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ボクは女なのよ甲子園

 アキラは中学の女子ソフトボール部のピッチャーだ。
 球が速すぎて捕球できるキャッチャーがいない。
 思い切り投げると捕手が取れない。
 そのために力をおさえて投げる。
 だから試合はいつも乱打線だ。
 いつ負けてもおかしくない試合運びで決勝戦まで来た。
 アキラは両親と弟の四人家族だ。
 いつも負けそうな試合ばかりのせいで家族が応援に来るのをことわっていた。
 全力で投げないために勝つ自信がない。
 アキラは毎回ヒットを打たれる。
 そんな苦戦を家族に見てほしくないからだ。
 決勝戦もアキラの家族の姿はスタンドになかった。
 そのころアキラの両親と弟は弁当を手に球場へと歩いていた。
 その三人を通り魔が包丁で襲って三人を刺し殺した。
 通り魔は駅を降りた人々を次々に刺した。
 その中にアキラの両親と弟もいた。
 しあわせそうに見える人々がゆるせなかったと警察に逮捕された通り魔が語った。
 アキラは病院で家族三人の遺体と対面した。
 アキラは泣いた。
 最初から試合を見に来てほしいとたのんでいれば通り魔の犯行の時刻に家族はスタンドにすわっていたはずだった。
 絶対に来るなと強く言っておけば両親と弟はいまも生きていたはずだった。
 どれだけ後悔しても三人は還らない。
 アキラは心をとざした。
 精神科医の桂井はそんなアキラの担当医だった。
 生きる意欲をなくしたアキラからポツリポツリとさまざまな話を聞き出した。
 アキラは決勝戦の直前に少年野球の試合を見ていた。
 星見という捕手がいい選手だとうわさで聞いて星見の試合を見た。
 星見の試合は捕手の星見と投手の仲たがいで敗戦だった。
 アキラには願望があった。
 全力で打者に投げてみたい。
 そう中学の三年間を思いつづけた。
 星見に自分の球を捕ってもらいたい。
 心をとざしたアキラの唯一のねがいがそれだった。
 精神科医の桂井はアキラのねがいをかなえることがアキラに生きる意欲を取りもどさせる道だと考えた。
 だが星見は男子高校へと進学した。
 桂井はリハビリのためと称してアキラを男装させて男子高に入学させる。
 女だとバレれば退学させればいい。
 アキラに生きる意欲を取りもどさせるためだけの処置だ。
 かくしてアキラは男として野球部に入部した。
 星見に球を受けてもらうためだけに。
  
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