↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
∞クロニクル・アルディア∞ ~101年目の未来~  作者: 空乃真芽
第六章 繰り返された百年編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
92/138

第九十一話 重なった百年

【同一期間の履歴が重複しています】


 その表示を。


 レインは紙へ書き写した。


「複写された記録では?」


 学院長が尋ねる。


「同じ本が二冊あるような。」


「確認します。」


 クロニクルへ問いかける。


「内容が同じ記録か。」


【一致しません】


「違う。」


「同じ百年なのに?」


 トーマが身を乗り出す。


【開始基準:世界暦0年】


【終了記録:百年目】


【履歴差分:あり】


 始まりと終わりは同じ。


 途中が違う。


「歴史書の書き間違いなら。」


 セレスが言う。


「出来事の順番が違うことはあります。」


「でも、これは歴史書じゃない。」


 クロニクルが保持している履歴。


 書いた者の勘違いだけでは説明できない。


     ◇


「差分を一件だけ表示。」


【閲覧可能範囲を検索】


【人物情報:制限】


【地点情報:一部参照可能】


 浮かんだのは。


 学院の北門だった。


【履歴A:防護破損】


【履歴B:防護維持】


【発生時点:百年目以前】


「ほかの差分は?」


【現在権限での連続表示は推奨されません】


「一度に開くな、ということか。」


「負荷があるのかもしれません。」


 セレスがレインの顔色を見る。


 まだ何も接続していない。


 文字を読んだだけだ。


 それでも。


 重なった履歴を意識すると、頭の奥に小さな痛みがあった。


「学院の門が壊れた記録と。」


「壊れなかった記録?」


 レインが読み上げると。


 ガレスは窓の外を見た。


「昨日の門ではないのか。」


「時点が分かりません。」


 現在の出来事を。


 クロニクルが二通りに記録した可能性もある。


 昔、似たことが起きた可能性も。


 残っている。


「北門を見に行く。」


 ガレスが立ち上がった。


「本の中だけで考えるな。」


     ◇


 北門の内側。


 昨日、白い筋が残った場所には。


 まだ石が置かれていた。


 草の色は戻っていない。


 広がってもいない。


「防護の記録を確認します。」


 職員が石柱の点検板を開く。


「昨日は破損なし。出力の低下もありません。」


「過去に壊れたことは?」


「補修記録を調べます。」


 古い札束が取り出された。


 今年。


 前年。


 さらに前。


 大きな破損は記録されていない。


「なら、履歴Bが今の学院?」


 トーマが言う。


「それも決められません。」


 セレスが白い筋を見る。


「履歴Aが、まだ起きていない可能性もあります。」


     ◇


 その時。


 防護の石柱が低く鳴った。


 青白い線が。


 門から地面へ流れる。


 白い爪痕の手前で止まった。


「下がれ!」


 ガレスの声。


 全員が距離を取る。


 白い筋が一度だけ明滅した。


 防護の光が消える。


 門の外から風が吹き込んだ。


「防護停止!」


 職員が石柱へ手を伸ばす。


「触るな!」


 レインは叫んだ。


【魔力経路の迂回を推奨】


 見えた警告を。


 すぐ声に出す。


「白い筋を通さず、別の石柱から!」


 職員が隣の石柱へ走った。


 別の魔法陣へ触れる。


 門の上から。


 青白い光が降りた。


 外では。


 森を見張っていた職員が剣を抜いている。


 防護が戻らなければ。


 昨日の群れでなくても、魔物が入り込む可能性がある。


 トーマも門の隙間へ風を集めた。


 セレスは白い筋から距離を取り、水の帯を構える。


 数秒だけの停止でも。


 戦う準備が必要な時間だった。


 防護が戻る。


 今度は。


 白い爪痕を避けるように線が曲がっていた。


     ◇


「履歴A。」


 トーマが息を吐く。


「今、門が壊れる方になりかけたのか?」


「防護は止まっただけです。」


「破損とは違う。」


 レインは表示を確認する。


【現在履歴との照合:不成立】


 今の出来事は。


 二つの履歴のどちらとも確定しない。


「未来の予測じゃない。」


「では、何なんでしょう。」


 同じ始まりから。


 門が壊れた百年と。


 壊れなかった百年。


 どちらも記録として残っている。


 時間が一つしかないのなら。


 同時には存在できないはずだった。


 しかも。


 一つは記録の中だけではなく。


 白い爪痕を通して、今の学院へ触れかけている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。