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〇話 宝箱のなかみ
昔 黄金の宝箱がありました
幻の島に隠された宝箱の蓋は
伝説のつるぎで切ることも
巨人のつちで壊すことも
魔女のくすりで溶かすことも
できなかったそうです
そんな宝箱を探そうとある青年が海に出ました
風を超え 波を超えていき 旅をしました
幻の島から美しい歌声が聴こえて
歌声に導かれた青年は深い 深い洞窟の中を進みました
リンゴの木 背の高い女性 黄金の宝箱
女性は宝箱を守っていました
傷だらけの女性が
この宝箱が欲しいのかと
尋ねたら
青年は首を振り、
あなたの歌を聴かせて
女性は驚き 笑いました
そして息を吸うと 美しい歌を歌いました
共に日を重ねたある日
カチリと音がして
しかし青年がなかみを見ることはなく
やがて二人のそばで 二つの宝と
みんなで暮らしていきました