第百三十三話 白い挟撃
静かな道を外れ。
五人は斜面を登る。
土が柔らかい。
盾を杖のように使い。
ロイドが足場を作った。
白い影も。
進む向きを変える。
一匹が前へ。
もう一匹が後ろへ回った。
◇
「来るぞ!」
トーマの声より先に。
牙の音が右から鳴る。
姿は左。
ロイドは音を見なかった。
白い身体へ盾を向ける。
衝撃。
獣が盾を蹴り。
頭上を越えた。
後ろの一匹も走り出す。
「挟まれる!」
セレスの水が二つに分かれた。
◇
水が獣の脚へ触れる。
白い筋が浮かんだ。
どちらの身体からも。
静かな道へ続いている。
「あっちから引かれてる。」
レインが示す。
だが。
二本の筋は木の間で重なり。
地面の下へ消えていた。
獣を斬れば早い。
それでも。
五人は倒すために来たのではない。
◇
「ロイド、止めるだけ!」
「分かっている!」
盾が一匹を受ける。
もう一匹へ。
トーマの風が横から当たった。
獣の身体が回る。
爪はミリアへ届かない。
セレスの水が。
二本の筋を一か所へ押し出す。
「レイン!」
剣を振る。
だが。
白い筋は刃の前で二つに裂けた。
一本がロイドへ。
もう一本がトーマへ伸びる。
◇
「下がれ!」
レインの声に。
二人が同時に距離を取る。
追う筋の間へ。
ミリアの治療の光が入った。
白さと。
淡い光がぶつかる。
筋の動きが一瞬止まった。
「治したわけじゃありません。」
ミリアの声が震える。
「でも、遅くできます。」
その一瞬で。
レインは二本をまとめて斬った。
◇
獣が地面へ転がる。
ロイドは盾を構えたまま待つ。
一匹が立ち上がった。
牙を見せる。
それでも。
飛びかかってこない。
もう一匹の首をくわえ。
斜面の下へ引いていく。
「助け合ってるのか。」
トーマが剣を下げる。
白い影は。
敵の色ではなかった。
五人を襲わせていた筋だけが。
そこから消えていた。




