第百二十話 百年目の記録
七人は。
それ以上進まなかった。
雪原へ続く道を見つけた。
だからこそ。
戻る必要があった。
森に残した布。
白い糸。
倒れた魔物。
すべての位置を確かめながら。
北門へ戻った。
誰も欠けていない。
◇
禁書庫で。
黒い本が開かれる。
学院長。
司書。
ガレスとリディア。
トーマとセレス。
レインは。
森で見た表示を読み上げた。
「百年目終端記録と一致。」
「終端。」
トーマが繰り返す。
「神崎を倒した時点か。」
「それだけじゃないと思う。」
レインはページへ手を置く。
「クロニクル。百年目の記録を開いて。」
【閲覧可能範囲を検索】
【利用者記憶との接続を確認】
【限定表示を開始します】
◇
文字の下に。
小さな光景が浮かんだ。
雪原。
二つの月。
向かい合うレインと神崎。
今まで見たものと同じ。
けれど。
今度は文字が添えられていた。
【世界線経過:百年】
【維持者権限:低下】
【循環処理:終端待機】
「循環処理。」
司書が息を呑む。
「神崎蓮を倒した後に、世界を次へ送る処理か。」
【実行条件:一部欠損】
【実行主体:特定不可】
答えにはならない。
神崎が準備したのか。
クロニクルが動かしたのか。
ほかの何かがあるのか。
表示は決めなかった。
◇
光景の中で。
過去のレインが剣を振る。
神崎が倒れる。
世界が白くなる。
そこで。
今まで見えなかった文字が現れた。
【百年目:終了】
【次世界線への移行を確認】
【百一年目:到達せず】
一つ。
また一つ。
同じ表示が重なる。
数えられない世界線。
どれも。
百一年目には届いていない。
「今回も同じなら。」
セレスが言う。
「神崎さんを倒せば、次の世界線へ移る。」
「でも。」
レインは。
白くなった最後のページを見る。
「今の世界は、同じじゃない。」
◇
【現在世界線】
【循環処理:不安定】
【百一年目:未観測】
【維持限界:接近】
百一年目へ進めるのか。
進んだ先で。
世界が残るのか。
まだ分からない。
「神崎を倒さなければ、循環が止まるのか。」
ガレスが尋ねる。
「それも、分かりません。」
「名前を呼べば止められる?」
セレスの問いにも。
レインは首を振った。
「名前だけで全部変わるなら、神崎さんは何度も待たない。」
必要なのは。
神崎へ届くこと。
剣を向けるところまで行き。
それでも倒さない方法を選ぶこと。
そして。
百年で終わるしかなかった循環を。
二人で止めること。
◇
黒い本の最後に。
新しい線が現れた。
学院から。
北の森へ。
森から。
雪原へ。
道は細く。
途中で消えている。
【百年目終端地点への経路】
【現在世界線との差異:拡大中】
同じ場所へ行っても。
同じ結末になるとは限らない。
だから。
レインは。
過去と同じ剣を持ち。
違う答えを選ぶために。
北へ向かうと決めた。




