度が恐ろしい。
「千手流二式【尖晶】」
「正樹の腕は鈍ってないようだね」
――パキン!
真道の日本刀の先端が欠ける。
「慎の遠近両用にはびびるぜ」
「メガネ見たいな言い方は止めてほしいね」
お互いに余裕の表情は裏腹の本気の剣術同士がぶつかり合う。
「――――共有結合(covalent bond)!!」
「千手流二式【尖晶】」
――――――――ギィィーーーーン!!!
衝突する金属音と共にお互いの剣が根元から吹き飛び周囲の生徒の頭上を通過しお互いに反対側の壁に突き刺さる。
お互いの一端距離を置いて武器を投げ捨てた。
「さて、どうするか?」
「拳で語り合うのも悪くねぇな」
「確かにそれもいいね」
お互いにファイティングポーズをとり、周りから歓声が上がる。
すっかり俺の中で抜け落ちているが、寺島は狙撃科、真道は諜報科、どちらも前線から引いた場所で戦う学科である。それにも係わらずこの近距離戦の強さだ。前に居た月宮では考えられないレベルである。正直な話、かなり悔しいが俺の大敗北だろう。特に真道の剣術には度肝を抜かれた。免許皆伝でもおかしくはない。
「――――そこまで!!」
椎名会長が割って入る。周囲からはブーイングが聞こえてくるがお構いなしだ。
「三分経過で時間切れですので、この試合は引き分けとなります」
もう三分も経っていたのか。時間を忘れるほどのインパクトがある試合だった。
「残念ながら今回も引き分けだね」
「次は負けないぜ」
お互いに握手をし、フィールドから退場した。
周囲の熱も冷めぬまま、試合が始まる。
「第一フィールド、第一試合、一年守護科小宇坂宗助対一年強襲科平田浩介」
一発目から呼ばれるとは、大してアップもしてないというのに、運がいいのか悪いのか、フッと会長の方を見ると軽くウィンクしてきやがる。このマッチングは会長が行なったものなのだろう。