第2話 冒険者ギルド
冒険者ギルドは、昼前でも騒がしかった。
木製の扉を開けた瞬間、酒と汗と鉄の匂いが混ざって押し寄せてくる。依頼書の貼られた壁の前には人だかりができ、鎧同士がぶつかる音が絶えない。
俺は思わず一歩引いた。
「……人、多いな」
「普通だよ」
レオは慣れた様子で中へ入っていく。
「ほら、行くぞ」
言われるまま後ろについていく。
受付台の向こうには、淡い銀髪の女性がいた。姿勢がよく、騒がしい空間でも妙に落ち着いて見える。
彼女は俺たちを見ると、静かに微笑んだ。
「いらっしゃいませ。登録ですか?」
「二人で。今日から冒険者志望です」
俺は慌てて頭を下げる。
「……あ、あの、よろしくお願いします」
受付の女性は慣れた手付きで書類を差し出す。
「名前と年齢、武器と簡単な経歴を」
俺は羽ペンを握って書類を書いていく。
――経歴。配達。手伝い。雑用。
書きながら、少しだけ手が止まる。所謂ジョブを記す欄。
少し悩んだ後、俺は“剣士”と書いた。一応剣が振れる程度で、剣士というには烏滸がましいが、他に思い付かない
書き終えると、彼女は紙に目を落とす。
「___はい。確認しました」
受付の女性は小さく笑った。
「では、簡易測定を」
彼女が台の横に置かれた水晶球を指す。
「手を乗せてください」
言われるまま、掌を置く。ひんやりしている。
何も起きない――と思った次の瞬間。
水晶の中で、淡い光が走った。
ざわ、と周囲の空気が揺れる。俺は慌てて手を離した。
「……え、今の、まずかったですか」
受付の女性は、ほんの一瞬だけ目を見開き、それから表情を戻した。
「いいえ。正常です」
彼女はペンを走らせる。
「ランクはEからになります」
渡されたギルドカードを見て、ホッと息をつく。取り敢えず無事冒険者になれて良かった。門前払いされたらどうしようかと思っていた。
「お疲れ」
レオが肩を叩く。
「これで正式な冒険者だ」
レオは嬉しそうに笑った。
「改めて、これからパーティメンバーとしてよろしくな」
「こっちこそ。……迷惑かけると思うけど」
「それはお互い様、だろ。助け合うのがパーティだ」
その言葉に、胸の奥が少しだけ温かくなった。
「早速依頼受けてみようぜ」
レオが依頼ボードを指さす。彼に引っ張られる形でボードの前に行く。
「やっぱ最初は薬草採取が無難か?」
レオが初心者向けと書かれた依頼書に目をやる。危険も少ない地域での薬草採取。
折角の初陣。レオの足を引っ張って依頼失敗、にはしたくない。薬草採取なら俺でもどうにか出来るだろうか。
「ユーマはどうしたい?」
「……薬草採取で良いと思う」
「そんじゃ、これにするか」
レオが依頼書を剥がす。依頼書を受付の女性に渡す。
「___はい。承りました」
彼女が依頼書を受け取り、認可の判子を押す。
「よし、行くか」
レオが歩き出す。俺は黙ってそれに付いて行く。
………初仕事、レオの邪魔にならないように気を付けないと。




