第03話
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・・・・・。
宮人は部屋の中にいた。
床には紙が散らばり、隅にある今にも足が折れそうな机にはペンがいくつも転がっている。壁は奇妙な絵が飾られてある。生活感はほとんどない。
そして、こんなみすぼらしい部屋に釣り合わない立派なベットがある。毛布はふかふかで、よく眠れそうである。事実、ベットの上で寝ている人物は深い眠りについているように見える。
とそこへ、別の人物がドアから入ってきた。
整った顔は、可愛いと言うよりもキレイと表現すべきであり、髪の長さからも女の子のようだ。
女の子はウェーブのかかった髪を揺らしながら、ベットで眠っている人物の前まで来ると、身を乗り出し、顔を覗き込んだ。
次の瞬間、宮人の視点は変わる。
目の前にギョロリと動く眼球が現れた。
・・・。
・・・・。
ビクッと体が動き、目が覚める。
原因が夢なのか石造りの冷たさからくるのものなのか、宮人はわからない。
ただ、未だに自分が牢屋に繋がれている事を思い出し、自分の体を見て何故か女の子になってしまった事を思い出し、なんなんだこれー!と自分がかなりヤバい状態に陥っている事を思い出した。
ただ、
「おい、人が話しかけてんのに寝てんじゃねーよ。」
牢屋の向かいから声をかけられた事は思い出せなかった。
「あっ、うぇっ、ゴメンなさい。」
つっけんどんに返事をする。声は誰が聞いても女の子のものだ。
「まぁいいや、んで、お前何やらかしたんだ?盗みか?それとも誰か殺ったのか?」
「俺は何にもしてない!つーかここどこだ・・ょ・・。」
後半の尻すぼみは相手の容姿にピントが合ったためである。
金髪、長髪、鋭い瞳、その風貌が宮人の語尾を弱めた。
やべえ、あいつ不良だ!!ヤンキーだ!!
今までの人生14年間でそう言った人間に絡まれた事はないが、テレビや漫画等で良く知っている。
誰かを暴力で傷つけたり、カツアゲしたりと悪い事をするヤツだ。
「あ?何もしてないのにこんなシケたとこにいる訳ねーだろーが!」
「で、でも何もしてないし・・・。朝起きたら爆発して気が付いたらここにいた・・んです。」
「ほー、そりゃおかしな話だな。何かの罠にでもハメられたか?」
「そそ、そうだ!俺は何かに巻き込まれてるんだ!あとここは何処どこ?俺は何で俺じゃないの?寒いし冷たいし、怖いし、あああ、誰か助けてー!!」
尚も混乱している宮人は質問を連発し足をバタバタさせる。
高い声は狭い牢屋で反発し、キンキンと反響する。
向かい側にいる不良はそんな宮人を黙って見ている。
鋭い視線に気付き、バタバタをやめる。
不良がこっちを睨んでいる。ちょっとうるさ過ぎたのかも知れない。きっとそうだろう。
ィィィィィィィィィィィィン
不意に
耳鳴りのような音。
「うわっ!?えっ、なに!?」
それほど明るくはない牢屋であったが、まるで電気のスイッチを切ったかの様に、暗闇になった。
完全に視界が利かない。
宮人は頭がおかしくなりそうだった。
さっきから不可解な事ばかりで、パンク寸前である。
「ああ、よかった。ここね。」
ドクンと、心臓が跳ねた気がした。
現れたのは、サファイアブルーに光る、2つの瞳。
聞こえたのは、青年にはいささか届かない少年の声。
紛れもなく、宮人のそれだった。
不自然な表現、誤字、脱字はその都度指摘して下さると助かります。