「瑠璃色の瞳に誓う、砂漠の旅②」(砂嵐の抱擁)
はじめての砂漠行。
二人乗りの大きなラクダの背に並んで座る雪藍を、朱華は後ろからしっかりと抱きかかえるように支えていた。
砂丘を渡る風は乾いているのに、背に感じる彼の体温があまりにも熱くて、雪藍は顔を赤らめる。
「砂漠の揺れは、思っていたよりも……心地よいものですね」
「ほう……?」朱華は小さく笑い、耳元に唇を寄せる。
「それは砂漠のせいか、それとも……俺がそばにいるせいか」
「っ……!」雪藍は恥ずかしさに視線を逸らしながら、震える声で答える。
「も、もちろん……朱華様がそばにいてくださるからに決まっています」
彼女の素直な言葉に、朱華は喉の奥でくつくつと笑い、さらに腕の力を強めた。
「ならば良い。砂漠の果てまでも、この腕で抱きしめて離さないぞ」
夜、天幕の隙間からこぼれる無数の星々を見上げながら、二人は寄り添う。
「都で見る星とは違うな」朱華が呟く。
「はい……星の数が、朱華様への私の想いのよう。
数えても、数えても尽きません」
朱華の胸に、強烈な熱が込み上げる。雪藍の横顔を見つめながら、彼は低く囁いた。
「その想いを、どうか俺だけに向けてほしい。他の誰にも、渡したくない」
雪藍は頬を朱に染め、指先を重ねる。
「朱華様こそ……私の想いのすべてを受け止めてくださるお方です」
――その時、轟く風とともに砂嵐が襲いかかった。
朱華は即座に己のマントを広げ、雪藍を胸に抱き寄せる。
「雪藍! 目を閉じろ、俺が守る!」
烈しい砂が頬を打ち、風が衣を裂く。
けれど朱華の腕は、鉄のように強く、温もりは決して揺るがなかった。
嵐が過ぎ去った後、砂まみれの彼が微笑んだ。
「……無事でよかった」
雪藍は涙ぐみながらその胸にしがみついた。
「朱華様……あのような荒れ狂う砂よりも、私の心は……朱華様への想いで、もっと、もっと乱されてしまいます」
朱華は彼女をそっと抱き上げ、真剣に見つめ返す。
「ならば、これから先もずっと乱してやろう。砂漠より広く、星空より深く、俺の愛でな」
月光に照らされる二人の影は、寄り添いながらひとつに重なっていった。




