第3話 薬草採取依頼
森の中は案外明るかった。茂る木の隙間から暖かい太陽の光が漏れている。爽やかな風が肌を撫でる。
「こん中から見つけるのか。骨が折れるな」
レオがぼやく。
確かに、と俺は視線を地面に向ける。
地面には草やら花やらいくつも生えていて、この中から指定の薬草を見つけ出すのは骨が折れそうだ。一応、てっぺんがゼンマイみたいにうずを巻いているという特徴はあるけど、パッと見では分かりにくい。
「あの薬草は日当たりの良い場所に生える、筈だから……そういう場所に絞って探してみるのが良いかもしれない」
いつだったか、配達に向かった薬屋が言っていた事を思い出しながら言う。
「そうなのか!よく知ってたな」
「……たまたま、だ」
「そんじゃ、日当たりの良い場所探すか」
レオが森の中を歩く。俺はそれに付いて行く。
草を刈るだけなら、俺にも出来るだろうし、少しでも沢山採れるように頑張ろう。
・・・・・
「よし、こんなもんか」
レオが薬草で一杯になった袋を掲げる。依頼書にあった規定量を超える数が採取出来た。
「ユーマのお陰だな。あっという間に見つけちまうんだから」
「……運が良かっただけだ」
俺は即座に否定する。たまたま目に付いたものが依頼の薬草だった、という事を繰り返していただけだ。
「…ま、良いけど。運でも何でもお前のお陰で早く終わったのは事実なんだからな。それは忘れんなよ」
俺は困ったように笑う。
「さて、薬草もたっぷり集まったしギルドに戻ろうぜ」
「うん」
頷いて、歩き出した瞬間。
「___!」
俺は背後に寒気を感じて振り返る。
視線の先には何もいない。ただ木々が揺らめくばかり。
…………否。
「…?ユーマ、どうした?」
レオの言葉に答えるより先に、俺は剣を抜いた。
それと同時に、木の影からナニカが飛び出す。
ガキィン。爪と剣がぶつかり合って音を立てる。
「___フォレストウルフ!」
レオが叫ぶ。そして彼も背中の剣を抜き、盾を構える。
「……あの毛並み、普通のヤツじゃないな。変異種か?」
フォレストウルフは通常、銀色の毛並みをしているが、目の前にいるヤツの毛は赤かった。まるで血を被ったような、赤。
「仲間を呼ばれる前に蹴りをつけるぞ」
レオが俺の前に出て盾を構える。
「オレが引き付ける。お前は隙を見て攻撃してくれ」
「俺が……?」
俺なんかにそんな事出来るのか。
不安が襲う。
盾持ちのレオが防御に回るのはごく自然なことだ。けれど、俺如きの攻撃だけでアイツを倒せるのか。
………でも、やらなくちゃ。パーティを組んでいるんだから、レオにばかり負担を掛けられない。
倒せなくても、せめて後退させて逃げる隙を作るなり、体勢を崩させてレオが攻撃する隙を作るなりしなければ。
覚悟を決めて、俺は剣を振るった。
周りの景色がスローモーションになる。剣がまるで自分の手足のように自由に、滑らかに動く。
見えない何かにアシストされるように、俺は攻撃を振るう。
一撃。二撃。三撃___。
連続して放たれた剣撃は、フォレストウルフの身体にヒットして、
そしてそのまま、ソイツは倒れた。
血に濡れた剣先を見つめて俺は息を吐く。
元々弱っていたのか、それとも見た目ほど強い魔物じゃなかったのか。どちらにせよ無事倒せた事にほっとする。
「流石だな」
レオが俺の背中を叩く。
「……そんなに強くないヤツで良かった」
俺の言葉にレオが一瞬顔を顰めた気がした。
「………ま、取り敢えず早く戻るか。コイツの仲間が居るかもしれないし。
___っと、その前に」
レオはフォレストウルフの死体に近付くと、懐からナイフを取り出す。ギザギザとした刃は小さい鋸のようだ。
「討伐の証として牙と…毛皮も少し貰っておくか。一応ギルドに報告しておいた方が良いだろ。
オレが牙を削ぐから、ユーマは毛皮な」
レオは鋸のようなナイフでフォレストウルフの牙を削ぐ。それに続くように、俺は普通のナイフで毛皮を剥いだ。
「これで良しっと!
じゃ、今度こそ行くぞ」
牙と毛皮を別の袋に入れて、俺達は今度こそ森の出口に向かって歩き出した。




