8話
黄金の髪が流れ、青い水晶の髪飾りを反射させている。青白い肢体の女は顔色を変えて立ち上がった。眼前には灼熱の炎を思わせるような赤い髪の女が座っている。その赤毛の女は皮肉っぽく微笑んで、立ち上がった金髪の女を見上げた。
「それでは話が違います。歌姫の美しい歌声は女神の怒りを解くとおっしゃったから、わたくしは協力したのです」
金髪の女が声を荒らげて責めるように言った。
「協力? 欲望を果たすためだろ? ああ、渇望と言ったほうがいいか」
「わたくしを愚弄するおつもりですかっ!」
黄金の髪の女の言葉に、赤毛の女は口角を上げてニヤニヤと笑う。そして視線を金髪の女の後ろへ向ける。そこには腰まで水晶に浸食され、天井から吊られて気を失っているアリューシャがいた。
「あなたを信用したのが間違いだったということですね。ここはわたくしの国、わたくしの都です。誰にも渡しません」
「お前じゃなにもできない。その証拠に、いまだ魔都は復活していない。お前が封じられてから、いったいどれだけの時間が流れたと思っている。歌姫はクレイシャの怒りを解くだろう。なぜなら、あの娘の気質、魂の有様は、お前にとても似ているからだ。そして呪をまとっている歌声。あの娘が平伏しクレイシャに罪を犯したお前を捧げ、改めて許しを請うたらきっと呪いは解ける。そして君臨する。ラシャリーヤの女王はお前ではない、あの娘だ。そしてお膳立てをし、魔都を復活させた私が右腕となって魔都を操る」
人差し指の上に水晶玉を乗せ、クルクルと回す。
「私の力がなければ、魔都ラシャリーヤは復活しない。強力な魔力、新たな支配者、そして愚かな女の首」
赤毛の女は音もなく立ち上がった。対して黄金の髪の女は蒼白になって一歩退く。
「魔都の復活は約束する。だから、ティーネス、お前はそのために首を差し出すのよ」
「…………」
「その目で見ることができないことは無念だろうけど」
赤毛の女が右手を挙げた。その手から黒い炎が舞い上がり、黄金の髪の女に向けて飛びかかった。




